ビジネスコンサルタント 
山崎将志氏

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ビジネスコンサルタント 山崎将志(やまざき・まさし)
1971年、愛知県生まれ。94年東京大学経済学部卒業後、アクセンチュア入社。2003年に独立。事業再生コンサルティングや、生活総合支援サービス「カジタク」などの運営に携わる。『残念な人の思考法』は26万部を突破するベストセラーになった。

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「楽しく遊んでいる人ほど仕事ができる」。これは私の持論だ。仕事と遊びは、切っても切れない関係にある。仕事がうまくいっているからこそ遊んでいて楽しいのだ。反対もまたしかりである。

私にとって遊びといえば、人と会い、ゴルフに行き、ジムに通い、家族と過ごすことだ。ときにはドライブにも出かけたい。読書も遊びのうちに入る。だから平日は6時や7時には帰りたい。

遊ぶための時間は戦略的に捻出しなくてはならない。それが仕事の生産性を上げるインセンティブとなる。プライオリティと効率を考えて仕事に取り組み、時間内にすべて終える。楽しく遊んでいる途中で、会社から呼び出しがあっては興醒めなので、仕事は完璧に仕上げ、何かあったときのバックアップもきちんと整えておく。

遊びがエスカレートしていくと、お金もますます必要になってくる。もっといい車に乗りたくなるし、いい道具を使いたくなる。遊ぶ時間を減らさずに、お金をより多く稼ぐ方法を生み出さなくてはならない。こうして、遊べば遊ぶほど、生産性が上がっていく。その一方で、持ち時間のすべてを使って仕事しようとする人がいる。毎日、終電間際まで会社に残っているような人だ。

もし、あなたが「時間がいくらあっても足りない」と思いながら日々残業に明け暮れているのなら、思い切って1カ月間、定時に帰ってみてほしい。

これにより、ふたつ気づくことがあるはずだ。ひとつは、あなたのそれまでの仕事が、いかに非効率的に行われていたかということ。仕事の優先順位をつけ、無駄を省かなければ、決められた時間内に仕事を終わらせることはできない。仕事をする時間は8時間なら8時間と決め、それを本当に実践することが第一歩だ。

もうひとつ、定時に上がるようになってはじめて気づくのは、あなたが仕事以外に趣味がない可能性がある点だ。会社にダラダラ残っているのは、仕事がたくさんあるからではなく、実は定時に上がっても、何もすることがないからなのである。

はじめのうちは家に帰ってテレビを見たり、家族と過ごしたりするのもそれなりに楽しめる。友達と会い、同僚と飲みにいく時間もできるだろう。しかし、最初は家に早く帰ってくるあなたに喜んでいた子供が、しばらくすると、「お父さんいつも帰り早いけれど、最近ヒマなの?」と言い始める。かといって、飲みにいくにも何をするにもお金がかかる。飲む以外には特に趣味もない、お金もない。だから会社にいてしまう。そんな自分に愕然とする。しかし、そうなったらしめたものだ。それが、あなたが目標を見つめ直し、人生を再定義し、生産性の高い人間に変わるきっかけとなるのだから。

決めたことを実施することは本当に重要だが、難しいものだ。

「こいつは本当に残念な男だ」。私を心底がっかりさせた友人がいる。少し前のことだが、彼とダイエットの賭けをした。「3カ月でいまの体重から6%痩せることを互いに賭けよう」と持ちかけると、「いいね!」と乗ってきた。私は67キログラムだったので、マイナス4キログラムの63キログラム、彼は80キログラムだったのでマイナス5キログラムを目標とした。

「今日から3カ月後の○月○日に△△で会って体重測定しよう。賭け金は3万円でどうだ?」

すると友人は、「エーッ!」と言う。

彼は支払うリスクを考えて、3万円に反応しているのである。ではなぜ賭けに乗ったのか。達成する意思があるからだ。であれば、いくら賭けようが関係ないではないか。ダイエットするかどうかは自分の意思しか関係ないのだから、本来やれないはずはない。友人との大きな金銭のやりとりは気が重い。そんな状況にならないよう、お互い何としても目標を達成しよう。友人同士の賭けとはそういうものだ。渋る彼に「じゃあ5000円ならやるの?」と聞くと、「いや、3万円でやるよ」と言い、賭けが始まった。

期日まで残り2週間に迫ったある日、中間報告のメールを彼に送った。返信を見ると、お互い順調のようだ。「じゃあ、もう2週間頑張ろうな」と返し、そして期日がきた。

「今日は7時に待ち合わせましょう」とメールを送ると、彼からきた返事は、

「いま採用のシーズンで、急に忙しくなってしまって行けなくなった。ついては最終週ではどう? 僕はこの日とこの日が空いています」

というものだったのである。

何と意志が弱いことかと思ったが、それ以上に私はふたつのことにがっかりした。ひとつは、仕事を理由に約束を破るのは最悪だ。3カ月も前から予定は決まっている。その日になって急に緊急の仕事が発生するなど考えられない。万一そうなら、あまりに段取りが悪すぎる。友人から3万円をとる気など、はじめから毛頭ない。「お互い痩せられたからいいじゃない」ですむ話である。それを、直前で仕事を理由に、約束を反故にするような男だったとは、本当にがっかりしてしまった。

もうひとつがっかりしたのは、私の予定は簡単に変更できると友人が思っていたことである。

「9時でも10時でもいいから待っているよ」と彼に返信しようと思ったが、可哀相なのでやめた。「3カ月も前から決めていた約束だ。俺は予定を空けておいたのに、おまえは何だ。俺のスケジュールはこの先全部いっぱいだ。おまえの都合に合わせるほど俺はヒマじゃない」というメールを書いて破棄し、「そっか、忙しいんだ。残念だね。俺もこの先忙しいんだ。じゃあまた年内にやろうか」というメールを書き、この件は自分のなかで終わりにした。

「悪口メール」は送らない。これは小学生のとき、マーク・トウェインに教わったことだ。彼は、読者からの手紙に1通ずつ返事を書いていた。悪口が書かれた手紙にはきっちり反論の返事を出していたが、トラブルはひとつもなかった。なぜなら彼の奥さんが手紙を投函する前にすべてチェックし、相手が読んで気分が悪くなりそうなものは黙って捨てていたのである。

悪口を相手にぶつけるのは無意味な行為だ。ほとんどの悪口は、書いた瞬間に満足している。だから私はメールではなくメモ帳を開いて、「テメー、コノー」と悪口を書く。それをすべて破棄してからメールを開き、「では、また今度に」、あるいは「ちょっとお会いして話しましょうか」と書いて送る。相手に伝えるべきは、次に何をするかということだけだ。出さない手紙を書くのは、前に進むために、いったん自分の気持ちの整理をつけるためである。できる人はサラッとやり過ごせるのだろうが、私は未熟なので湧き上がった感情を無視できない。そんな私には、この方法はなかなか実践的なソリューションなのである。

仕事は「初動」と「プロセス」と「結果」の3段階に分けられるが、できる人は、どの段階においても連絡義務を怠らない。回答に時間がかかる場合は、「いついつまでに返事します」と連絡する。仕事は共同作業という意識を持っているからこそ、相手に不安を与えない仕事運びを心掛ける。

この意識があるかないかで、クレームやトラブルの発生件数に大きな差が出る。たとえ問題が生じたとしても、ただちに上司やクレーム相手とコミュニケーションをとり問題が解決するまで進捗報告を欠かさない。これに対し、残念なビジネスマンは、上司に発覚する前に自分で何とか解決しようとして問題を大きくしてしまう。クレーム相手への連絡は、対応策が確定してからでよいと思っている。結果は推して知るべしだ。お詫びの言葉ですんだはずのクレームが、会社全体の問題にまで発展する多くの原因は、こうした残念なビジネスマンによる初動の遅れ、後手に回る対応によるものだ。

よいプロジェクトは、よくできた料理本に似ている。料理本のレシピには、仕上がり写真、材料と分量、調理時間が必ず明記されている。同様に、よいプロジェクトには、明確なゴールイメージ、スケジュール、担当する人数と役割、必要な工程、進め方、納期が決まっており、メンバー全員が意識を共有している。

「お湯を適量入れていただいて、適切な材料を切って投入し、様々なスパイスを少々混ぜ合わせ、頃合いを見計らってお召し上がりください」。そんな漠然としたレシピで、おいしい料理が出来上がることはまずない。しかしビジネスとなると、曖昧な指示を漠然と受けて仕事が進んでいく場合が少なくないのである。そのような仕事の進め方で、よい成果が出たら奇跡だ。仕事を頼んだ上司の思惑とはまるでかけ離れた代物が出来上がってくる、ということはよくある。

仕事を頼まれたときに、「わかりました」と言って受けるのは不十分である。「期限はいつですか?」「目標数はいくつですか?」「アウトプットのイメージは?」と、仕事にとりかかる前に、発注者とゴール地点を確認し、合意しておくべきである。

料理なら、おいしいかおいしくないか、結果は明確だ。順序や材料や調理時間を間違えると、焦げ付いたり、生煮えだったり、まずい物が出来上がるが、仕事も同じ。焦げた仕事とならないよう、最初に仕上がりのイメージを確認し、段取りと、それぞれの作業にどのくらい時間がかかるのかを理解しておく必要がある。レシピ通りにつくって料理が失敗することはない。まずレシピ通りにつくる。そこから調味料を足したり、材料を変えたりして、オリジナリティをプラスしていく。

頭のよい人は料理がうまいと言われる通り、おいしい料理とは戦略思考の賜なのである。

日本の労働分配率は世界一高い。経営効率を考えれば、これ以上従業員を増やしたり、給料を上げたりすることはできない。IT化が進み、人間の仕事と給料を機械やコンピュータが奪っていく。上司は部下に向かい、「おまえにしかできない仕事をしろ」「自分の個性を活かせ」と言う。だが一方で、誰が辞めても困らないように仕組みをつくり、標準化したい。この「おまえにしかできない仕事」と「誰が辞めても困らない仕組み」が、スパイラル的に進化していくのが理想だ。裏を返せば、企業で生き残っていくためには生産性の高い人間になると同時に、属人的にならないようにすることを真剣に考えていなければならない。

あなたに特別な能力があっても慢心はできない。自分が、ここに挙げたような残念な人ではないか、ぜひ一度、足元を見つめ直していただきたい。

(ビジネスコンサルタント 山崎将志 構成=野崎稚恵 撮影=芳地博之)