日産自動車会長兼CEO 
カルロス・ゴーン氏

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日産自動車会長兼CEO 
カルロス・ゴーン 
1954年、ブラジル生まれ。78年、仏・国立高等鉱業学校卒業後、ミシュラン入社。ブラジルミシュラン社長、北米ミシュランの会長、社長、CEOなどを経て96年ルノー入社。99年日産COO、2000年より社長に就任。

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──世界の自動車市場が拡大していくなか、EVはどんな位置づけに?

ゴーン 市場の急拡大に対し、いままでのように(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの)内燃機関に完全に依存してしまうのは、地球環境の面から問題になります。ただし、(走行中は排出物ゼロのEVなど)ゼロエミッション車は内燃機関に取って代わることはできません。競合するのではなく、補完する関係です。

──環境技術を持つことは、世界で勝つための材料になるのか。

ゴーン 市場拡大を前に、日産は2つの責務を負います。1つは、世界市場でプレゼンス(存在感)を持つこと。もはや、「いやいや、ロシアには参入しません」とは言えません。プレゼンスを持ち、各国の自動車産業を発展させる責務がある。

もう1つの責務は、環境に関する技術をもち、実用化すること。低燃費なガソリンエンジン、クリーンディーゼル、HV、PHV、EV、そして将来のFCVと、日産はすべての技術を持っている。いずれにおいても世界トップクラスを目指し、(環境規制など)あらゆる要求に応えます。そのなかでゼロエミッション車は、極めて重要な要素です。新興国、途上国にも、EVを販売していきます。トヨタとBMWが提携しFCVを強化していくようですが、FCVは値段的にももう少し先でしょう。

■中国でシェア10%、トップスリーになる

──中国で、日産は遅れて参入したのに上位だ。今後の展開は?

ゴーン いま、中国では4位メーカー(2011年でシェアは約6%)ですが、10%以上のシェアを確保して(VW、GMに次ぐ)トップスリーになるのが目標です。簡単ではないが、これまでの実績に加え、これからの(大連工場建設など)投資や商品計画によって、日産は成し遂げます。ルノーは将来中国で独自展開する計画です。

──中国でのEVに関しては、どう展開するのか。

ゴーン 中国政府はEVとPHVを合わせて、2020年までに累計500万台普及させる計画を発表しました。技術を持つ日産としては、政策に則って先んじてEVを展開していきます。合弁会社の東風汽車でEVを生産し、「ヴェヌーシア」ブランドで投入していく計画です。中国に限らず、お客様にEVを理解してもらい売っていくためには、これからはマーケティングが大切。さらに、新技術の導入段階なだけに、新しい技術を自分たちがコントロールしていけることが、特に重要になります。

──EVはガソリン車と比べ、発進や加速など走行性能に優れている。スポーツカーは出さないのか。

ゴーン まだです。需要が集中するファミリータイプの街乗り車を積極的に出していく。小型乗用車も投入します。ただし、長期的にはEVはラインアップを広げます。

──日産は電池メーカーでもある。日産が主導し、電池を標準化していく考えはあるのか。

ゴーン 日産はEVを成功させるために、電池メーカーになったのです。私の最大の願いは、EV用電池メーカーが増え、競争力を上げてもらうこと。そうすれば、日産はEV事業に集中できますから。また、電池の標準化は考えていません。最終ユーザーにメリットがあるかどうかで、私は判断します。電池はこれからも、高容量化、軽量化、コスト削減などで、進化し続けますし。

──ダットサンの展開は?

ゴーン 低価格車のブランドです。日産ブランドを傷つけないために、立ち上げました。低価格車は世界市場の3割から4割を占め、ここに参入を決めたのです。

──グローバル化は待ったなしだが、これから日本人はどうあるべきか。

ゴーン グローバルに活躍するためには、出身地や家族のルーツといった強固なアイデンティティーが人間の基盤となります。それがなければ海外になど怖くて出ていけません。若い日本人は、アイデンティティーを持ち、ネットを通して世界をよく知っている。特に日産の若い社員たちは、日産が日本企業でありながら、世界市場で大きな役割を果たそうとしていることを、十分理解していると私は信じています。大きな役割とは、新興国への産業貢献であり、世界的な脱石油への挑戦です。

※すべて雑誌掲載当時

(永井 隆=構成 的野弘路=撮影)