『訣別 ゴールドマン・サックス』

もし、あなたの年収がいま4000万円あったとして、数年後には年収1億もほぼ間違いなし、場合によっては年収数億、数十億も夢ではないとしたら、その仕事を辞めることなどできるだろうか? この本は、アメリカ金融界の名門投資銀行ゴールドマン・サックス、つまり世界トップクラスの投資銀行で実際に起こった話を描いている。

グレッグ・スミス著『訣別 ゴールドマン・サックス』(講談社刊)では、「多額の年収を捨てて会社を去る」事態がなぜ起きたのかについて、「すべて」を明るみに出し、告発する形で語られている。

「自分たちの高給を守ることが最大課題」なのか

南アフリカ共和国出身の優秀な学生だったグレッグ・スミスは、全額給付の奨学生としてスタンフォード大学に留学する。10週間に及ぶ夏期研修の激しい生存競争を勝ち抜いた彼は、世界を代表する投資銀行ゴールドマン・サックスの一員となった。

それから12年。順調に昇進してヴァイス・プレジデントの地位を彼は得る。しかしもう一階級昇進する一歩手前で、彼はとてつもない高給と自らの将来を捨てて、ゴールドマン・サックスを辞める決意をする。

何が彼をそうさせたのか? かつてゴールドマン・サックスは「顧客の利益第一」を標榜してきた。しかし、筆者によると、リーマンショックによる金融危機や、欧州政府債務危機などを経るなかで、ゴールドマン・サックスは変貌する。顧客が理解できないような複雑極まりない金融商品を売りつけ、顧客を「他人に操られる馬鹿で愚かな奴」と蔑み、自分たちの高給を守ることが最大課題である「金儲け第一主義の会社へと堕落してしまった」という。

金融界に希望を抱いて門を叩き、愛してやまなかった会社が劣化していく姿に幻滅し、憤りを感じた彼は、すべてを捨てる決意を固めた。本書は、著者が見聞きした金融界の内情を余すことなく暴いている。

2012年10月23日、発売された。