鈴木 : 本当にわかりやすかったです。

そのタイムスリップですが、まずは第2章、WTO(World Trade Organization : 世界貿易機関)が誕生した1995年へと向かいますね。

そこではWTOの前身がGATT(関税と貿易に関する一般協定)であること、最も今的であるはずのWTOがグローバル化の進展により、今や取り残された存在になってしまった経緯と理由が明かされています。

この第2章を読んで、WTOがうまくいかない時代状況や、実際にいくつかの問題点があるにしろ、FTAやTPPで細かく貿易区域が限定され始めている今こそ、WTOが掲げる自由貿易の基本理念に立ち返るべきなのではないか、と改めて考えさせられました。

鈴木 : この相互関係という言葉と互恵関係と言う言葉はとてもよく似ていますが、実は根底の部分で、その意味が違ってくるのですね。

浜 : そうなのです。

相互主義というのは、奪い合いの論理、それに対して互恵主義は分かち合いの論理と言えます。

つまり相互主義は、市場においてどれだけのシェアを奪い取ることができるのかを考えること、一方、互恵主義は市場をいかにうまく皆で分かち合いシェアできるかをおもんばかること。

奪い合いの対象として、マーケット用語で言うところの占有率のシェアと、フェイスブックなどで浸透している分かち合いを意味するシェアとの間には、大きな違いがあります。

奪い合いのシェアの意識が強まれば、それは地球経済を斬り刻み、占有率を高める行動につながっていくことになります。

鈴木 : EPA、FTA、TPPは、各国同士の奪い合い、国々が自国の占有率を高めるためのシェア意識と言えそうですね。

この「シェア」については、第3章において1948年、第4章で1930年代へと遡る旅をした後、第5章にて、浜先生の見解を述べていらっしゃいます。

これまで転倒、倒錯、混迷してきた「通商」の世界の未来に向けて、その解決策が見出されていきますね。

浜先生らしい発想だなぁと感じました。

私がまさに「惚れた!」ご意見でもあります。

鈴木 : まとめとなる第5章では、そもそも市場というものが、弱肉強食のジャングルの世界なのか、ということについても触れていらっしゃいます。

浜先生はそこは違うのではないかという考えをお持ちですね。

浜 : はい。

ジャングルという世界は、淘汰の世界であるのは確かですが、調和を保った共生の世界でもあるわけです。

つまりあらゆる生き物たちが、各々に一定の役割を果たし、生態系の循環が形成されている世界です。

強者だけが他の全てを食べ尽くし生き残ったとしたら、そのうちに生態系は滅びてしまいます。

本来の共生・互恵の関係はジャングルの世界でも成立しているのです。

グローバル・ジャングルの共生の論理を多くの人たちが知り、そこから今、そしてこれからの時代に合った理念・解決策を見出すことができれば、と思っています。

鈴木 : その理念探しのマラソンのゴールを読者の皆さんにも目指してほしいものですね。

今日は忙しい中、ありがとうございました。

浜 : ありがとうございました。