小説を映画化した作品の紹介が続いていますが、3週目の今回は、ベストセラー作家・髙村薫のデビュー作『黄金を抱いて翔べ』(新潮文庫)にほれ込んだ井筒和幸監督の下、豪華キャストが集結した、骨太のノンストップ・エンターテインメント大作です。


 大阪に本店を置くメガバンクの地下にある、240億円相当の金塊強奪を計画する北川浩二(浅野忠信)は、学生時代からの友人で、過激派や犯罪者相手の調達屋をしている幸田弘之(妻夫木聡)に声をかけます。


 北川は、システムエンジニアで多額の借金を抱える野田(桐谷健太)もメンバーに引き入れ、野田の知り合いの元エレベーター技師“ジイちゃん”こと斉藤順三(西田敏行)も相談役として誘います。



 爆破のエキスパートも必要になり、幸田が東京で遭遇したことがある自称・大学院留学生のチョウ・リョファン(チャンミン)に声をかけることに。国家スパイという裏の顔を持つ彼を、幸田は「どっから来たか分からないから、桃太郎」という理由で“モモ”と呼び始めます。


 さらに、北川の弟・春樹(溝端淳平)もメンバーに加わり、6人で計画を実行していきます。ところが、彼らの周囲で謎の事件やトラブルが次々と発生し、計画は思いもよらぬ方向へと進んでしまいます。


 次第に発覚していくメンバーそれぞれの消せない過去や、複雑で忌まわしい事情。果たして、彼らの金塊強奪計画の行方は……?

 6人のうち、唯一、大阪弁で話す野田を演じた桐谷健太さん。サラリーマンなのに強盗の仲間に入るという、意外なキャラクターを熱演した桐谷さんに、大阪が舞台となった本作について、いろいろと語っていただきました。桐谷さんの大阪弁を、できるだけそのままの雰囲気でお伝えしたいと思います。


桐谷 健太
1980年、大阪府出身。2002年、ドラマ「九龍で会いましょう」でデビュー。主な出演作に映画「ゲロッパ!」「パッチギ!」「パッチギ! LOVE&PEACE」「クローズZERO」「ROOKIES -卒業-」「BECK」「ソラニン」「オカンの嫁入り」「アウトレイジ ビヨンド」、ドラマ「ROOKIES」「流星の絆」「JIN -仁-」、NHK大河ドラマ「龍馬伝」、「ストロベリーナイト」「絶対零度 〜特殊犯罪潜入捜査〜」「専業主婦探偵〜私はシャドウ」「Wの悲劇」「遅咲きのヒマワリ 〜ボクの人生、リニューアル〜」などがある。

——桐谷さんが演じた野田は、コンピュータ会社に勤めるサラリーマンで、銀行襲撃計画に参加するという役でしたが、役作りが難しいのではないかと思いました。撮影に入る前に、どんな準備をしましたか?

桐谷 健太
 「台本を見たときに、感情から入る役と、ビジュアルがポンと浮かんでくる役とがあるのですが、今回はすぐにビジュアルが見えてきました。野田の髪型は後ろに流している感じで、メガネをかけていて、こんな色のスーツを着ているんやろなとか、ポンポンポンとビジュアルが出てきて。ビジュアルが浮かぶと、もう自分の中に役がスーッと入ってくるんですね。だから変に難しい役作りをしなくても、野田の過去に何があったのかとか、なぜシステムエンジニアという仕事をしていて、強盗に手を染めることになったのかを考えて、野田のイライラした気持ちや鬱憤が溜まっていった過程に共感するうちに、役を理解できました」

——桐谷さんが考える野田とは?

 「どっちかと言うと、この映画のメインキャラクターの中では、一般の人に一番近いんやないかな。他のやつらがぶっ飛び過ぎている中で、『ちょっと待ってくれよ、大丈夫なのか』と確認するのが、野田の役目なんです。野田は借金があって、真面目な人だったら返していこうと思うんでしょうけど、こいつは『1回賭けに出よう』というような性格なんですね。そのくせ、途中で怖くなったりするところが、すごく人間らしいというかね。おいしい匂いに、すぐ引かれるっちゅうか(笑)。BMWに乗ったり、高そうな時計を着けたり、高級スーツを着たりとか、すごく見栄を張るやつですね。でも結局、小心者だからビビッている。野田のそういうところを表現する芝居は楽しかったです」

桐谷 健太
——井筒監督とは、役柄について話したりしましたか?

 「一切しないですね。い〜っさい、しないです。こんなん、井筒さんおったらもう恥ずかしくて話せないし(笑)。井筒さんとの仕事は4回目ですけど、役の話とかしたことないです。このあいだ飲んだときに『もう健太は自由演技。俺は任せてるから』って言われました。嬉しさもありますが、その分難しさもありますね。いきなり、『おい、お前、なんかおもろいことやれ』って言われるんですよ。キャンバスだけ用意されて、『はい、絵描いて』と言われているみたいです。『えっ、何の絵とかも言うてくれへんの?』って思いますよ(笑)。難しいけど、そこで感動させなあかん。でも、それが楽しいというか、ゼロからやったるわって気持ちになります。今回も、野田の役を担いつつ、こいつが魅力的な存在感を放てるように、芝居をしていかなあかんと思って、真剣にやりました」

——今回の撮影現場は、どんな雰囲気でしたか?

桐谷 健太
 「メインキャスト全員、独特の空気感を持っていて、すごく気持ち良かったです。『なんや、この空気感』って思いました(笑)。誰1人、変に緊張させる人もいないし。それは多分、井筒組だからなんです。やっぱり監督がトップであるべきだし、それにみんなが付いていくというのが一番シンプルな形なんですが、たまにそうじゃない現場もあるんですよね。『あれ、カメラマンさんの方が偉いの?』『あれ、プロデューサーの方が演出してる?』『誰の言うことを聞けばいいの?』みたいなことがあるわけですよ。それはそれでいいのかもしれないですが、井筒組は監督の方向にみんなが向かっている。その中でそれぞれが個性を発揮して、良いものが生まれるんですよね。そういう意味では、すごく気持ち良いですね、井筒組は」

——共演者もスタッフも、とても良い雰囲気だったのですね。

 「そうです。共演者と言えば、ブッキーとは、あ、妻夫木さんをそう呼んでるんですよ、昔『69』という映画でちょこっと絡ませてもらって。西田さんとも『ゲロッパ!』で初めてお会いしてからだいぶ経ちますが、今回、『この人らと俺は、ちゃんと2人のシーンでもやれるようになったんだな』と思いつつ、『いやいや、次の井筒組では、俺が主役でしょ』とか(笑)、いろいろなことを考えながら演じて楽しかったですね」


桐谷 健太
——大阪での撮影エピソードを教えてください。

 「大阪では大体遊んでましたね、地元なんで(笑)。撮影が終わったら、実家とホテルを行ったり来たりしていました。地方で映画を撮っていると、すごく団結力が生まれるんです。みんな同じホテルに泊まって、寝て起きて、現場に行って、みんなで飯食ったり飲みに行ったりとかするから、団結するんでしょうね。途中から東京に戻って撮影したら、みんな苦労してましたね。明らかに空気感が変わるから。井筒さんも、『これが大変なんや、健太』って言ってました。みんな自宅に帰り出すでしょ。自宅から通うと、仕事の感覚になるんかなぁ。みんなで合宿して、1つのものを作ってるという感覚から、急にふと覚めるみたいな感じになってしまうのかもしれないですね」

——桐谷さんが思う、大阪の魅力とは?

 「やっぱり大阪は商売の街だから、熱気があって、みんなパワーがあるし、にぎわっているイメージがあります。あと、俺の中では、自立しているイメージがありますね。大阪のパワーは、この映画の中の“勝負する場所”として面白いんじゃないですかね。東京は東京で良いんですけれど、クールなイメージがあるじゃないですか。大阪でやるというところに、面白さがあると思います。そういう意味では、今回、大阪弁をしゃべるのは俺くらいしかいないから、大阪弁は大事やなと思いました」

桐谷 健太
——このインタビューが掲載される日経ウーマンオンラインは、女性向きサイトなので、ぜひたくさんの女性にもこの映画を見てもらいたいと思います。桐谷さんから女性の観客を増やすような、強力なおすすめコメントをいただきたいのですが。

 「えっ、マジッすか? 俺、男やから難しいですねぇ。(考え込んで)えーっとね、この映画には草食系男子が1人もいないんですよ。もういいでしょう、草食系の時代は。みんな、肉食系男子を見に来てくれよ。で、食べられてくれよ、この映画に」

——決まりましたね! 次は、井筒組で主役、ですね!

 「はい、絶対やりますよ!」