やはり語学力は大切

海外駐在員ライフ Vol.168

From France

英語とフランス語共に堪能なパリに駐在中の方が、現地に溶け込むために心がけていることは?


■現地に溶け込む努力を

こんにちは。ベンジャミンです。今回は、海外で働くために必要なことについてお話しします。

私自身は、幼少時代を欧米で過ごしたというバックグラウンドもあり、海外生活に対する抵抗はもともとありませんでした。それでも、海外赴任に際しては、一刻も早く現地に溶け込むことを心がけているので、必要以上に日本人、日本人コミュニティに依存しないようにしています。せっかく海外で生活をするのだから、特にフランスのように歴史や文化の集積がある国において、日本人同士だけで行動していてはもったいないと思ったのです。会社では、業務以外の場面でも、なるべく現地スタッフと交流するようにしていますし、プライベートでも、フランス文化に触れる機会を極力増やすようにしています。

例えば、職場で特に仲良くなった現地スタッフとは、上下関係を超えた友人としての関係を築き、家族ぐるみで親しくしています。週末には、長距離通勤している彼の郊外の家を訪れて、彼が所有しているぶどう畑で作られたシャンパンを試飲させてもらったり、彼の実家でお母様の手料理を振る舞っていただいたり…。パリに住んでいるだけではなかなかできない経験をさせてもらっています。

そこまで親しくなってはいないスタッフとも、しょっちゅう一緒にランチに行っています。仕事の話よりも、スポーツや政治といった多岐にわたる話題で、意見交換するのが楽しいですね。仕事で接しているだけでは知りえない趣味や家族の話も聞けます。自宅の地下のセラーにワインを収集しているスタッフは、ワインの蘊蓄(うんちく)を語らせると、止まらなくなりますし、狩猟を趣味とするスタッフは、狩りのシーズンになると、ワクワクが隠せない様子。山岳地域出身のスタッフは、かつてプロのスキーヤーになるかどうか迷ったほどの腕前で、スキーインストラクターの資格を持っていたり、ヨット大会で世界チャンピオンになったことのあるスタッフもいます。日本人のコミュニティに閉じこもっているだけではなかなか得られない発見ばかりです。

幅広くマネジメント経験を積むことができたのも、海外だからこそ得られた収穫だと思います。日本にいた数年前は、部下を持つような立場ではなかった私が、こちらに来ていきなり、多くのスタッフをまとめる立場になり、人事面接、人事考課、採用面接、ときには解雇など、日本では経験したことのないことを当たり前にこなさなければならない状況に置かれました。初めての経験なので、何もかも手探りですが、相手に頼りない未熟な上司と映らないよう、平然を装いながら、内心のドキドキを隠したものです。権限が多い分、自分の判断で決められますが、会社の代表者として責任を負っているだけに、迂闊(うかつ)な対応はできず、常に緊張感が伴います。当社のように日本人駐在員が1名という小規模現地事務所は、パリでは珍しくないため、ほかの日系企業のパリ事務所の駐在員の方々も同じような環境で頑張っているのではないでしょうか。


■日本の常識は世界の非常識

海外で仕事をするためには、やはり語学力は必要だと思います。単に会話するだけなら、どんな国籍・人種の人とでも、コミュニケーションを取りたいという強い気持ちさえあれば、共通の言語がさほどできなくてもどうにかなると思いますが、仕事をするとなると話は別。現地で、きちんと意思の疎通を図りながら、正確な理解のもとに仕事を進めるためには、現地の言語の習得が不可欠だと感じます。どんなに性格が良くて感じの良い人でも、言葉ができないと伝わらないこともあることを、こちらに暮らしていると常々感じるからです。言葉のハンデがどちらか一方にでもあれば、コミュニケーションの量はおのずと減るもの。仕事の要件は伝わっても、「オリンピックのサッカー見た?」などという雑談は、なかなかできなくなります。それでは、海外駐在の醍醐味(だいごみ)も半減してしまいます。将来、海外で仕事をしたいという学生の皆さんには、やはり語学をしっかりと習得しておくことをお勧めします。

加えて、海外で外国人の中に居ることに抵抗やストレスを感じないような訓練を積んでおきたいもの。私自身、幼少期を欧米で過ごす中で、日本人コミュニティに閉じこもり、日本のテレビやマンガなど日本の文化にしか触れずに、日本の生活習慣そのままで暮らしている人をたくさん見てきましたが、そういった人たちは、結局、友人もできず、現地に溶け込めないままでした。これでは海外に居る意味がないとつくづく思ったものです。皆さんには、アジア、ヨーロッパ、アメリカ…どこでもいいので、今のうちに、海外の文化や日本との違いを肌で感じて、日本が世界のすべてではないこと、「日本の常識は世界の非常識」であることを身をもって知っておくことをお勧めします。