今月注目! 経済の言葉「見せ玉」
一進一退を続ける日本市場。売買のかなりの部分を占めるアルゴリズム取引が、大型優良株の下方修正により下げを加速する事態も…。でも、一時164円まで下げたシャープなんか、実は買い時だと思うのだが?


後を絶たない「株価(=相場)操縦」。先日も岡山県在住の40代男性が金融庁から135万円の課徴金納付命令を言い渡されたばかり。また、福岡地裁に昨年、告発されていたホームページ制作会社の28歳男性には、今年5月に懲役3年、罰金300万円、追徴金は求刑通り約1億8700万円の実刑判決が言い渡されました。執行猶予なしの大変厳しい判決に市場関係者からも驚きの声が聞こえましたが、その額から確かにそれ相応の悪質性をうかがい知ることができますよね。しかし、悪質性や不正金額に違いはあるものの、実はこの両者は同じ手法を用いて犯罪に手を染めていました。それが「見せ玉(ぎょく)」という手法。

見せ玉とは、売買の意思がないにもかかわらず、大量に市場に注文を出すことをいいます。たとえば、全然上がりそうになかった現値100円の銘柄に、現値より下の90円とか80円で大量に買い指値注文を入れたらどうなると思いますか? 注文板を見ている投資家は「あれっ、何か好材料でも出るのかな?」「値動きがおかしいぞ?」=「とりあえず買っておこう!」といった具合に上がるかもしれないと買ってしまいます。こうした投資家心理を欺き、上手に利用するのが見せ玉の手法です。過去に私が見たケースでは、寄り付き前のある銘柄の板にいきなり2000万株の買い気配……。「何かある!」と驚いた投資家たちから次々と莫大な量の買い注文が入りました。それが「高値で寄った!」と思った瞬間に2000万株の買い注文が消え、後から入った投資家たちは高値つかみをさせられただけの結果に……。相場操縦ではこの見せ玉が主流ですが、他にも「仮想売買」といわれる、何度も何度も同一人物が同時期に同じような価格で売買を繰り返し、あたかも相場に出来高があるように装うものなどもあります。また、「風説の流布」なども相場操縦にあたるとされています。知らずに巻き込まれている可能性もありますから注意したいものです。

若林史江(わかばやし・ふみえ)
株式アドバイザー、徳山大学経済学部特任講師

この連載では経済を背景に移り変わる金融用語を、できるだけわかりやすく紹介していきます♪


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この記事は「WEBネットマネー2012年11月号」に掲載されたものです。