マクドナルドの「カウンターメニュー廃止」は弱者切り捨てか?

写真拡大






読者諸兄はファストフードを利用されるだろうか。筆者は割と頻繁に利用する。理由としては、近所にあるから、安いからといった利便性のほか、一人で食事することが多いから……といったさみしい事情もあるが、マナーなどを気にせずに気楽に食事できる、というところも大きい。




そんな我らがファストフードの代表格のマクドナルドで、この10月からカウンター上のメニューが消えた。あらかじめ壁やカウンター上部にあるメニューで注文するモノを決めておいてもらうことで、混雑時もスムーズに対応できるようにするためだという。




当然のことながらウェブ上では非難の声が続出。曰く「レジ前で迷う人だらけでかえって混雑するだけなんじゃないのか」。まったくもってその通りとしか思えない。マクドナルドから消えるのは、ハンバーグラーやビッグマックポリスや、その他名前も思い出せないようなキャラクターたち(バーバパパみたいなデザインの奴とか)で充分だ。




そこで思い出すのが、一見さんお断りでマナーにうるさそうな高級料理店の数々、というよりも、珍妙な注文ルールのある某人気ラーメンチェーン。具材や調味料をどうするか問われた際に答え方を間違えると分かりやすく言い換えたりせずに同じフレーズで聞き直されたり、時には店員の機嫌が悪くなったりするという、そのくせどこにもそうした注文ルールが明記されていない、あの店だ。




そんなルールを強いる店なら客から見放されそうなものだが、これが結構な人気がある。そして何より面倒なのは、そうした「ルールを知っている俺」みたいな態度を隠さない、通ぶった常連客の存在だ。一見さんが入店して注文の仕方が分からなくてあたふたしてると、ああいう人たちって鼻で笑ったりするでしょ。しない人の方が多いだろうけど、いなくはないでしょ。少しはいるでしょ。




で、マクドナルドが今回、カウンターにメニューを置かなくなったことで、こうした「俺は知っている」といわんばかりに通ぶった客がマクドナルドにも発生するのではないか。カウンター前で慌てちゃって無難なチーズバーガーあたりを注文してしまう客を見て、「今なら同じ値段でクォーターパウンダーチーズのセットが頼めるのにww」などと人をあざ笑う連中が現れるのではないか。ファストフードごときで選民意識か。一緒にマクドナルドに入ったおばあちゃんがうまく注文できずに常連客に嘲笑される姿を見てしまった幼い孫の心に一生残る傷を受け付ける気か。




そんなわけでマクドナルドは即刻カウンターにメニューを復活させていただきたい。実際にはすでに数店舗で試験的にメニュー廃止を実施し、良い結果が出たから全店舗でも実施とのことなので元に戻すのは難しかろう。だが、筆者のようにあらかじめ決めておくことの苦手な客は、今回の変化で非常に店に入りづらくなるし、勇気を出して入ったら入ったで、常連客の目を気にしながら考える余裕もなく店員がおすすめする期間限定の高いメニューを注文してしまいかねない。




まあ本格的に面倒くさそうならもう行かなければいいだけなのだが、そうした客が減ってスムーズに対応できるようになるというのもあちらさんの思う壺なのかもしれない。弱者はファストフードにも見捨てられる。なんとも世知辛い世の中である。




(田中元)