「東京メトロっていいね」と言われる未来を目指して

ビジネスパーソン研究FILE Vol.190

東京地下鉄株式会社(東京メトロ) 田中麻衣子さん

イベント開催など旅客誘致を担当後、現在は経営管理業務を担当している田中さん


■イベント運営や旅行代理店への拡販営業で、お客さまの反応がじかに得られる喜びを実感

東京メトロのファンを1人でも増やす――これが、営業部営業推進課に配属された田中さんの最初のミッション。各種イベントを運営する旅客誘致担当としての初仕事は、東池袋駅コンコース内で開催したフリーマーケット「メトロデフリマ」。配属後1週間たたないうちに、イベント業務の当日運営を初めて体験した。
「初めの経験で、どう動いて良いのか、新人の私にはまったくわかりませんでした。ただ精一杯イベントに貢献したいという思いから、メトロブースでの売り子をやった際に、元気だけを売りにお客さまの呼び込みを行った思い出があります。とにかくがむしゃらでしたね」

次に担当した大きな案件は鉄道ファンや子ども連れのファミリーなどに人気の「車両基地イベント」。北綾瀬の車両基地を一般に開放し、普段は入ることのできない運転席に座る体験ができるなど、たくさんのファンサービスを盛り込んだ大規模なイベントだ。そのためには駅員や運転士、電線や車両の修理部門など、他部署の協力が必須。また、グループ会社や人材派遣会社、警備会社など、多岐にわたる関係者をまとめなければならない。田中さんは、先輩の交渉の場に立ち会い、調整の難しさを目の当たりにした。

イベント前日は泊まり込みで設営を行い、当日は朝5時に会場入り。イベント中は会場を巡回し、困っているお客さまに声をかけたり、スタッフの手が足りないところを補ったりと、全体の管理を担当した。
「来場者が少なかったら…と不安でしたが、1万人近い集客があり、ホッとしました。肉体的にもかなりタフな経験でしたが、会場で『パパ、運転席に乗る!』とはしゃいでいる子どもの姿を見て、疲れが一気に吹き飛びました(笑)。これまでにない来客数だったので、少しは東京メトロのファンを増やす種まきができたのかなと思っています」

そのほかにも、田中さんは「夏休み仮面ライダースタンプラリー」、駅コンコース内で開催する音楽イベント「メトロミュージックオアシス」など、多くのイベントに携わった。
「準備は常に同時進行ですし、イベントは休日に開催するため、休日出勤も少なくありません。でも、本社の中ではお客さまと直接触れ合う機会を持てる数少ない部署。イベントを通して、お客さまの反応がじかに伝わってくる仕事に、とてもやりがいを感じました」

入社2年目、今度は「1日乗車券」の拡販を行う営業開発担当となった。主なターゲットは、地方から東京に旅行にくる観光客や成田空港経由で東京に観光にくる外国人旅行客。田中さんは、年に4、5回出張して、全国の旅行会社を回り、東京行きのツアーに「1日乗車券」を利用してもらう販促活動を行った。
「初めて、飛び込み営業も経験しました。『忙しいのに、何の用?』と冷たくされて驚きましたが、これが社会の現実なんだなと(笑)。一方で、営業に回った旅行会社から後日連絡があり、その後、頻繁に情報交換をするようになったこともあります。飛び込み営業は、案外いいきっかけになるということを知りました」

台湾の旅行博覧会に、自分のアイデアを盛り込んだ「1日乗車券」のブースを出展したことも忘れられない経験だ。
「アイデアは主に3つ。1つは、路線図の裏に、1日乗車券の紹介と東京メトロで回れる名所を入れて、認知度を高め、利便性をアピールしたこと。もう1つは、利用者の個人ブログへの登場を増やすため、記念撮影用に駅員の服装を描いた顔出しパネルをブースに用意したこと。これはかなり受けました(笑)。そして、若い台湾人女性の個人旅行客が増えていることを踏まえ、ブースに若い女性好みの装飾を施しました。中でも路線図は、用意したイベント4日分が2日ですべてなくなってしまうほど大好評でした」


■各部署の課題を発掘し、解決を促す。会社の将来像が見える経営管理業務に新たなやりがい

3年目、田中さんは経営企画本部経営管理部に異動となった。
「私の理想は『現場に近い部署を経験した後、会社の中枢にかかわる』というキャリアプラン。あまりに早い段階で理想が達成してしまい、ビックリしました(笑)。営業推進課でやりたい仕事がまだあり、後ろ髪をひかれる思いはありましたが、ミクロからマクロの仕事に移ることに、とてもワクワクしました」

田中さんは、グループ会社12社の業務見直しやサポート業務を行うグループ管理担当になった。
「グループ各社の業務内容や業績を深く知っていないとできない仕事なので、そのプレッシャーは大きかったですね。また、業績を見るには財務諸表の読み込みが必須ですが、数字を見るのに慣れなくて(笑)」

わずか約7カ月の担当業務だったため「何もやり遂げることができなかった気がして悔しかった」という田中さんだが、現在は経営調査担当として活躍している。主な業務は、本社22部署の業務状況を把握し、各部署の取り組むべき課題を発掘。四半期ごとに「行動計画進捗フォローアップ」の資料にまとめ、経営会議に上げること。その後の進捗状況の把握も欠かせない。
「各部署の課題を発掘し、経営層に知らせることは、いわばアラート機能。経営層に認識されることで、課題が注目され、解決のきっかけとなるからです。とはいえ、各部署は自分たちの課題が取り上げられることを歓迎しませんから、『今のうちに課題に上げて、早めに解決しましょう』と説得するのも私の役目。ネガティブな情報はあまり表面化しないので、日ごろから同期や知り合いの先輩・後輩とコミュニケーションを積極的に取り、リアルな情報を収集するように心がけています」

田中さんは、お客さまと身近に接してきた営業推進課時代とは違うやりがいを、現在の仕事に感じている。
「会社が今何に取り組んでいるのか、この先どの方向に進もうとしているのかという将来像が見えるこの仕事に、新しいやりがいを感じています。東京メトロの課題を発掘していくことが、東京メトロの将来につながり、いつかお客さまに『東京メトロっていいね!』と言っていただけるのだと信じています。どんな仕事であっても、第一に考えるのはお客さまですが、机上で考える現在の仕事は、駅など現場で働く人たちの実情と離れてしまいがち。現場の先にお客さまがいるということを忘れずに、現場の状況を考えて仕事をするよう心がけています。個人的には、仕事もプライベートも充実させてイキイキと働くことが目標です。女性の総合職がまだ多いわけではありませんので、先輩の後姿に私が励まされたように、私も後輩の手本になれたらいいですね」