『ひろがる人類の夢 iPS細胞ができた!』

「iPS細胞」といえば、いまや小学生の話題にも上るほどだ。これを知らずしては飲み屋の会話にもついていけない。山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞で、書店にはさっそく特設コーナーが設けられた。予想以上の反響で注文殺到というなか、次の3冊をオススメしたい。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(http://www.j-cast.com/mono/bookwatch/)でも特集記事を公開中。

自分の細胞使って「難病克服」

『ひろがる人類の夢 iPS細胞ができた!』

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は人類の夢をかなえる大きな一歩といわれる。自分自身の細胞を使い、病気になった組織を治したり臓器を再生させたりする医療への道を開いた。山中教授は2006年にマウスの皮膚細胞から、07年にはヒトの皮膚からiPS細胞を作り出すことに成功、今年(2012年)のノーベル医学生理学賞の受賞が決まった。今後は臓器移植や難病治療、新薬開発など早期の実用化が期待されている。一方で、安全性の問題など克服すべき課題もある。

集英社の『ひろがる人類の夢 iPS細胞ができた!』(著・山中伸弥、畑中正一、1155円)は、一般の人にもiPS細胞について広く知ってほしいとウイルス学専門の畑中正一・京大名誉教授と対談、その内容をわかりやすくまとめたものだ。

 

再生医療実現の日はいつ?

『iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?』

「一日も早く医学への応用を実現させなければならない」。iPS細胞の生みの親でノーベル賞に決まった山中教授が講演や記者会見のたびに繰り返す言葉だ。再生治療の切り札といわれるiPS細胞が世の中の患者の救済に実際に役立つ日はいつやってくるのか。日本実業出版社の『iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?』(編著・田中幹人、1575円)は、iPS細胞のもたらす再生医療の可能性や問題点に正面から答える。

トカゲのしっぽは切れても生えてくるが、iPS細胞はどこまで何ができるのか。人工血液やクローン人間は実現するのか。近未来の社会はどう変わるのか。さらには日本の研究体制は世界に太刀打ちできるのか。最先端の研究成果の明るい部分だけでなく、課題にも焦点を当てた。

 

「失敗と挫折」乗り越えた自伝的読み物

 『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』

端正な顔付き、謙虚な態度。その一方で、ユーモアと家族思いの優しさもある。山中教授は、今や子どもから中高年の女性にまで大変な人気だ。講談社の『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(著・山中伸弥、聞き手・緑慎也、1260円)は、これまでの歩みについてエピソードを交えながら語った自伝的読み物である。

子どものころからよく勉強ができたが、柔道やラグビーに熱心で生徒会活動にも積極的に取り組んだ。希望通り整形外科医になったものの手術が下手で周囲のじゃまになるから「山中」ではなく「ジャマナカ」といわれた。そんな失敗と挫折を乗り越えてのノーベル賞だった。中学生にもわかるように書かれており、理科離れが進むなか、この本がきっかけとなって科学をめざす少年少女が増えてほしいものだ。