今年もフィギュアスケート「グランプリ(GP)シリーズ」が開幕。10月19日から米ワシントン州ケントで行われた「スケートアメリカ」を皮切りに、先日のカナダ・ウィンザー(10月26〜28日)、今週末の中国・上海(11月2日〜)…と世界各地で熱戦が繰り広げられる。前年の世界選手権などの成績が上位だったシード選手は6戦中2大会に出場。

 その2試合でもっとも高い順位点を得た上位6人が12月5日から、2014年冬季五輪の地であるロシア・ソチで行われるGPファイナルに勝ち進む。

 その第1戦、スケートアメリカ初日のショートプログラム(SP)で、いきなり歴代最高得点の95.07点をたたき出したのが日本の若きニューヒーロー、羽生結弦(はにゅうゆづる・17才)だ。

 17才、宮城県・東北高校の現役高校生。身長170cm、体重54kgの華奢な体つきは、まだ大人になりきっておらず、頼りなささえ感じさせる。

 だが、その体が繰り出す4回転ジャンプは、オーストリア・インスブルック五輪の元代表選手の佐野稔氏をして、「本来はこんなに簡単に降りてはいけないジャンプ」と唸らせるほど完成度が高く、3回転と見間違うほど楽々とこなす。

 しかし、SP翌日のフリープログラム(FP)ではジャンプミスを連発し、3位に。SPと合わせた総合では同じ日本人の小塚崇彦(23才)の逆転を許し、辛くも2位、銀メダルにとどまった。

 翌日、本人に感想を尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「プレッシャーはないと思っていました。でもSPがいいとフリーが悪いという例が多いのを意識しすぎて、がんばりすぎちゃったのかも」

 そしてニコニコとした笑顔を見せてこう続けた。

「今日だったら何でも跳べそうな気がするんですけどね」

 練習よりも試合が好きと普段から豪語する才能の塊のような羽生だが、彼はこれまで逆境をはねのけて戦ってきた。

 2011年3月11日、仙台のホームリンクで練習中に東日本大震災に遭った。リンクは閉鎖され、練習場を失った。それでも彼は、全国を転々としてアイスショーに出演しながら、練習を重ねたのだ。

 そして今年3月、世界選手権(フランス・ニース大会)初挑戦で銅メダルを獲得し、世界の強豪と肩を並べる存在となった。

 次の出場は、彼の地元、仙台で開催されるGPシリーズ第6戦のNHK杯(11月23日〜)。どんな演技を見せたいかを聞くと、こう即答した。

「笑顔でいたいですね。悔しそうな顔じゃなくて」

 震災で被災しながら、応援してくれた地元の人々のためにも。

※女性セブン2012年11月15日号