強い事業をグローバルでより強く。そのために一人ひとりが「心技体」を備えた人材に

人事部長インタビュー Vol.34

三菱電機株式会社 大隈信幸さん

「総合」という枠組みを外し、10の領域からなるそれぞれの事業を世界ナンバーワンへ


■「総合」ではなく、それぞれの事業が世界ナンバーワンに

現在、三菱電機が最優先する戦略は、グローバル展開の強化です。まず目指すのは、2015年までに海外売上比率40パーセントを達成すること。現在、海外売上比率は約33パーセント。5年ほど前に30パーセントでしたから、それは、決して非現実的なことではありません。これまで国内を中心に培ってきた力をグローバルな舞台で発揮する、今、まさにそういう転換期に来ているのです。

では、それに向かって何をするのか。「強い事業をグローバルでより強く」することが、その主軸です。

当社の事業の基盤は、10の領域からなる事業本部にあります。電力システム、交通システム、ビルシステム、ファクトリーオートメーション(FA)システム、自動車機器、空調システムなど、その領域は多岐にわたり、それが当社が「総合電機メーカー」と言われるゆえんでしょう。しかし、まずは「総合」という枠組みを外し、それぞれの事業が世界ナンバーワンになっていくことが重要だと考えています。

主戦場は、発展著しい中国。そしてインド、インドネシア、ベトナムといったアジア諸国。南米でいえばブラジル。欧州ではトルコ。このように新興国が中心です。新興国では、人口が増加する「人口ボーナス」を持つ市場への期待感だけでなく、社会インフラがまだ十分に整備されていないため、電力、交通、ビル、FAなどの大型システム案件のほか、生活水準の向上を背景としたエアコン、冷蔵庫といった家電の需要も急増しています。

一方、欧米を中心とした先進国では、環境負荷の低減を目的に、発電効率をよくする、従来は必要だったエレベーター用の機械室をなくし、ビルのムダなスペースをなくすなど、既存の施設、設備のリニューアルの需要が高まっています。

このようにニーズは国や地域によって異なりますが、電力システム事業では発電、送変電、配電と高効率・低環境負荷などトータルシステムの提供、ビルシステム事業では高い安全性と信頼性を担保した最先端の駆動・制御技術による省エネ実現というように、それぞれの事業が100年かけて培ってきた強みを発揮することに注力します。そして、「Changes for the Better」という当社のコーポレートステートメントの通り、常に革新に挑み、最適なソリューションの提供によって、グローバル市場の中でナンバーワンになる。それが、三菱電機の10年後、20年後の姿だと考えています。


■誰もがグローバル事業の担い手となる準備が必要

それぞれの事業がそれぞれの市場で戦う相手は、例えばFAシステムでいえば、シーメンス、ロックウェルというようなグローバル企業が中心です。彼らと戦い、勝っていくためには、当社のグローバル化を支える人材の確保・育成を急がなければなりません。

もちろん各国各地域のことは、そこで育ち、学んだ現地人材がより深く理解しています。各国事業の現地化、現地人材化を進めるためには、各国で採用した現地人材の育成が喫緊の課題です。

一方で、やはり「内なるグローバル化」、つまり日本人社員のグローバル人材化も欠かせません。三菱電機が培ってきた先端技術のみならず、大切にする組織文化や理念をグローバルでも紡いでいくことが重要だからです。

当社では、グローバルコース、国内コースというような明確なコース分けを行っていません。最終的には国内でずっと過ごす人もいますが、総合職は海外に赴任する可能性が常にあります。どんな企業にいても、これから海外事業の比率はどんどんあがっていきますし、たとえ本人は「一生国内で過ごしたい」と思っていても、担当するお客さまや取引先が海外に出て行けば、海外とのかかわりは増えていかざるを得ません。当社のFAの国内担当の営業でも、お客さまの工場が海外に移転すれば、それとともに現地での展開を考えることになるのです。

ですから今後は、誰もがグローバル事業の担い手となる準備をしなければなりません。

では、その担い手としてのグローバル人材とは、どんな人材なのでしょうか。当社ではそれを、「心・技・体」という言葉で表現しています。

「心」とは、勤務地に拘泥(こうでい:こだわること)しないこと。国内でも、海外でも力を発揮したい、発揮できるという心構えがまず必要です。

「技」は、国内外で通用する専門性の高い技術、スキルを指しています。グローバル人材といえば、多くの人が「英語に堪能」というイメージを持ちますが、それだけではこと足りません。仕事で成果を出せることが第一義。そこに少しの語学力が加われば、外国でも人は付いてきてくれます。

そして、「体」。「心」と「技」を支えるためには、タフであることが求められます。

こうした力を備えたグローバル人材を育成するための施策に、今、力を注いでいます。1つのモデルを紹介しましょう。

前述の通り、重要なのは何よりも仕事の専門性です。新卒入社後は、多くの社員がそれぞれの事業本部に配属となり、技術、スキルを高めていきます。この期間は少なくとも3年。基礎的育成期間として、職場の先輩がついてマンツーマンで仕事を教えたり、相談に乗ったりします。

そうしてある程度、専門性の基盤ができたあとは、自ら手を挙げ、それが認められれば、海外OJT研修に参加することができます。これは海外拠点で1年間、語学を学びながら実務を担う制度であり、多様な文化の中で力を発揮するための基礎を築く絶好の機会でしょう。

20代後半以降は、海外駐在の機会も多くあります。現在、世界各国に駐在する社員は約700人。これからはその数がもっと増えていくでしょう。若手での赴任とはいえ、現地に行けば課長など、マネジメント職を担うことがほとんど。大きな責任が伴います。そこで出合う多様な文化を背景とした多様な国籍の人材と連携し、複雑な社会問題に向き合っていきます。自ら周囲に働き掛け、大きな力を生みだし、最後までやり抜く力を養う、絶好の機会でもあります。

そして、40代半ばを過ぎて、また海外赴任するときには、現地法人のトップとして、その国の事業を牽引する大きな役割を担う人も出てくるでしょう。

転換期にある今は、世界に打って出て、活躍するチャンスにあふれています。そして、1人の社員を育成するために、上司や人事が常に真剣に考えるのが、当社の風土。それは今後も変わりません。一人ひとりの成長が、グローバルでの強い影響力を持つ三菱電機の未来をつくる原動力になると、確信しているからです。どんなに大きな社会問題でも、解決の起点となるのは、一人ひとりの強い意志と行動力なのです。