出所:『若者が3年で辞めない会社の法則』(PHP新書)

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人事コンサルタント 本田有明(ほんだ・ありあけ)
1952年、兵庫県生まれ。慶応大学哲学科卒業後、日本能率協会を経て96年に独立。著書に『本番に強い人、弱い人』(PHP新書)、『いつも「結果」が出せる人の仕事術』(PHP文庫)など。

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「どうして自分がリストラされるのか」……気づかない間に会社から必要とされなくなってしまう人は多い。その原因の一つは、会社が必要とする人材は常に変化しているということだ。

■お節介を嫌がる若手はいない

いまは職場がギスギスしている、閉塞感があるといわれているが、その一因は職場での会話が減ったことにある。仕事のIT化や専門分化が進み、オフィスのレイアウトもそれに合わせてパーティション(仕切り)が目立つようになった。各種の通知はメールが基本になり、肉声で話す機会が以前と比べてぐっと減ったのである。

そのなかでは、会話を増やし、組織のなかの絆を太くすることが大きな課題になっているのである。だから上司が、ちょっとしたことで会話を増やすよう努力することは、組織をメンテナンスし、パフォーマンスを引き上げるうえでも有効なのだ。

必要なのは、職場での一歩踏み込んだコミュニケーションである。私はこれを「お節介」というキーワードでとらえることにしている。

たとえば生協最大手のコープこうべは、若手の離職者がほとんど出ないことで有名だが、それは上司が次のような「お節介」を焼いているからだ。

コープこうべの新人は一人ひとりが「OJTノート」というノートを持たされ、日報などをここへ記入し部門長へ提出する。仕事にあたっての感想や心境も漏れなく書く。すると部門長が「それは誰でもあることだ。そのくらいで傷ついていたらいけない。応援しているよ」などと返事を書いて、本人へ戻す。交換日記形式である。

最初は嫌々始めるが、そのうちに馴染んでいく。先輩たちも「ノートにアドバイスをもらうと必ず元気になるよ。俺もそうだった」と声をかけるという。そのような空気がコープこうべにはあるという。つまり、お節介な人が多いのだ。

生協は基本的に配送や店舗での仕事が多い。文化事業などを志望して入ってきた新人が希望どおりの職場につけなかったときに「辞めたい」と漏らす。すると、部署を超えて、いろんな先輩たちが「よくあることだ、元気を出せ」とやってくる。

お節介はふつう嫌がられるものだ。しかしいまの若手は、こんな「お節介」ならあってもいいと思っている。いや、むしろ求めているといってもいい。

アンケート結果を見てほしい。上司への不満の上位には「指示や命令の内容が不明確」「仕事のやり方を教えてくれない」「表面的なコミュニケーション」などの項目が並んでいる。

つまり彼らは「教えてくれない」ことが不満なのであり、むしろ自分たちともっと深く関わってほしいと感じている。だったら、上司のほうも遠慮をせずに近づいていくべきではないだろうか。コープこうべの人たちのように、いくらかお節介でも、身を乗り出してみることが大切なのだ。

■メンターは新人を孤立させる

そうなると、1人の新人に1人の先輩社員をつけるメンター制度の限界も見えてくる。担当外がはっきりしているので、横から口を出しにくくなり、悪くするとメンターと新人がたった2人で孤立してしまう。お節介の原理が働きにくいので、むしろマイナスに作用する場合もある。そこの壁をこじあける必要があるだろう。

本題に戻ろう。

種族6:短期間なら素晴らしいパフォーマンスを上げるが、メンテナンスをしないので部下を潰してしまう上司がいる。このタイプも現場指揮官より上にいくことはできない。

ある部署に異動するや強権を発動して、9時出社のところを8時半出社、昼食時間も40分で切り上げるといった形で全員を臨戦態勢に持っていく。そのため、しばらくはパフォーマンスが上がり、チームとしての成果は上々である。

当人は、これくらいギアを上げていかないと会社は生き残れないと固く信じている。部下に対しても「これくらい厳しい環境でしごかれれば、君たちも実力がつく。ついてこられないのは駄目な奴だ」などと公言する。

だが、無理な緊張はそう長くは続かない。人間、長丁場で働くには適度なオフが必要である。上司は本来そのあたりにも目配りをするべきだ。ところがこの手の上司にはそういった発想は通じない。そのため、1年もすると上司の横暴さやハードワークに耐えられなくなった部下たちが“反乱”を起こす。個別に抵抗しても飛ばされるだけなので、巧妙に連携し、ある日いっせいにサボタージュを始めるのだ。

種族6の上司は短期集中型のプロジェクトにはめっぽう強いが、長期的な仕事には向いていない。手持ちの人材を、短い期間で潰してしまうからだ。

おおむね部長までは最年少で昇進しましたというタイプ。高学歴で、自他ともに認める切れ者だが、他人の気持ちがまるでわからない。自分のやることには確固たる自信を持っているので、自分のいうとおりやらない奴は悪だと信じ込んでいる。そのため、場合によっては暴力沙汰を含む悲惨な諍いを引き起こしてしまう。

もちろん、そうなれば以後の出世は望めない。独立して同調者だけを相手に仕事をするなら、すばらしい成果を残せるかもしれないが、ふつうの組織で、できる人もできない人もいるなかでは、ほぼ間違いなく最後には破綻するタイプの人物である。

以上は悪い例だが、では、今後求められる管理職像とはどういうものか。

私は「イノベーターとモチベーターになれ」と説いている。イノベーターはイノベーションを起こせる人。一方、モチベーターは「この人と一緒に仕事をしたい」と思われる人だ。「多少きついことをいうけれども、この人とだったら一緒にやっていける」。そう思われるような上司に、ぜひなっていただきたい。

※すべて雑誌掲載当時

(人事コンサルタント 本田有明 構成=面澤淳市 写真=和田佳久)