心理カウンセラー 
塚越友子氏

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心理カウンセラー 塚越友子(つかこし・ともこ)
東京女子大学大学院社会学修士号取得。報道や広報の仕事を経て、銀座で人気ナンバーワンのホステスに。その後、心理カウンセラーとして独立し、東京中央カウンセリングを設立。

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上司が「無視」という態度に至るまでに、何らかの経緯があると思うんですけど、真っ先にその人が上司の存在を軽んじていた、ということが考えられます。

男性は日々覇権争いをしています。相手を軽く見ていると、上の立場の人間(上司)には「おまえは俺に従わなくてはいけない立場なのに、それができなかったんだな。それなら徹底的に排除してやる」という考えが働きます。無視という行為は手っ取り早くできますし、相手の排除と権力の誇示が同時にできるので、もってこいの手段なんです。メンタル的なダメージも大きいですし。

相手を怒ったり、罵倒する分には、まだその存在を認めている証拠。でも無視というのは、相手の存在自体を否定すること。人間にとって一番こたえます。

では、無視されるきっかけになった出来事が何かあったのかというと、実はそうでもありません。例えば、上司が「おまえはミスをした」「何でできないんだ!」と怒っているとします。おそらく、個々の内容を改善したところで、上司の機嫌はよくならないはずです。きっと、次から次へとダメ出しの繰り返しになるでしょう。

だって、上司が言いたいのはただ一つ。「おまえは俺が一番偉いということをわかっているか?」ということだけですから。つまり、「あなたが一番偉い」ということを態度や言葉で示していかない限り、上司はいつまでも満たされないままだからなのです。

対策としては、日頃から上司を立てること。ミスをして上司に怒られたときに、「部長のお陰で、先方に納得していただくことができたんですよね」と立てるような言葉を言いつつ、「申し訳ございませんでした。以後気をつけます」と反省の態度を示します。

上の立場の人間は、自分が認められているかどうか、常に不安をかかえています。一方で、自分が偉いことを自負していないとダメ。弱い犬が吠える、みたいなところがあるんです。

とにかく「私はあなたが素晴らしいことはよくわかっています。尊敬しています」というメッセージをたくさん送っておく。そうしておけば、無視されるところまではいかないはずです。

■あまり悩むのなら環境の切り替えも

ただ、やりすぎると逆に「俺をバカにしているのか?」と思われかねません。そこで、わざとらしく聞こえないようにするには、怒られたときに言うのが効果的です。

下の立場の人が、上司を褒めるのは失礼に当たりますし、相手を立てるにしても、褒めるよりはねぎらう気持ちのほうがいいですね。そこに「お陰さまで助かりました。ありがとうございます」というように感謝もプラスしましょう。

この「ねぎらい+感謝」のセットは凄く効きます。しかも相手の年齢が上がれば上がるほど喜ばれるはずです。私も銀座でホステスをしていたとき、経営者の方が「俺がどんなに苦労しているか、社員はわからないんだよな」とよくおっしゃっていました。部下が「その苦労、よくわかります」って言ったら絶対に喜びます。

言ってしまえば、仕事で大した結果を出していなくても、これさえできていれば大丈夫なんです。

また、無視される前段階として、少しずつコミュニケーション量が減ってくるはずです。「最近上司と話をしていないな」と思ったら、とにかく話をすること。それと、同僚や周囲の人ともコミュニケーションを密にして、日頃から味方をつくっておきましょう。

そもそも「無視」という行為はパワハラです。男性はとかく頑固な性格なので、無視までいってしまったら、そう簡単には元には戻りません。どうしても無視が続くようでしたら、人事部などのしかるべきところに行くしかありません。もしくは見切りをつけて別の場所に行くのも選択肢の一つではないでしょうか。

無視された人は「自分に非があるのでは?」と、なかなか決断できないもの。でも、そこまで悩むなら、いっそ気持ちを切り替えて環境を変え、同じことが起きないようにやり直すほうが早いです。落ち込むところまで落ち込んでしまうと、「会社に行くのが嫌」「人間関係が辛い」と悪化する一方。うつ病になってしまっては元も子もありません。

(心理カウンセラー 塚越友子 構成=吉川明子 撮影=若杉憲司)