マツダ会長兼社長兼CEO 
山内 孝氏

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マツダ会長兼社長兼CEO 
山内 孝 
1945年生まれ。慶應義塾大学商学部卒。67年東洋工業(現マツダ)入社。96年取締役。2008年代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)。10年より現職。

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──「スカイアクティブ」などの環境技術は新興国でも求められるのか。 

山内 先進国、新興国を問わず、必要です。自動車は2020年になっても、9割は内燃機関が搭載される。電気だけで走るのは1割で、HVもPHVもエンジンを使うのです。しかし、内燃機関は発生するエネルギーの7割かそれ以上を、熱として捨ててしまっている。燃焼の最適化と車体の軽量化など、改善の余地は大きい。

1960年代、通産省(当時)の自動車業界再編構想に反発して自主独立を保つためにマツダはロータリーエンジンを開発した。スカイアクティブも同じです。反骨と言ったら怒られるでしょうが、世の中がEVやHVに動くなら、我々は独自にできることがあるはず。そう考えるのがマツダのDNAです。だからGMやクライスラーが潰れる時代でも、この中規模の会社が何とか頑張ってきた。

──市場の拡大に対し、マツダはどう戦うのか。

山内 1億台になるのは20年ころ。そのとき、半分以上は新興国が占めるでしょう。マツダはリーマンショック直後の08年11月に、米フォード・モーターの傘下から離れ独立しました。当時、マツダの販売構成は新興国は3割で、7割が先進国でした。いまでも、新興国は4割弱です。これを16年に45%にはしていく計画です。生産台数は現在約130万台(11年)ですが、16年には170万台とする。国内生産は、16年も現在と同じ85万台を維持します。

新興国では、これまで10年ほど取り組んできた。学んだのは、安売りをせずにブランドをつくる大切さです。マツダは新興国で、安い車で量を追う戦略はとりません。

──スカイアクティブは、ブランド構築に有効か。

山内 他社にない先進技術なので、ブランドになります。マツダは世界シェア2%の会社。頑張って将来200万台売っても、1億台市場の2%です。世の中の10%に向けて「高くとも欲しい車」をつくり、結果として2%をとる。更地から始めている新興国では、ブランドづくりが当たってきています。赤い「マツダ6」は、中国沿岸部で人気です。新興国で現地生産が増えれば、いずれ中間所得層にも展開していきます。

──メキシコ工場を建設中だが、メキシコからブラジル向けの輸出制限枠が設定された。

山内 メキシコで生産した完成車を、ブラジルで売るという当初の計画は白紙にします。メキシコは100万台の市場ですが、北米、中南米、欧州を合わせれば、約4000万台の規模になる。欧州へも展開でき、ブラジルにしてもノックダウン生産で進出する方法はあります。メキシコから日本への逆輸入も視野に入れます。

──フィアットなど提携については。

山内 フィアットとのスポーツカーの協業はぜひ成功させたい。アライアンスの話はたくさんあります。ただし、資本提携を最初から狙っているわけではない。

■リストラは二度とやらない

──人事政策で変化はあるか。

山内 私は10年間、人事担当でした。フォード時代には、米国的人事システムをすべて取り入れた。01年には大リストラを実施しましたが、マツダはこれから先リストラを二度としません。最終的には、人が決め手になると思います。海外の工場や販社で働く外国人を含め、「マツダで働きたい」と考える人を大切にする会社であり続けたい。

2012年に入り、事務・販売系社員3000人のうちの1000人を、新興国部門に配置することを決めたところ、どんどんと手が挙がっています。中国、メキシコ、ASEAN、ロシアで働きます。

──希望者は若手が多いのか。

山内 年齢や性別は関係ありません。特徴的なのは国内の営業スタッフが多い点。本来は英語が苦手な人たちですが、言語はどうやら関係ない。国内で店長やディーラー経営の経験をもっているので、新興国ですぐに販売店管理ができる。新興国に赴任した彼らは喜々として仕事をしています。

技術者は、経営感覚をもち全体を見渡せる人が求められていく。ただし、マツダでは昔ながらの豪傑が新技術を生んでいくでしょうけど。

※すべて雑誌掲載当時

(永井 隆=構成 的野弘路=撮影)