【おとな絵本】それぞれに個性と役割があるってことを教えてくれる『スイミー』

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子どもにワクワクや楽しさ、悲しさ、教訓などを教えてくれる絵本。大人になって読んでみると、また違った印象を受けることもあるかもしれません。夜眠る前に、雨降りの日に、もちろん、晴れの日だって、絵本を読む時間は、きっと、貴重な時間となることでしょう。

というわけで、大人も子どもも楽しめる絵本の紹介をしていきたいと思います。
第9回は、レオ・レオニ作・絵、谷川俊太郎訳「スイミー」です。

スイミーは、小学校の国語で習った! という方も多いかもしれませんね。それだけ、みんなに親しまれているこのお話は、絵本で読むと、さらに、その絵の美しさや迫力を感じたり、お話自体の印象も少し変わってくるかもしれません。

ストーリーはこんな風。
ちいさな赤い魚の兄弟たちの中で、1匹だけ真っ黒な色をした「スイミー」。
大きなマグロがやって来て、スイミーの兄弟の赤い魚たちを飲み込んでしまいます。逃げることができたのはスイミーだけでした。

スイミーは、怖くて、寂しかったけれど、海の底を泳ぎました。すると、海の中にはくらげやいせえび、いそぎんちゃくなど、素晴らしいものやおもしろいものがたくさんあることを知りました。

やがて、岩かげに隠れているスイミーの兄弟にそっくりなちいさな赤い魚たちに出会い、「遊ぼう」と誘いますが、「大きな魚に食べられるから」と出てきません。スイミーは考えて、みんなで大きな魚のふりをして泳ごうと誘います。決して離れ離れにならず、持ち場を守ることで、赤い魚たちは大きな魚の形になり、目の部分はスイミーが担当して、大きな魚を追い出すことに成功しました。

版画の手法で描かれた美しい色彩で、海の中の透明感が表現されたレオ・レオニの絵。それに、谷川俊太郎さんのリズミカルな訳が絶妙なコンビネーション。

小さな赤い魚たちが持ち場を守って、大きな魚に変身し、スイミーが「ぼくが目になるよ」と自分だけができる役割を買って出る場面は、みんなで力を合わせれば、困難も乗り越えられるというだけでなく、個性を認め、一人ずつが、役割を持っているということを教えてくれます。

また、海の中の素晴らしいものを紹介する場面では、「にじいろのゼリーのようなくらげ」「すいちゅうブルドーザーみたいないせえび」「ドロップみたいないわからはえてる、こんぶやわかめ」「かぜにゆれる、ももいろのやしのきみたいないそぎんちゃく」など、とても豊かで、ステキな表現がたくさん。

個人的には、にじいろのゼリーのようなくらげの絵は、とてもきれいで、スイミーがこんな素晴らしい色を見たのは生まれて初めてだったかもしれない、どんな風に感じたのかな、などと想像してしまいます。

こんぶやわかめも、レースのような模様が印象的なんです。

知恵と勇気を振り絞って、新しい世界に飛び出すということは、子どもも大人も経験すること。それに、みんなで力を合わせることで、できることだってある。

いつだって、忘れたくない、そんな気持ちを思い出させてくれる1冊です。

持ち運びにはちょっと大きいかな。おうちで、ゆっくり読むのにいい絵本です。

レオ・レオニ作・絵、谷川俊太郎訳「スイミー」[好学社]