重要無形文化財「人形浄瑠璃」のミリョクをROCKに語る現代の太夫




重要無形文化財であり世界無形遺産でもある「文楽」は、人形浄瑠璃の代名詞です。そんな日本古来の大衆伝統芸能に魅せられたロックバンド「wiwiMURPHY」は、文楽とロックを融合させたコラボイベント『ON-RAKU』など、独自な世界観の音楽活動を展開しています。バンドのボーカルを担当するナガトミさんに、「文楽」の歴史や魅力、また『ON-RAKU』発足までの経緯をおうかがいしました。



■歌舞伎に多大な影響を与えた操り人形劇



「文楽っていうのは、もともとは人形浄瑠璃専門の劇団の名前だったんです。それが今では、日本の伝統芸能である操り人形劇『人形浄瑠璃』を意味する言葉として使われています。歴史的には江戸時代初期、それまで行われていた人形芝居と、三味線音楽、浄瑠璃が結びついて生まれたとされています」(ナガトミさん)



『はんなり』した関西弁で話す、京都出身のナガトミさん。かつては『コールタール』というバンドでコロムビアレコードからメジャーデビューも果たしたミュージシャンです。



「竹本義太夫や近松門左衛門など傑出した才能により、一時期の人気は歌舞伎をしのぐほど。歌舞伎にもいろんな影響を与えています。事実、歌舞伎の演目の多くは人形浄瑠璃の翻案ですし、現在でも最高位の太夫に与えられる称号「櫓下(やぐらした)」は、芸事における地位が市川団十郎よりも高いとされます」



■違和感なく融合した江戸と平成の大衆芸能



ナガトミさんと文楽の出会いは6年前。不慮の事故でメジャーのバンドを解散したのちに結成した「wiwiMURPHY」に、現ドラムの竹内さんが加入したところから始まります。



「竹内君は小中学生のころ、文楽人形遣いで人間国宝の吉田蓑助氏に弟子入りしてたそうなんです。それで久々に師匠にあいさつに行った際、当時の兄弟子、勘六さんに再会。それ以来、彼が自分らのライブを見に来てくれるようになりました。



勘緑さんは昔から型にはまらない人らしく、文楽の普及・公演に関する独自の団体『木偶舎』の発足や、UAさん、坂田明さん、元ネーネーズの古謝さんといったミュージシャンとの共演など独自の活動を行ってきています」



そんなアウトサイダーな伝道師がwiwiMURPHYの音楽を聴いて確信。



「一緒にやりましょう」



こうしてロックと文楽のコラボレーションがスタートしたのです。



ちなみに『ON-RAKU』の由来は、太夫・三味線・人形遣いの「三業(さんぎょう)」で成り立つ三位一体の演芸、文楽に対し、人形浄瑠璃(文楽)の演目を音楽(ロック)と文楽人形との融合によって表現することから。これまで徳島で開催された『ジョールリ100公演』内や、都内ライブハウスなど3回の公演が行われています。



「全公演、誰でも気兼ねなく見られる場所でやってきました。というのも、文楽人形とロック、江戸と平成で時代は違いますけど、要はどちらも大衆芸能、庶民の娯楽ですから。僕の中では違和感は全然なかったですね。スッと入ってきて、パッと合致しました」







■天才・近松の魅力と謎に挑み続ける!



来る11月24日、25日、第4回『ON-RAKU』公演が北沢タウンホールにて行われます。演目は鬼才・近松門左衛門の『女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)』。







ストーリーは非常にシンプル。主役の、酒とバクチにおぼれた最低最悪のダメ人間・与平が、ダメの限りを尽くし、女性を殺し、その悪事がばれて、そして……という感じです。



「初公演以降、『ON-RAKU』では、この演目のみをやり続けています。1回や2回では決して伝えられない。もっとこの演目を突き詰めてみたい。出演者の総意でした。



一体この話にどんな意味が、いや、果たして意味自体あるのかすら分からない。だから映画やドラマにもなっていますが、作品ごとに解釈が違ってくる。これこそまさに近松門左衛門の天才たるゆえんですね。この演目を僕らなりの解釈で、納得する形でやり切らないと、次には進めません」



去る9月には、2ndフルアルバム『sheep』を発売したwiwiMURPHY。まさにノリにノっている彼らの思いがつまった『ON-RAKU』公演は、敷居が高く感じる伝統芸能に触れられるチャンスです!



(OFFICE-SANGA 岩井浩)