こうすることで、妻がその料理のレシピを学ぼうとしてくれたら万々歳だ。

本屋で料理本を購入したり、ネットで料理のレシピを調べたり、初めて作る料理だからこそ人間は一から学ぼうとするわけで、その結果の積み重ねが無意識の技術向上につながっていく。

さらにその情熱を消さぬよう、妻の姿勢をきちんと褒めてあげることも重要だ。

食事の支度とは、妻が専業主婦であるなら、彼女にとって最大の仕事なのだから、それが報われたという充実感は何よりも活力になる。

それはすべての仕事に共通する話だろう。

また、これは僕の知人の料理人が教えてくれた裏技だが、料理が下手な妻にあえて夫のほうから「料理を教えてくれない?」と頼んでみると、自然に彼女は料理を学び始めるという。

なるほど、これは逆説的な真理のひとつかもしれない。

人間は誰しも、他人に何かを教えるとなったら、まずは自分できっちり勉強しようとする。

「他人に何かを教える」という行為には、「自分が学ぶ」という裏の意味も含まれているのだ。

要するに妻の手料理というものは、たとえそれがどんなにまずいものであっても、そう簡単に非難してはいけない。

非難したところで料理の腕前が向上するとは限らず、ただ彼女の心を傷つけるだけに終わってしまうこともあるからだ。

それよりも、まずは作ってくれた気持ちに感謝して、文句を言わずに食べるほうが人間として美しい。

そして、その後にゆっくり妻の料理に対する意識改革を自然な形で促してあげるといい。

なんでもかんでも正直者である必要はないのだ。



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