「本=想像力」 好きな本が同じだと深く繋がれる

 高校生の頃から、ファッション誌でモデルとして活躍し、現在は俳優として数々の映画やドラマ、舞台に出演する斎藤工さん。俳優業のほかにも、シンガーとして活動するほか、映画専門雑誌でコラムを執筆するなど多方面でその才能を発揮されていますが、普段はどのようにして本を選ぶのでしょうか。

「地元が下北沢なんですが、そこにある遊べる本屋「ヴィレッジヴァンガード」という店をすごく信じていまして。最近は、そこで注目されているものを素直に信じて手にとっています。新作もそうですが旧作の作品でまだ読んでいないもの......例えば澁澤龍彥さんや中原中也の作品とか、あそこに行って改めて読みなおそうとか思いました。ちょっとファッションよりに文学を位置づけて紹介してくれているので手に取りやすいというか、学校の図書室で見た中原中也とはまた違った匂いが気軽に手に取らせてくれる感じがしますね」

 幼少期はどのような読書体験を?


「やっぱり両親の本棚は自分の人生に少なからず影響がありますね。うちの本棚はちょっと偏っていたんです。例えば、藤原新也さんの写真集が大量にあったり、母親が好きな、つげ義春の本『貧困旅行記』とか。うちの本棚には当たり前にあるけど、よその家の本棚ではあまり見かけない作品が多かったですね。今思えば、多分その本棚とヴィレッジヴァンガードは似ているものがあったんじゃないかと。大人になってから、自分が気になっている本が帰ると、本棚にあったりして「やっぱり血なのかな」とも思ったりしますね。数年前の朝ドラ『ゲゲゲの女房』で、つげ義春さんを演じる機会があって、「どうやって演じよう?」と思った時に、両親の本棚を眺めていたら、そこにすべての答えがあったんです。出会うべくして出会ったのかな、とその時感じましたね」

 本と幼少期の斎藤さんには、こんな思い出も。

「両親が読書家だったので、幼い頃から本を読み聞かせてくれました。アガサ・クリスティーや江戸川乱歩を好んで読んでいたので、毎晩それを母が朗読してくれて、その時間が大好きでした。両親も本が好きだから朗読していると感情移入をして、だんだんとボルテージがあがってきたりするんですけど、読み聞かせは、段落ごとや1話ごとに終えていたんですね。だから、「どうなったんだろう?」と、朗読が終わって電気が消されたら今度は頭の中で
その物語の続きだったり、おさらいだったり、想像の時間になったんです。それがそのまま夢の中に出てきたりもしました。そうやって睡眠と現実との時間を読書朗読で埋めてもらっていました。そんな橋渡しをしてくれたおかげで僕は本当に妄想力が凄い。妄想で生きています(笑)。よく「この人は、こんな人なんじゃないか?」と、キャラクターを作っていくように、自分の中で勝手に他人を"展開させていく"というのは、そこで培ったものなのかもしれません」

 思春期に影響を受けた本はありますか?

「昔、ネイティブアメリカンの生活や文化に興味を持って、高校時代は自分なりにネイティブアメリカンの研究をしていました。例えばローリングサンダーというメディスンマンと実際に生活した体験を綴った本。儀式や歴史的背景など、ローリングサンダーという実在する人の言葉が噛み砕いて書いてあります。文化圏も全く違う遠い話だけど本質的なことは、いまの自分、その時の自分、そして未来の自分につながっていく、とても大事なメッセージが詰まっていると勝手に解釈してのめりこんだんです。実はモデル時代の先輩の井浦新さんもその本が好きで、最初何も知らずにプレゼントしたら、たまたまその本を失くしてしまって、常に置いていきたい本だったらしく凄く喜んでくれたんです。結果的にその1冊の本をきっかけに、より深く話せるようになりました。好きなマンガが共通しているより好きな本、感銘を受けた本が同じ方が深く繋がれる気がするんです。「本=想像力」なので、共通点としてもっとディープだと思うんです。だから、僕は本をプレゼントすることが多いですね」

 次回は、斎藤工さんの仕事と本の関係についてお聞きします。お楽しみに!

《プロフィール》
斎藤工(さいとうたくみ)
1981年8月22日生まれ。東京都出身。
10代からモデルとしてファッション誌やショーで活躍。高校卒業後に映画プロデューサーからスカウトされ、俳優デビュー。
現在は東京セレソンデラックスの最終公演「笑う巨塔」に出演中。2013年にはNHK大河ドラマ『八重の桜』に出演。




『「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー』
 著者:高橋 秀実
 出版社:新潮社
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