女性が活躍するイタリアのオフィス

海外駐在員ライフ Vol.169

From Italy

取引先との交渉を含んだミーティングが始まると、和やかなムードも一変?


■残業もいとわない優秀な女性営業スタッフたち

はじめまして。Kenjiです。イタリアのミラノにある日系企業の現地オフィスで、営業活動に携わっています。

オフィスでは、私を除く全員がイタリア人。うち約7割は女性です。ヨーロッパやアジアのローカルスタッフとのやりとりもあります。取引先や顧客は、イタリアをはじめとするヨーロッパ、アジアの企業です。

仕事で使う言語は、ほとんどが英語。イタリア語は、日常のあいさつか、あるいはイタリア語で送られてくる文書やメールの読解で使う程度です。

皆さんには、「イタリア人は遊び好きでいい加減」という先入観があるかもしれませんが、それは彼らの一面に過ぎません。こと仕事に関して、彼らは驚くほど集中しています。ダラダラと遅くまで仕事したりせず、時間内に仕事を終えるようにと効率的に取り組むその姿勢には、感心するばかりです。

また、女性が優秀なのも特徴的。真面目で非常によく働くので、当社でも営業スタッフの半数は女性が占めているほどです。必要があれば残業もいとわずに仕事をしており、細かい仕事もきっちり仕上げる傾向がありますね。支払いが遅れそうな顧客がいれば事前に報告してくれたりと、会社のルールをよく理解して、まずは自分で考え、自主的に動いてくれるので、安心して業務を任せられます。また、チャーミングな笑顔で顧客の厚い信頼を得ているところも、女性ならではの武器なのかもしれません。

その一方で、私たち日本人から見ると、彼らの仕事ぶりが、やや「おおざっぱ」「拙速(せっそく)」に見えたり、「詰めが甘い」と感じることもしばしば。例えば、顧客に提出する見積書に誤りがあったり、契約書で大事な条件が抜けていたりすることもあるので、こちらでもチェックが欠かせません。こうした点だけは、何度か注意してもあまりあらたまることがなく、どうやら「間違っても後で直せばいい」「8割方できていればOK」という認識でいるようです。資料を作成する際も、私たちだったら、表に罫線を引いたり、グラフに題をつけたりして、見やすくする工夫をするところを、最低限必要な要素だけのそっけない体裁のまま提出してきたりします。このへんは、日本とイタリアの文化やメンタリティの違いなのかもしれません。


■和やかな雰囲気が会議開始とともに一変

現地スタッフのマネジメントに関しては、イタリアも日本も、相手が人間であるという点で、基本は変わらないと思っています。ただ、日本人の駐在員は、一定の期間が過ぎると交代してしまうので、上司である私を頼り過ぎることのないように、そして彼ら現地スタッフの中で解決していける範囲が拡大していくようにと、常に気をつけています。例えば、トラブル時に指示を求められたら、対応策や代替案をまずは自分で考えさせたり、これまで駐在員が担当していた仕事を任せてみたり。スタッフも、新しい仕事を任せられるといっそう意欲が湧くようで、同僚に「自分は営業だけど、今回こんな業務もやっているんだ」と誇らしげに語っているのを聞いたことがあります。

ただし、前述のように、イタリア人と日本人の間には文化やメンタリティの違いもあるため、メールや電話のやり取りだけでは彼ら現地スタッフと日本の同僚・取引先との間で誤解が生じたり、話が前に進まなくなってしまうこともあります。こうしたときは、私が間に入って“通訳”してあげることもしばしば。「イタリアではこうなんだよ」「日本ではこうなんだよ」と補足することで、双方の理解が深まり、誤解が解けるのです。

顧客や取引先とのやりとりで非常に驚いたのは、ビジネスがしばしばとても硬直的になるときがあること。例えば、取引先との非常に重要な案件についての交渉を含んだミーティングのときなど、直前まで笑顔で握手を交わして、和やかに雑談していたにもかかわらず、席に座ってミーティングを始めた途端、表情が一変し、「この件に関して、我々は一歩も譲歩できない」と一方的に主張したりします。早口で言いたいことをひたすらしゃべり続け、感情的になりすぎてビジネスのロジックが通じなくなることもしばしば。しかし、ミーティングが終わると、一転してまた元の和やかなムードに戻るのです。赴任当初、この“切り替え”には大いに戸惑ったものです。

次回は、イタリアの人々やその暮らしについてお話しします。