もしも科学シリーズ(12)もしも巨大隕石が衝突したら


2004年12月24日、NASAは小惑星アポフィスが2036年に地球に衝突する可能性を発表したが、のちの再計算で、アポフィスが地球に衝突する可能性はほとんどないことが分かった。



ところで、人類は巨大隕石の衝突に耐えられるのだろうか?衝撃波、地震、津波に加えオゾン層も破壊されれば、近代科学をもってしても、残念ながらなすすべはなさそうだ。





■自然災害のフルコース



隕石とは地表に落下した天体で、彗(すい)星や小惑星の破片、宇宙の塵などである。ここでは出自は問わず、地球に衝突する天体を隕石と総称することにしよう。



隕石は秒速数十kmで大気圏に突入し、先端の空気を圧縮しながら地表を目指す。断熱圧縮と呼ばれるこの現象は、隕石を高温にし発光させる。大気中で蒸発するか爆発するのが定番だが、直径100m以上になるとどちらも免れ地表に衝突する可能性が高い。



隕石は地表をえぐり、大きな窪(くぼ)地を生み出す。これがクレーターだ。



世界最大のクレーターとされる南アフリカ共和国のフレデフォート・ドームは直径約190km、隕石は地下25kmにも達したとされる。これを引き起こしたのは直径たった10km程度の小惑星というから、コストパフォーマンスは抜群だ。



NASAの資料をもとにすると、隕石の直径(m)と衝突の可能性(周期)、衝撃エネルギー(TNT火薬換算)と(広島型原爆換算)は以下の通りである。



・直径3m … 1か月に1回 … 0.001メガトン … 0.05個



・直径15m … 10年に1回 … 0.2メガトン … 10個



・直径100m … 1千年に1回 … 50メガトン … 2,500個



・直径10km … 1億年に1回 … 1億メガトン … 50億個



衝突の瞬間、隕石は1,500℃に達し気化する。高温の衝撃波は時速7万kmで広がり、直径100mの隕石なら200平方キロ、200mなら6,000平方キロが焦土と化す。地殻を突き破ってマントルに到達すればマグマを活発化し、広範囲の火山が噴火する。



直径2kmクラスが衝突すると、土砂や粉塵を成層圏まで運び、日射を妨げ急激な寒冷化が始まる。これが「衝突の冬」だ。再び空が澄み渡るまでには10年もの歳月を要するというから、生態系への影響は免れない。



海に衝突するとどうなるか? 地球表面の70%は海だから、陸地よりもはるかに現実的だし、粉塵の心配もなさそうだが、被害の範囲ははるかに広く、地球全体を巻き込むことになる。



隕石は海底に突き刺さり、深い穴を作り出す。穴を埋めようとして海水が集まり引き波を起こす。穴を水没させても引き波は止まらず、集まった海水が海面に水柱を築く。隕石が地下30kmに達した場合、高さ10kmもの水柱が発生するというから驚きだ。



地震、衝撃波、崩れた水柱は100mクラスの津波を発生させる。水深が浅くなるほど津波は高さを増すので、強大な破壊力となって陸地を襲う。



アポフィスは太平洋上の、カリフォルニアとハワイの間に衝突すると予測された。直径400m近いこの小惑星はTNT火薬510メガトン相当の衝撃をもたらす。発生した津波はハワイを沈め、アメリカ西海岸を壊滅する。



環太平洋地域は全滅し日本も原型をとどめないだろう。太陽神ラーを脅かす大蛇の名にふさわしい破壊力だ。



■大気を破壊する空中爆発



それでは空中で爆発した場合はどうか? おそらくこれが最悪のシナリオだろう。



1908年にロシアのツングースカで起きた空中爆発では、300平方kmが焼き尽くされ、800万本もの樹木がなぎ倒された。調査まで10年以上も要したこともあり、原因は特定されていないものの、直径60mほどの隕石が空中爆発したという説が最も有力だ。



巨大隕石の空中爆発は地球全域のオゾン層を破壊し、有害な紫外線を増加させる。大量発生した窒素酸化物は酸性雨となり、動植物の生育を阻害する。たとえ衝突の冬や津波は回避できても、永年に渡り兵糧(ひょうろう)攻めを受けることになってしまう。



(関口 寿/ガリレオワークス)