【松岡賢治のマネーtab】国民年金の「後納」は得か損か?

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 この10月から、いわゆる国民年金の後納制度がスタートした。昨年8月に成立した「年金確保支援法」により、平成24年10月1日から平成27年9月30日まで3年間にわたって、納めていない国民年金保険料を10年前まで遡って納められる、という制度である。通常、国民年金保険料は、納め忘れた保険料があった場合、2年前までであればさかのぼって納めることができた。後納制度は、期間を限定して、さかのぼれる期間を10年前までとする特例措置と言える。なぜ、この特例措置が施行されたのかというと、単純に言えば、国民年金を支払う人を増やそうという理由からだ。

 国民年金を支払ってもらうことができる老齢年金は、保険料納付期間と保険料免除期間の合計が原則25年に達していなければならない。すると、これまで年金を払ってこなかった人が年金を払い始めても、60歳までに25年に達していなければ老齢年金をもらう資格を得られないのだ(70歳までに任意加入という方法もある)。それならば、「やっぱり年金を払うのはやめておこう」と思う人が続出するであろうことは想像に難くない。そんな、新たに年金を払おうと改心した人(?)にも、広く受給資格期間を提供することが後納制度の主な目的と思われる。当然、収め忘れの期間がある人にとっても、払い込みができる機会だ。大学卒業後、ずっと会社勤めをしているサラリーマンであれば、ほとんど関係はないが、例えば、転職をして、厚生年金を払っていない期間がある人や、サラリーマンをやめて自営業をした人で、自営業を始めたばかりの頃に国民年金保険料を払っていなかった人などは、追加で払い込みができることになる。

 自分が過去10年以内に未払い月があるかどうかがわからなくても、該当月がある人には、平成24年8月から、「国民年金保険料の納付可能期間延長のお知らせ」と「国民年金後納保険料納付申込書」が日本年金機構から送付されてくる。その「お知らせ」には、加入者本人の氏名、生年月日と、送付時点での「後納可能な期間と納付状況」や「これまでの年金加入記録」が記載されており、過去10年以内に納め忘れた保険料を確認できるようになっている。そこで、気になるのが、過去10年以内に未納月があった場合、後納した方がいいかどうか、ということ。実際、日本年金機構などには、そうした問い合わせが増えているという。

■「後納」すると結果的に得?それとも損?

 結論から言うと、老齢基礎年金と同じ程度にお得、ということができる。国民年金は、何歳まで生きて、受給することができれば?元が取れる?のかご存じだろうか。これは、簡単な計算で求めることができる。現在、国民年金保険料は月額1万4980円。年間で17万9760円、20歳から60歳までの40年間フルに支払って719万400円となる。一方、平成24年度の老齢基礎年金は78万6500円(1年間の満額)となるので、719万400円÷78万6500円=9.14となるため、9.14年間受給すれば、元が取れることになる。これを年齢にすると、65歳に受給がスタートすれば、74歳と2か月まで生きればいいことになる。

 この約9年間で元が取れる、というのは、後納制度にもほぼ当てはまる。後納する保険料の元を取るためには、9年間受給できればだいたいOK。未納月の月数や、後納する保険料によって違いはあるものの、基本的な考え方は同じである。したがって、今まで国年年金を支払ってきて、なるべく年金の受給額を多くしたいという人なら後納した方がいい、と言える。これは、将来の支給開始年齢や給付額が、現在と同じであれば、という前提条件が付く。ただし、今まで支払ってこなかった人となると微妙だ。実は、後納制度が終了する、平成27年10月からは、先に述べた、老齢年金の受給資格期間(原則25年)が、10年間に短縮されることになっている。こうなると、無理をして、現在の受給資格期間25年をクリアする必要があるかどうかは、ケースバイケースとなろう。

 個人的な見解としては、年金は実質的に破たん状態と言われるものの、消費税が年金に充当されるのであれば、トータルに考えて年金保険料は払った方がいいと考えている(年金をもらわない人の消費税も年金に充当されるため)。したがって、この後納制度は、該当月がある人は、前向きに検討してもいいのではないだろうか。

■関連情報

http://www.nenkin.go.jp/n/open_imgs/service/0000007620.pdf

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。