ここから5年の間に何が起こるのだろうか…
多くの投資家にとって、今は目先の不透明感でいっぱいだろう。
ユーロ問題は秋に大きな試練を迎えるとか、米国の景気はどうも腰が定まらないとかで、この先どうなるのかさっぱりわからない。

これでは、まともに株を買う気など、とても湧いてこない。
こんなときでも、われわれ長期投資家は意外と思われるかもしれないが、涼しい顔をしている。
それはなぜか。タネを明かせば簡単なことだ。




長期投資家は、いつも5年から10年ぐらい先まで考えようとする

多くの投資家がこの相場環境にどう対処しようか悩ましい気持ちでいるのが現状だろう。一方、われわれ長期投資家はそれを横目に見ながら、株安のタイミングを狙ってはどんどん買いの仕込みを進めていこうと考えている。

われわれ長期投資家は、いつも5年から10年ぐらい先まで、まとめて考えようとする。そのうえでこれから5年の間に起こりうる投資リスクは全部そぎ落としてしまうのだ。そして、残ったものの中からのみ投資チャンスを見つけようとする。

たとえば今なら、世界的な国債バブルがいつ崩れ始めてもおかしくはない。それは同時に、長期金利の急上昇を招く。

おそらく、ここから5年の間には、どこかでその日が到来するだろう。

となると、国債を含めて債券投資からは一刻も早くおさらばしておこう。

これだけ高値追いしてきた国債相場だ。この先、それほどの投資妙味は残っていないはずだ。

これまで全員が参加して買い漁ってきた国債相場だ。一度崩れ始めたら、もう売れっこない。それどころか、売りが売りを呼ぶ悪夢の中を債券投資家はのた打ち回ることになる。その仲間になる気はないよね。

また、長期金利の急上昇は、多くの金融機関や企業の経営を直撃するだろう。

金利コストの加速度的な増加で資金繰りに苦しむだけでは済まない。もっと大変な事態が待っている。

売りが売りを呼ぶ悪夢の中を債券投資家はのた打ち回る。
その仲間になる気はないよね。



どんなことが起こっても絶対に変わらないものは、人々の日々の生活だ!

世界的な金融バブル崩壊の後始末は遅々として進んでいない。そこへ、長期金利の急上昇が襲ってくると、複雑多岐に絡み合った債権・債務の処理が一層困難になる。ひとつ間違えると、銀行を含めて倒産の連鎖もありうる。

したがって、このあたりに関連する企業への株式投資もクワバラクワバラである。

この先、5年でも10年でも、はたまた20年でもかまわないが、絶対に変わらないものは何だろう?

当コラムを愛読している皆さんなら、すぐピンと来よう。どんなことが起こっても絶対に変わらないものは、人々の生活である。世の中で何が起ころうと、世界中の人々の生活はなくなりっこない。

たとえ国債が暴落して長期金利が急上昇しても、たとえそれで銀行が倒産したりして世界の金融市場が大混乱に陥っても、人々の生活は今日も明日も同じように続いていく。

当然のことながら、人々の生活を支える企業の生産や供給、すなわちビジネス活動もいっときとして途切れることはない。金融不安が発生して、信用供与機能がマヒしてもか? 当然だろう。

読者の皆さんだって、金融不安が発生したからといって餓死する気はないはず。何があっても、生きていこうとするじゃないか。

そう、企業のビジネス活動は何があっても続く。たとえ金融不安で信用機能がマヒしても、それを補う方法を見つけ出すのが経営である。

なにしろ、人々の生活需要はずっと存在し続けるのだ。そういった需要に応えていくのが、ビジネスというもの。

いろいろな混乱時に知恵を絞り、工夫を重ねた者が、より大きなビジネスを手にするだけのこと。

そういった可能性の高い企業の株を、今のうちに仕込んでおけば、これほど安全で確実な投資はないだろう。

先行き不透明とかで多くの投資家が逃げ腰の今こそがチャンスだ!

もうひとつ、われわれ長期投資家がすっきりした顔をしている要因は、株価全般が大バーゲンセールにあるからだ。今なら、これはと思う企業の株がより取り見取りで、好きなだけ買い仕込める。なにしろ、株価はやたら売られているのだから。

これが、先行きの見通しに一条の光でも差し込んできたら、もうそうはいかない。目端の利く投資家の買いが入ってきて、株価は早くも上昇に転じる。そこからは一般の相場追いかけ型投資家の買い場面となり、株価をさらに上昇させる展開となる。そうなると、もう思うように安値の買い仕込みできなくなるのだ。

ほとんどの投資家は上昇相場が見えてきてから買い始めるが、われわれ長期投資家にすればそれでは遅い。 

先行き不透明とかで、多くの投資家が逃げ腰の今こそがチャンスなのだ。ここで、しっかり買っておかないと、上昇相場が始まってから慌てて買
い群がることになりかねない。それじゃあ、つまらないだろう。だったら、さっさと買っておこうではないか。

もう、今月のメッセージはおわかりだろう。

先行きが不透明だなんてことを言って買えない理由を探すのは、そのへんの投資家に任せておこう。

われわれ長期投資家は、不透明とかで皆が動けない間に、たっぷり買い仕込んでおくのだ。そして、すっきりした顔をして、いずれやって来る上昇相場を待ってやろうぜ。

われわれ長期投資家は、不透明とかで皆が動けない間に、
たっぷり買い仕込んでおくのだ。



澤上篤人(ATSUTO SAWAKAMI)
さわかみ投信代表取締役会長兼最高投資責任者

1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『5年後の日本をいま買う長期投資』(小社刊)、『大丈夫、なんとかなる。「 貯金ゼロ」からはじめる軽やかな生き方!』(朝日新聞出版)など著書多数。


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この記事は「WEBネットマネー2012年11月号」に掲載されたものです。