クラブ「ル・ジャルダン」オーナーママ 望月明美氏

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クラブ「ル・ジャルダン」オーナーママ 望月明美(もちづき・あけみ)
東京都生まれ。上場企業の社長・役員や政治・芸能関係者を顧客とし、経営者として、人材育成面でも注目された。著書に『銀座ママがそっと教える「空気が読める人」の会話術』などがある。

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■「おまえ、相変わらずバカだなぁ」の意味

権力を握ろうと必死になっている人って、かわいいですよね。

私たちは職業柄、このお客様はどこまで上がっていく人かをなんとか嗅ぎ分けようとするわけですが、まず、言えるのは、権力に野心を持っている人に共通するのは飲み方がひと通りではないということです。子飼いの部下とそうでない部下に見せる顔が、明らかに違う。いろいろな顔を持っていて、その場その場に応じて使い分けることができると言ってもいいでしょう。変わり身の早さに、凄みすら感じることもあります。

たとえば、子飼いの部下に対して、

「おまえ、相変わらずバカだなぁ」

などと、わざとラフに接することで、

「君は一番信頼している気の置けない部下だ」

というサインを送る一方で、新たに部下になった方に対してはいくら飲んでもスキを見せない。仕事ができる部下の前でも、まだ親しくなっていなければ、絶対にスキを見せません。「できる部下は味方につければ懐刀になるが、敵に回すとやっかいである」ということを、よく知っているのでしょう。飲んでいる間も最後まで気を使っているのがわかります。

反対に、出世しえない、あるいは、取締役にはなれないとわかっている部長など、出世を諦めてしまった人の飲み方にはメリハリがありません。いつも同じ相手と、同じ話をしているイメージが強い。しかも、話題が内向きです。お酒の席で家族の話と趣味の話ばかりするようになってしまったら、サラリーマンとしては終わっていると考えたほうがいいでしょう。

■「チラ褒め」で部下の心をワシづかみ

「褒め上手」というのも、上へ上がっていく人に共通する特徴です。ただし、決してあからさまな褒め方はしません。

たとえば、ふとした会話の合間などに、

「この前の報告書、あれは良かった」

と、チラリと一言だけ褒める。あるいは、

「こいつの息子、今年の春医学部に合格したんだよ」

などと、ホステスに向かって、部下の家族のことを軽く褒めたりする程度。部下の家族の事情に精通しているのも出世をする人の共通項ですが、こうしてチラリと褒めることによって彼らが何を意図しているかといえば、「自分の言動を部下に気にさせようとしている」のです。

部下とは、常に上司の評価を気にしている存在です。では、そんな部下という生き物の心をワシづかみにするにはどうすればいいでしょうか。部下を褒めすぎれば、舐められてしまいます。しかし、まったく褒めなければ、部下に関心がない上司ではないかと思われてしまう。だからこその、「チラ褒め」なのです。

チラ褒めされた部下は、上司が自分に目をかけてくれていると感じます。しかし、決して「おまえは完璧だ」と褒められたわけではありません。完璧だと評価されるためには、もっと仕事をして、もっともっと上司に認めてもらわなくては……。チラ褒めされると、部下はこうした心理に陥ってしまうのです。

権力を握る人は、チラ褒めすることによって「たくさんの部下が自分の言動を気にする状況をつくり出していく」ことに長けています。自分の言動を常に気にしている部下が、権力奪取のために身を挺して立ち働いてくれることは言うまでもありません。チラ褒めこそ、人心掌握術の肝だと言っていいでしょう。

このように、権力を握ろうと野心を燃やしている人は、お酒の席でも気を抜くことなく頭を働かせています。心底寛いでお酒を楽しむということは、ほとんどないと言ってもいいでしょう。そして、ひとりで飲みにこられることもまずない。仕事と関係のないお酒はムダだからです。

この人はそこまでして権力を手に入れたいのか……。そんなふうに思うこともあります。でも、それが見えてしまうと、いじらしくてかわいくて、当店にいらっしゃる限りはなんとかお手伝いしたいと思ってしまうのです。

(クラブ「ル・ジャルダン」オーナーママ 望月明美 構成=山田清機 撮影=二石トモキ)