山田隆道の幸せになれる結婚 (5) 正しい妻の褒め方

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一般的に日本の男性は欧米の男性に比べ、女性を褒めることが苦手だとされている。

日本男児には古くからいわゆる「恥の文化」があるためか、女性を目の前にして、その本人の良いところを褒めるなどという行為は、照れくさくてしょうがないのだろう。

特にその対象が妻になってくると、余計にそうだ。

親密すぎる関係性が、素直になることの邪魔をする。

本音では妻を愛していても、それを言葉にするのは難しいものだ。

また、世の男性の中には「妻のことを褒めたくとも、いったいどうやって褒めていいかわからない」と首をひねる方も多いことだろう。

確かに褒めるという行為は、実に漠然としていて具体性に乏しいものだ。

「きれいだね」「かわいいね」などといった褒め言葉にはなんとなく実体がないように感じられ、簡単に口にするのを躊躇ってしまう。

では、「いつも支えてくれてありがとう」などといった御礼はどうか。

これはこれで妻に喜ばれるかもしれないが、褒め言葉とは大きく違う。

しかも、執拗な御礼は時として相手の心を重くしてしまう可能性もある。

御礼のほうが意外にデリケートなのだ。

かくして、今回僕が提唱したいのは「正しい妻の褒め方」、その名も間接的絶賛作戦である。

これをマスターすれば、夫婦関係もますます良好になることだろう。

この作戦とは、要するに妻のことを直接褒めるのではなく、何かアイテムを挟んで間接的に褒めるという手法だ。

たとえば「そのピアスかわいいね。

どこで買ったの?」「今日のスカートかわいいね。

よく似合っているよ」「ネイルもお洒落じゃん。

センスいいね」などといった具合に、妻の全体像をただ漠然と褒めるのではなく、なんでもいいから細かいアイテムを発見して、それを目的として具体的に褒めていく。

そうすれば、それぞれのパーツごとに妻を褒めることができるので、誰でも簡単に褒め言葉を複数回反復できる。

したがって、生来の口下手だという男性には特におすすめしたい。

目的語を変えるだけでいいのだから、精神的負担も軽くなるはずだ。

一方、これらの褒め言葉を受け取る相手側にしてみても、何か具体的な目的語が間に挟まっていることで、「そんな細かいところまで見てくれているのか」と感動し、説得力がグンと増すことだろう。

妻の気分が高揚すること間違いなし(誇大表現)である。

こういう人間心理は、僕も思い当たる節がたくさんある。

作家という肩書を背負っていると、自分の作品についての不特定多数の様々な批評を耳にする機会が多く、またネットを開けば否が応でもあらゆる批評が目に入ってくる。

そういうとき、作家として嬉しいのはもちろん作品を称賛されることなのだが、その称賛の言葉が具体的であればあるほど喜びは増大する。

作品全体を「とてもおもしろかった」と褒めてくれることよりも、「どこそこの、あの一文がとても良かった」「どこそこの、あの描写が格別だった」などと、細かいところを的確に指摘されるほうがはるかに快感を覚えるのだ。

ちなみに、そもそも僕は読者の方々から「ストーリーや内容が好きだ」と言われるよりも「文章や描写が好きだ」と言われるほうが嬉しい作家である。

最新刊の『虎がにじんだ夕暮れ』(PHP研究所)についても、正直なところストーリーや設定は定番だと自認しており、奇をてらったようなプロットも確信犯的に避けている。

なぜなら僕自身がそこをあまり重要視しておらず、それよりも文章美や情景及び心理描写に尽力しているからだ。

話が大胆に逸れたので、元に戻します。

とにかく夫婦間で相手を褒めるという一見難しそうな行為は、「間接的」というヒントさえつかめば一気に簡単になり、しかも相手にとっても喜ばれる言葉になる。