10月12日、今回の一連の事件を受け、警察庁ホームページのトップに「遠隔操作ウイルスの被害に遭わないために!」と題したメッセージが掲載された。一般のネットユーザーにとっては、「あやしいサイト」を特定することがかなりの難問なのだが……

写真拡大

大阪、東京、三重で発覚したパソコンの“遠隔操作事件”は、誰もが知らぬ間に犯罪者に仕立て上げられる可能性があるという恐ろしい現実を突きつけた―。

まずは7月、大阪府のアニメ演出家の男性(43歳)が大阪市のホームページに「(大阪・日本橋の)ヲタロードで大量殺人する」と書いたメールを送信し、業務妨害容疑で逮捕。

次に8月、秋篠宮悠仁(ひさひと)さまが通う東京都内の幼稚園に「始業式で園児を襲撃する」との脅迫メールを送った福岡市の男性(28歳)が捕まった。

さらに9月、三重県の男性(28歳)が伊勢神宮の爆破予告をネット掲示板に書き込んだ疑いで逮捕。だが、後にいずれの容疑者も釈放される。

「犯人が使ったとされるパソコンが遠隔操作可能な新種のウイルスに感染していた痕跡が見つかり、ネット掲示板などへの犯行予告はすべて第三者による犯行だった可能性が高いと判断されたためです」(三重県警・捜査員)

一連の事件で猛威を振るった“遠隔操作型ウイルス”とはいったいなんなのか? ネットセキュリティ会社「ネットエージェント」社長の杉浦隆幸氏はこう語る。

「これはパソコン内に進入してデータなどの破壊活動を行なう『トロイの木馬』の一種です。感染すると、そのパソコンは第三者に乗っ取られ、意のままに操られてしまいます。つまり、ネットの閲覧、メールの送信、データの改変・削除……パソコン上で行なえるすべてのことを、遠隔地にいる見知らぬ誰かに無断で操作されてしまうのです」

知らぬ間にPC内にあるプライベートな画像がフェイスブックにさらされる恐れもあるということか。

しかも、ウイルス作成に専門知識はいらないという。独立行政法人「情報処理推進機構」調査役の加賀谷伸一郎(かがやしんいちろう)氏は言う。

「この遠隔操作型ウイルスは、ネット上にある『ウイルス作成ツール』を使えば誰でも簡単に作れてしまいます。『感染方法』や『どんな悪事を働くのか』などを設定し、ボタンをクリックするだけ」

そこで入手されたウイルスは、こうやってばらまかれる。

「職場の上司を装ったメール文に添付されていたり、誰でもダウンロードできる無料ソフトに仕込まれるといったことは常套手段。今、一番脅威なのがサイトを開くだけで感染させる手法です。過去にはJR東日本、ローソン、ホンダなど名だたる企業の公式HPに埋め込まれ、ウイルス感染が広がったことがありました」(加賀谷氏)

スマホも格好の標的となる。

「今年に入り、ダウンロードしたアプリから感染するという、スマホを標的にしたウイルス被害が急増しています。感染したら電話帳や画像データが盗まれるばかりか、カメラを起動されて自宅の中を盗撮される恐れがある。さらに勝手に電話をかけられたり、悪意のこもったメール文を誰かに送信されるといった被害も想定できます。パソコンについても、気づかないうちに児童ポルノ画像を所持させられ、逮捕されたケースがありました」(加賀谷氏)

乗っ取りに遭い犯罪に巻き込まれたらどうなるか。

「遠隔操作型ウイルスの中には、侵入した痕跡を完全に消去できるタイプもあり、それを使われたら、警察の解析ですら見破ることは難しくなります。今回はぬれぎぬが明らかになりましたが、過去に逮捕され冤罪を晴らせないままの人もいるのではないか、と私は思っています」(杉浦氏)

では、遠隔操作型ウイルスからパソコンを守る方法はあるのだろうか。

「残念ながら、ウイルスは次々と新種のモノが作られますので完全に防御することはほぼ不可能です。常に基本ソフト(OS)を最新のものに更新し、ウイルス対策ソフトをアップデートしておくくらいの対策法しかありません」(杉浦氏)

(取材・文/興山英雄)