もしも科学シリーズ(13)もしも太陽が燃え尽きたら


太陽の寿命は残り50億年。終わりを迎えるとき何が起きるのだろうか?



巨大化する太陽に地球は燃え尽きるという通説に反し、永遠の冬を迎えるかも知れない。飲み込まれて蒸発する水星・金星がうらやましくなるような、過酷な運命をたどりそうだ。



■暴走する核融合



太陽は半径およそ70万km、質量は地球の109倍、28倍の重力がある巨大な恒星だ。星といってもガスの集まりで、水素(約75%)とヘリウム(25%)がほとんどを占める。高密度に圧縮された核(太陽核)を中心に持つため、その重力によって拡散せず、きれいな球体を維持している。



太陽が1秒間に放つエネルギーは、TNT火薬千億トン分にも相当する。このエネルギーは、水素原子4個から1つのヘリウム原子を作り出す核融合反応によって作り出される。太陽自身を構成している水素を燃料にするのだから、文字通り身を削りながら地球に糧を与えることになる。食品をモチーフとした正義のヒーローも自分を分け与えるシーンがあるが、規模と頻度を考えれば太陽こそが賞賛されるべきである。



太陽核には2,400億気圧と、1,600万度の高温が加わり、収縮と膨張の微妙なバランスの上に成り立っている。中心付近の水素が豊富なうちは釣り合いがとれているのだが、これを使い果たすと核融合できなくなり、温度が下がって収縮する。これが第二段階の始まりだ。



第二段階では、太陽核の外側の層が、今までおこなっていなかった核融合を始める。重力の弱い外層部で核融合が起きると、外側に膨らもうとする力が働き、63億年後には直径2倍ほどの準巨星となる。



外層部のエネルギーは太陽核を3億℃に加熱する。高温となった太陽核は核融合を再開し、今度はヘリウムを原料に炭素を作り出す。順調に続けばネオン、酸素、ケイ素(シリコン)、鉄へと発展する。まさに錬金術だ。



70億年後からは赤色巨星と呼ばれる段階となり、太陽は170倍程度に膨張する。半径およそ1億2千万kmだから、水星(太陽から5,800万km)と金星(1億800万km)は飲み込まれて蒸発する。人間ならそろそろ定年を迎える時期である。第二の人生にしては少々はしゃぎ過ぎだ。



1億5千万km離れた地球は辛うじて逃れるが、太陽風も激化し地表は1,400℃に達する。地上の物体は全て焼き尽くされ、生物は死に絶える。地殻も融解すれば、地球はもはや溶岩の塊りでしかない。その後も太陽は膨張を続け、最大で200倍程度になる。公転半径を超えた太陽に飲み込まれれば、地球はあとかたもなく蒸発する。



■太陽系、解散



77億年後を境に太陽は衰退の一途をたどる。ヘリウムを使い果たした太陽核はふたたび活動をやめ、外層部の水素も尽き、核融合を再開させるだけのエネルギーが作れないからだ。



膨張した外層部は宇宙に霧散し、核のみとなった太陽は直径10倍程度まで収縮し白色矮(わい)星となる。11万℃の輝きを見せるものの、数千年かけて燃え尽きるのを待つのみとなる。



地球もすでに蒸発しているものと思いきや、太陽から遠のき、飲み込まれずに済むという説が強い。理由は太陽の引力の低下だ。赤色巨星となった太陽は、宇宙への拡散量が増えて、質量が減るからだ。



引力の呪縛から逃れた惑星は、一斉に公転軌道をひろげ太陽から遠のく。太陽系の解散だ。辛うじて蒸発を免れても喜びはつかの間で、拡大した公転軌道が日射量を減少させ、地球を凍りつかせる。やがて太陽は完全に光を失い、太陽系は永遠の闇に包まれる。



享年127億歳(推定)、太陽はその生涯を終える。もう少し穏やかな余生を送ってくれれば、と悔やまれてならない。



■まとめ



太陽の核融合は炭素までで、ネオンやケイ素には進まないと言われている。これが本当なら、高温・高圧にさらされた太陽核は、直径1万kmのダイヤモンドになっている可能性が高い。



完全に冷めるのは150億年ほど後だろうか。この資産をめぐり、いさかいが起きないことを祈ろう。



(関口 寿/ガリレオワークス)