ファミリーマート社長 
上田準二氏

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ファミリーマート社長 上田準二(うえだ・じゅんじ)
1946年、秋田県生まれ。県立横手高校から山形大学文理学部に進み、卒業後の70年、伊藤忠商事に入社。畜産部長、プリマハム取締役などを経て、2000年に顧問としてファミリーマートへ。02年より現職。

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悪口にも2種類あって、事業戦略や仕事の進め方についてであれば、上司のやり方に一定の批判の声が出てくるのは理解できますし、対処の方法もあります。

部長クラスより上のケースになりますが、自他ともに認める自分の「後継者」から、まわりまわって手ひどい批判が聞こえてくるとしたらどうでしょう。

どのような組織も目標を定めて進んでいる以上は、その手段や方向性について必ず異論が出てきます。後継者候補が上司を批判するのは、周囲に現在の方針へのアンチテーゼ(反対意見)を示すことで、その後のイニシアチブをとろうと考えるからです。

「自分が後継者になったら、これまでの路線の踏襲ではなく独自路線でいく」ということです。

政治家の世界にもあるし、有名企業でも、社長が後継者を選んで、自分は会長に退いたら、社長がそれまでの方針をひっくり返すというケースはよくあります。そこにはもしかすると、上司に対するコンプレックスも関係しているかもしれません。

こういうときは、本人を呼んで話し合っても、必ずしも理解しあえるとは限りません。かえって反発して収拾がつかなくなることもあるのです。では、上司はどう対処したらいいでしょうか。

一つ、やり方があります。部下が口にしているという反対意見を自ら吟味したうえで、会議など公の場で、あえて議論の対象にしてしまうのです。

「私が進めている現在の方針について、一部で批判も出てきているようだ。しかしながら、私はこういう考えで、今の方針を決めている。これについてどういう問題が考えられるか、どのような改善方法があるか、みんなの忌憚のない意見を聞かせてほしい」

と、オープンな議論の場にしてしまいます。

批判していた当人が、これまで裏で言っていた通りのことを、そうした公の席でも話してくれればいいのですが、そうしてくれないときはほかの人に話を振ります。

するとそれまでその人が言っていた内容が、他人の意見として公の場に出てくることになります。こうなると批判していた人は反対派のオピニオンリーダーとしての立場をなくし、周囲の支持も失ってしまいます。

■不安心理を取り除くためには

上司の心得としては、オープンなコミュニケーションを心がけることです。いろいろな批判があるとしても、オープンな場でどんどん議論を戦わせ、優れた意見は採り入れていけばいいのです。

たとえば、会社の事業を未知の分野や未知の領域へ拡大していこうとするときは「あんなところに出ていったって、投資を回収するのに何十年もかかる。その間ずっと赤字を積み重ねるのか。やりすぎじゃないか」といった反対の声が必ず出てきます。

当社でも、積極的な海外展開を始めた当初は、同じような声が出てきました。私自身は海外進出については「100%成功する」と確信していましたが、周囲はそこまでコミットできないという雰囲気でした。

反対意見が出るのは、背後にそれだけ不安な気持ちを持っている人がいるからです。社内の人たちから取引先まで、不安を共有する人たちの声を代弁するものでもあるでしょう。未知のことに不安を持つのは、無理のない面もあると思います。

しかし、失敗をおそれて挑戦をやめてしまったら、その会社に未来はありません。業界3位のファミリーマートが国内事業だけで逆転するのは客観的に見て難しい。上を目指すとしたら、海外、特に成長著しいアジア地域に出ていくしかないのです。

役員会で消極論が出そうだなと感じたときなど、私はよく「君たちは幸せだ」と言いました。成功したらみんなが「俺たちは苦労して走りまわって、事業を成功させた」と誇ることができるし、運悪く失敗しても、「上田の経営判断ミスのせいだ」と言うことができる(笑)。「どっちにしても損はないよ」と説いて、役員たちの不安心理を取り除いたものでした。

もっとも、悪口が人格攻撃に及んでいる場合は事情が異なります。そのときはやはり、「排除する」しかないでしょうね。

(ファミリーマート社長 上田準二 構成=久保田正志 撮影=的野弘路)