借金の取り立て屋に学ぶクレーム対処術

写真拡大

 仕事をしていると、言いにくいことを言わなければいけない場面や、頼みにくいことをお願いしなければいけない場面にしばしば出くわします。仕事だから、と割り切れればいいのですが、結構ストレスになりますよね。
 そんな場面が一日中、毎日続く仕事があります。「督促」の仕事です。
 現在3万部を超えるヒットとなって話題の『督促OL修行日記』(文藝春秋/刊)の著者、榎本まみさんは、新卒でカード会社に入社。いきなり督促部門に配属され、キャッシング部門の督促、つまり「借金の取り立て」を担当することになりました。
 借りたお金は返すのが当たり前。しかし、顧客はそんな常識が通用する人ばかりではありません。執拗な取り立て行為が法律で禁じられていることもあり、中には逆ギレしたり、泣き出したりする人もいます。
 「うるせえんだよ馬鹿野郎!」「今度電話してきたらぶっ殺す!」などといった顧客からの恫喝は日常茶飯事で、出勤すると社屋の前にガソリンが撒かれていたこともあったそう。
 榎本さんはそんな状況におびえながらも「取り立て屋」としての仕事を続け、本書にその日常をつづっているのですが、彼女が顧客から怒鳴られ、なじられ続けながら債権を回収するために身につけたコミュニケーション術は、他の仕事でも使えそうなものが多くあります。

■約束日時は相手に言わせる
 取り立てで重要なのは、「いつまでに入金するか」という期日を相手に言わせることだといいます。そうすることで、相手がその約束を破った時に「お客様がおっしゃるからお待ちしていたのに…」と相手の罪悪感を刺激し、入金に繋げることができるのだそう。
 これは、しょっちゅう遅刻をしたり、仕事の締め切りに遅れたりする相手にも有効かもしれませんね。

■厳しいことを言う時は「ツンデレ」で
 督促の電話をかけられて嬉しい人などいません。人から嫌われ、疎んじられるのがこの仕事の宿命です。しかし、榎本さんの職場には、どういうわけか顧客から絶大な人気を集める先輩がいたそう。その人は、長期延滞者への督促という難易度の高い仕事を任されていたにも関わらず、群を抜いて回収率が高かったのだとか。
 その先輩のやり方は、厳しい言葉で入金を求めた後、甘い声で「くれぐれも無理はしないでくださいね」とフォローするというもの。
 この「ツンデレ」には、顧客もつい心を許してしまい、結果的に回収率アップにつながったのでしょう。
 シビアな話ほど、最後は優しい言葉やポジティブな言葉で締める。どんな交渉事でも応用できるのではないでしょうか。

■「謝ればいいと思ってんだろ!」といわれないクレーム処理術とは?
 督促の電話をしても、相手がおだやかな人物とは限りません。中にはいきなり怒鳴りはじめ、クレームに発展してしまうことも。
 不慣れな人ほど、相手の剣幕に臆してしまい、何を言われても「申し訳ございません」と謝ってしまい、それに対して「謝ればいいと思ってんだろ!」とさらに相手の怒りが増すこともしばしばです。
 そうならないためには、ただ「申し訳ございません」というだけでなく、「○○してしまい、申し訳ございません」と、可能な限り具体的に謝ることだそう。
 クレームをつけるお客さんは、謝ってほしいだけではなく、自分の気持ちをわかってほしいのだ、ということは心にとめておいた方がよさそうです。

 榎本さんは、顧客からの恫喝や脅迫におびやかされながらも、最終的には年間2000億円もの債権を回収するまでになったそう。本書では「取り立て屋」の日常が、あくまでコミカルに書かれていますが、その中には顧客との緊迫した会話で培った、貴重なコミュニケーション・スキルが含まれています。
(新刊JP編集部)