パワハラに頼らず「鼻つまみ部下」を追い込むには−−田北百樹子

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特定社会保険労務士 田北百樹子(たきた・ゆきこ)
札幌市生まれ。1996年に田北社会保険労務士事務所を開業。保険関係の届け出、就業規則の作成、人事考課制度の導入など幅広い対応を行う。『シュガー社員が会社を溶かす』など著書多数。

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いつの時代でも、模範的な社員と、逆に周囲から嫌われ、会社に迷惑をかける社員はいます。最近は、入社時から優秀な人と社会に出るのはまだ早いかなという社員の二極化が進みました。私の感覚では、その割合は2割ずつ。そして、問題社員の半分が“鼻つまみ部下”の予備軍なのです。

彼あるいは彼女たちは、普段は波風を立てずに業務をこなしていますが、何か事が起こると、正しい対処ができません。間違った判断をしたり、仕事を途中で投げ出したりして、上司や同じ部署の人が振り回されてしまいます。なかでも問題になるのが、同性に嫌われる存在です。

そうした社員は、いくつかのタイプに分けられますが、男性で一番嫌がられるのが、平気で嘘をつく人です。返事が「多分」などと曖昧で、面倒なことは放っておき、時が過ぎるのを待ちます。こんな社員を、私は“プリズンブレイク型”と分類しています。

不動産会社に勤務しているA君は賃貸物件の営業担当です。先日も「夜景のきれいな部屋を探している」というお客様に「いい物件があります。いま契約すれば、すぐに入居できます」と契約を結びました。でも、信用していざ入居してみたら、目の前は別のマンションの壁。当然、お客様は黙っていません。A君に問いただすと「もしかしたら気に入ってくれるかもしれないと思った」と、まったく反省の色は見られませんでした。

自分の営業成績のことしか考えられず、そのままにして相手が諦めるのを待っているわけです。結局、上司が尻拭いをすることになったのですが、おそらく「誰かが何とかしてくれる」という甘えが根底にあるのでしょう。

そこで、やや手荒な方法ですが、知人などに依頼して、厳しいクレームをつけてもらいます。そして、最後まで本人に解決させ、営業マンとしての欠点を自覚させます。そうでないと、彼は同じ過ちを繰り返し、いつかは会社に多大な損失を与えかねません。

■女子社員に多い私リスペクト型

一方、女性に多いのが、自分が頼まれているのに苦手なことは他人に押しつけ、おいしいところだけ持っていき、チャッカリ、ヌクヌクとしている社員です。私の分類では“俺(私)リスペクト型”になります。

B子さんは事務機器商社のベテランOLです。会社が得意先との親睦を深めるため、ゴルフコンペを開催しました。B子さんは受付を任され、ほかに3人の女性社員が配置されました。ところがB子さんは「私の主な役目はお客様の接待で、こんなのは知らない」とばかり、参加者リストと領収書、用意されたおつりを彼女たちに預け、打ち合わせもしませんでした。

コンペ当日、準備の中途半端だった受付の前にはお客様の長い列ができました。対応に右往左往する3人をよそに、B子さんは親しいお客様のプレーに同伴したのです。終了後、参加費の計算が合わなくても、B子さんは3人に責任を押し付け、知らんぷり。

厄介なことに、B子さんのようなタイプは役員などのウケがよく、評価も意外と高いのです。ですから、上司も強く批判できません。しかし、そのままでは職場の雰囲気は悪くなり、責任を取らされた3人のモチベーションも下がります。目立つものの、少しきつい仕事を与えて自分の壁を認識させるなど、勘違いに気づかせます。

このように、問題社員といえども、はじめは気づきを促し、反省して仕事への姿勢を改めるのを待ちます。それでもだめならば、上司が1対1で話し合い「今後の勤務態度によっては懲戒処分もある」と断固として伝えます。

とはいえ、A君にしても、B子さんにしても、最後は本人の資質と能力の問題です。結局、自分が認められない、この会社にいても将来はないと思えば、退職を考えるしかありません。しかし、強引に追い込むと、パワハラや不当解雇で訴えられることもありえますから要注意です。

こうした社員は、これからも増えていくと考えておいたほうが無難だと思います。なぜなら、最近の若者は、仕事や職場への義務や感謝より権利を主張することに価値を置きだしたからです。ですから、あくまでも冷静かつ穏便に対処すべきでしょう。

(特定社会保険労務士 田北百樹子 構成=岡村繁雄 撮影=本田 匡)