日本のNPO法人に売却されることが決まり、物議を醸していた韓国・済州戦争歴史平和博物館のイ・ヨングン館長が15日、済州道庁で開かれた国会行政安全委員会の国政監査に証人として出席し、日本側が提示した買収代金は20億円だったことを明らかにした。複数の韓国メディアが報じた。  済州戦争歴史平和博物館は、旧日本軍が残した地下壕(ごう)や当時の資料や遺品を保存し、展示・公開している。館長のイ氏が、悲惨な戦争の状況を残したいと私財を投じ2004年に私営施設としてオープンした。しかし、韓国政府による援助がなく、財政難に陥っていたことから、日韓の自然保護活動などを行ってきたNPO法人「グラウンドワーク三島」が救済に乗り出すことになったと、日本でも報じられた。一方、韓国内では日本に民間団体に売却することに対し、批判の声が上がり物議を醸していた。

 韓国メディアは、「“済州戦争歴史平和博物館”日本に売却危機?」「済州平和博物館、日本側提示金額20億円」「平和博物館どうして日本に売却?日本はない」などと題し、日本への売却推進により、波紋が広がるなか、15日に開かれた国会行政安全委員会の国政監査でもこの問題が大きく取り上げられたと伝えた。

 国政監査で議員たちは、日帝侵略の歴史の現場をほかでもない日本に売却するという点について、大きな懸念があると表明した。ぺク・ジェヒョン議員は「平和博物館は、日帝侵略戦争を告発する教育の場。済州島が積極的な対応策を提示し、日本への売却を阻止しなければならない」と主張した。

 イ館長はこの日、「日本側から良い条件を提示され、泣く泣く覚書にサインをした。覚書には、買収代金を明示しなかったが、当方の専門家が評価した金額を基本とするが、20億円を超えない範囲で決定することを口頭で約束した」と明らかにした。

 また、「負債が55億ウォン(3.9憶円)程度あり、韓国内で誰かが12月までに購入するとすれば、日本側と結んだ覚書は白紙にする。韓国文化遺産政策研究所で平和博物館の文化財的価値を250億ウォン(17.7億円)と評価したが、私は借金だけまとめられればいい」と付け加えた。

 一方、韓国の各市民団体は大田政府庁舎前で15日、日本に売却される危機に処した済州戦争歴史平和博物館を文化財庁が買い取るよう求めた。

 これに対し、オ・グンミン済州道知事は「文化財庁に対して70%程度のサポートを要請し、済州島が保守、管理、運営に伴う予算をまかなう案を伝えた。最悪の場合は、済州島議会と協議して済州島が同館を所有する案も念頭に置いている」と述べたという。(編集担当:李信恵・山口幸治)