コンサルタントとして官公庁の業務効率化・高度化を支援する

WOMAN’S CAREER Vol.96

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 横山浩実さん

【活躍する女性社員】子育てとの両立のため転職。現在は官公庁担当のコンサルタントとして活躍する横山さん


■育児に責任を持ちつつ、一人前の社会人としても働いていきたい

シンクタンク、外資系ITコンサルティング会社を経て2011年10月よりデロイト トーマツ コンサルティングで働いている横山さん。大学院修了以来携わってきたのは官公庁向けのコンサルティング。現在は主に官公庁の外郭団体のBPO(Business Process Outsourcing)の業務設計、導入支援案件のプロジェクトマネジャーを担当している。

BPOとは、組織の内部で行っていた業務を遂行環境も含めて一括して外部に委託すること。事業仕分けなどにより組織のスリム化が求められていることを受け、ニーズが高まっている分野だ。横山さんはクライアントの業務とその手順を可視化し、外部に委託するための新たな業務フローの設計や、受入・検収業務やそのシステムの設計、委託先の選定支援、委託先へのスムーズな業務移行支援などを行う案件に携わり、実行管理者として案件の進行への責任を負っている。
「BPOに限らず、案件を進める上で心がけているのは、できる限り早いタイミングで対象業務についてお客さまと対等に会話できるようになること。そのために、案件開始時にお客さまの業務マニュアルやシステムの設計書を読み込むことはもちろん、他業界の動向や類似事例を調べた上で、お客さまの独自性などわからないことは恥ずかしがらずに聞いて幅広く知識を得るようにしています。その上で、お客さまへのヒアリングを重ねて縦割り組織の中で共有できていなかったことや暗黙知を可視化し、ボトルネックとなっている事象や無駄が生じている部分を最適化して効率的・効果的な方法を提案するのです。そして、お客さまと議論を重ねて皆が納得できる方法で合意できたとき、成果を出せたとうれしく思います。必ずしも夢のような技術を導入しなくても、物事は変えられる。それをお客さまが理解してくださることが、コンサルタントが支援する価値なのだと思います」

コンサルティングスキルの土台を築いたのは新卒で入社したシンクタンクにて。官公庁の政策立案や業務改善、IT導入などを支援するプロジェクトに携わり、チームリーダーやプロジェクトマネジャーからのアドバイスを受けながら、クライアントに起こっている事象を俯瞰(ふかん)し、課題を類型化・構造化するスキルを磨いてきた。

「ずっといるつもりだった」という横山さんに転機が訪れたのは入社9年目ごろ。育児休業から復帰し、自身が望む働き方と会社の制度・環境が合わなくなってしまったのだ。
「勤務制度が事業所内での勤務を前提としたものだったのです。e-work(※)の環境も整備されていなかったため、復帰後の子どもの体調に応じて突発的に休まざるを得ない状況では、働ける時間の制約が大きくなってしまいました。そこで、この状況に応じた目標や役割を設定してほしいと要望したのですが対応する制度がなく、社内の公式ルールとしての目標や役割は出産前と変わらないまま、実際の業務量や責任を軽減して評価を受けるという現場裁量での措置がとられることに。会社の公式的な評価の枠組みの中での位置づけは不明瞭でしたし、与えられる目標に対する責任にギャップがある上、実際は周囲の人との公平性担保という観点から業務量などの調整が難しく、周囲の人々は子どものいないころの私のイメージを引きずったまま仕事を依頼してくる状況だったため、働きやすさは改善されませんでした。また、将来のキャリアパスも見えなくなってしまったため、ダイバーシティが進んでいて、制約がある人間でも働きやすい環境や、実力・働き方に見合った評価を得られる制度が整っている会社に転職することを決めました」
※ITを利用して自宅など職場以外から社内環境にアクセスする働き方

転職したのは社会人10年目。外資系ITコンサルティング会社にシニアコンサルタントとして入社し、官公庁向けの政策立案や業務改善、IT導入などを支援するプロジェクトのプロジェクトマネジャーを主に担当した。その後、グループ内の企業統合により合併先のITビジネス部門の営業戦略立案などにも携わることに。クライアントに加えて社内経営層などとのコミュニケーションや、業務遂行のアプローチや実施方策の検討・具体化、メンバーが作成する資料のレビュー・育成など、プロジェクト全体を管理する技術を磨いた4年間だったが、ITは一つの手段として捉えてクライアントの課題を解決する業務系コンサルティングに専念したいという思いから、再び転職を決意。

こうして、社会人14年目にデロイト トーマツ コンサルティングに入社。マネジャーとしてBPO案件の実行管理者として働くほか、トーマツグループがグループ全体で集結することによりクライアントにどのような価値を提供できるかを追求するべく、グループ企業の官公庁向け案件の提案・実行支援なども行っている。
「当社にとって官公庁向けのビジネスは近年力を入れ始めた領域ですので、他社がまだ取り組んでいない新規領域に飛び込んだり、すでに取り組んでいる領域に食い込んだりしていかなければならない苦労はあります。また、ITを導入する案件の場合、前職のようにIT企業をグループ内に持っているわけではないので、当社が発揮できる価値を考える大変さもありますが、特定の企業に誘導しないのが当社の特徴。各社の特徴をふまえて、お客さまの課題解決にとって最適なものを提案することができるので、やりたかった『お客さまのためになること』ができていると感じています」

今後の課題と捉えているのは、マネジメントスキルの向上だという。
「いかにメンバーが効率的に作業して高品質な成果物を作成できるか、かつ当人のスキルアップにつながる形で作業指示を出せるかが課題です。今でも『最終的には自分が引き取ってなんとかすればいいや』と思ってしまうところを上司に注意されますし、メンバーの育成技術はまだまだ発展途上だと思っています。メンバーが伸びなければ組織も伸びていきませんので、メンバーのスキルを理解した上での作業指示や、作業を管理するタイミング、メンバーから意見を出しやすくするための接し方などは大幅な改善を図る必要があると意識しています」

育休を経て、子育てに責任を持ちつつも社会に出て働くことが自分の楽しみだと感じ、一人前の社会人として働く覚悟を決めたという横山さん。当初は難しさを感じた仕事と子育てとの両立も、子どもの成長とともに物理的な制約が緩和し、今は自分なりの基準を決めて取り組んでいる。
「私自身のスキル不足や時間不足でできないことは割り切って夫や親、外部に頼り、どの部分で子育てにかかわることがベストかを娘の成長や自分、夫の状況に応じて見極めるようにしています。今決めているのは、週2回のお迎えと、定時後も働く日であっても娘が寝るまでには帰宅すること、土日は家族の予定を最優先することの3つ。子育てを人より早く帰る理由にしないと自分の中で決めているので、“仕事が終わったから帰る”という状況にできるよう、「ほかの人の2倍の速さで働く」をモットーにして他者に対しても宣言し、自分にプレッシャーをかけています。今はかなり親に頼っていますが、将来は歳を重ねて頼れなくなることも出てくるでしょうし、子育ての主体は夫婦にありますので、どのような子育てをするかは常に夫婦で話し合っています」