『スリジエセンター1991』

絶対的なトップが、外部から優秀な人材を招聘し、その人物に組織の抜本的改革を委ねようとしたら、内部にいる人物はどう反応するのか? 先行きの見えない時代、そういう企業や官庁は十分ありうるだろう。『チーム・バチスタの栄光』などで知られるメディカル・エンターテインメントの第一人者、海堂尊氏の新作『スリジエセンター1991』(講談社刊)は、このテーマに切り込んだものだ。

外来者を排除するだけか、それとも病院長にも反旗?

『スリジエセンター1991』は、「チーム・バチスタ」シリーズの大学病院の過去を舞台にしている。病院長である教授は、外部から"神の手"を持つ天才外科医を招く。そして病院改革のため、新たな心臓外科センターを創設して、彼をそのトップに据える。

従来からの心臓外科グループはその決定をよく思わず、次期を狙う「助教授」にとって外来者は"目の上のたんこぶ"の存在だ。

急進的な改革を危惧する者たちは多いのだが、その理由が、自分の立場を守るためか、病院のためにならないと思ってかで、抵抗の度合いが違ってくる。

さらに、外来者を排除するだけなのか、それとも病院長に反旗を翻すのか。後者なら、相応の返り血を浴びるだろう。果たして抵抗運動に大儀名分はあるのか?

このあたりの病院内での対立の過程や陰謀を描く筆致は、大学病院勤務の経験もある海堂氏ならではのリアリティに満ちている。読む者をワクワクさせ、圧倒的な迫力で迫ってくる。

企業やその他の組織に所属する人たちの共感を呼ぶだろう作品で、山崎豊子氏の『白い巨搭』をも彷彿させる傑作の誕生だ。