時間ドロボー対策をどうするか? −「仕事が忙しい!」の9割は思い込みだった【1】

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時間ドロボーは、日常生活のいたるところに隠れています。スケジュール通りにテキパキと予定をこなしたいのに、渋滞に巻き込まれて約束の時間に遅れてしまったり、上司から仕事を突然割り当てられて残業を強いられたり。こうした予想外の出来事に出くわすたび、私たちは「時間ドロボーに時間を奪われた」と感じて憤慨しています。

ただ、私たちの時間は本当に盗まれたのでしょうか。実際は何かに仕事の邪魔をされても、物理的に1日の時間が減るわけではありません。誰にとっても、1日は24時間。時間ドロボーの被害に遭ったからといって、1日が23時間になることはないのです。

時間の「量」は変わらないのに、なぜ時間を奪われたという感覚が生まれるのか。原因は、時間の「質」にあります。たとえば机に1時間向かっていても、目の前の仕事に集中できたケースと、雑音などで気が散って集中できなかったケースがあります。どちらも量的には同じ1時間ですが、後者の場合は「雑音によって時間が奪われた」という感覚が生じます。つまり私たちは時間の量ではなく、時間の質を奪われたときに「時間ドロボーに遭った」と感じるわけです。

ここを履き違えると、時間ドロボー対策は的外れなものになるでしょう。多くの人は忙しくなると、「足りない時間をどうやって捻出するか」といった時間の増減に意識を向けてしまいます。しかし、24時間という枠の中であれこれと考えても、24時間以上に時間が増えることはない。そうではなく、時間の質をいかに高めるかという視点を持つことが効果的な時間ドロボー対策につながります。

質の高い時間とは、どのような時間を指すのか。ここで考えていただきたいのがファンクション(機能・役割)です。製品やサービス、ビジネス、組織など、世の中のあらゆるモノやコトにはファンクションがあり、その価値は「F(ファンクション)÷C(コスト)」で表すことができます。

たとえば本という商品は、紙と活字でできた形に価値があるのではありません。人生を豊かにするとか、知識を得るといったファンクションに価値があり、支払ったコストに対してそれを大きく得られる本ほど価値が高くなります。これは時間も同じ。一定の時間コストを費やすなら、その時間に求められたファンクションを満たしたときほど、価値の高い=質の高い時間を過ごしたといえます。

では、時間に求められるファンクションとは何でしょうか。私たちは自分の時間を、「知的要求」「感情要求」「身体要求」という3つのいずれかの要求のために使っています。たとえば本を読んでいる時間は知的要求を満たすためであり、睡眠時間は身体要求を満たすためです。それらの要求に対して、時間を「投資的」に使っているときはリターンが大きくなり、時間の価値は高まります。一方、「消費的」に使うと、リターンが減って時間の価値が低下するため、時間をムダにした感覚に襲われやすくなります。

さらに詳しく見ていきましょう。時間を投資的に使えているかどうかの判断は、「誰のための時間なのか」「何の要求が満たされるのか」「その要求は満たされるべきか」「ほかに方法はないのか」という4つのプロセスでチェックするとよくわかります。

部長主催の忘年会の誘いを受けたとします。この忘年会が時間ドロボーであるかどうかを判断するには、まず「誰のためか」「何のためか」というファンクションを把握する必要があります。もし忘年会のファンクションが「部のメンバーの親睦を深めるため」なら、次は「本当に親睦を深めるべきか」を考えます。また、親睦を深めたほうがいいとしても、「忘年会以外の方法はないのか、もっとコストのかからない方法があるのではないか」と考えていきます。この4つのチェックをくぐりぬけたら、忘年会に使う時間は投資的と考えてもよいでしょう。

一方、その忘年会の目的が「部長が自分の権威を示すため」で、親睦には有益とは思えなかったり、たとえ納得できる目的であっても、「飲み会ではなく昼食会で十分」という場合があります。このようなとき忘年会に出席するのは時間のムダです。消費的な時間の使い方となるので、出席を断ったほうがいいでしょう。

時間の質を高めるために欠かせないのが、スケジューリングです。とはいえ、作業の順番を決めたり、開始時刻を手帳に記入すれば、時間の質が自動的に高まるわけではありません。スケジューリングのファンクションは何か。

「確実性を高める」「効率性を高める」ためであり、究極的には「作業を助ける」ためです。予定を切り貼りするだけで、確実性や効率性というファンクションを満たさなければ意味がない。

カタチだけ整えても、時間ドロボー対策にはなりません。予定を組むときは、つねに確実性や効率性を意識する。それにより時間の質の低下を防ぐことができるのです。

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ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役社長 横田尚哉(よこた・ひさや)
改善士。世界最大企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)の価値工学に基づく分析手法を取り入れて、総額1兆円の公共事業改善に乗り出し、10年間でコスト縮減総額2000億円を実現させた。「30年後の子供たちのために、輝く未来を遺したい」という信念のもと、そのノウハウを潔く公開するスタイルは各種メディアの注目の的となっている。全国から取材や講演依頼が殺到し、コンサルティングサービスは約6カ月待ち。また、「形にとらわれるな、本質をとらえろ」というメッセージから生み出されるダイナミックな問題解決の手法は、業務改善にも功を奏することから「チームデザイン」の手法としても注目が高まっている。

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(ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役 横田尚哉=分析 村上 敬=構成 葛西亜理沙=撮影 ファンクショナル・アプローチ研究所=図版提供)