人の心を丁寧に描写した、繊細な筆致で支持を得る宮下奈都さん。家族小説からミステリーまで多彩な文章を手掛け、多くの連載を持つ小路幸也さん。人気作家のふたりが交互に執筆した連載小説『つむじダブル』が書籍化されました。小説では異例ともいえる、「共著」作品。きっかけとなったのは「つむじ」と「ツイッター」だと言います。

小路:宮下さんとはツイッターで初めまして、という形だったんです。それから何度かやり取りして、ある時、僕が「つむじが2つあるからヘアスタイルがきまらない」とつぶやいたら、宮下さんが「私もふたつあるんです。つむじダブルですね」と。その「つむじダブル」という言葉が気に入って、そのタイトルでふたりで1本書きましょうか、ということになったんです。

 物語の主人公は柔道が大好きな小学4年生の小宮まどかと、まどかの自慢の兄、バンドマンで高校2年生の小宮由一。ふたりはつむじがふたつある「つむじダブル」の仲良し兄妹。両親も仲が良く優しく、おじいちゃんは元気で明るく、と理想的な家族。でも実は家族には秘密があって......。

 執筆にあたっては、宮下さんがまどか視点、小路さんが由一視点のパートを担当。共著ということで、物語はどのように考えていったのでしょうか。

宮下:イベントで小路さんと初めて実際にお会いする機会があったんですが、そこで30分くらい話し合って、家族の設定や名前なんかを決めました。

小路:主人公の苗字は小路と宮下だから小宮でいいか、と。おじいちゃんの名前は僕の祖先の名前からとったりしました。

宮下:それから、家族には秘密があるんだよね、という設定を決めて。書く順番もその時に決めて、「私に先に書かせてください」と。ラストは小路さんにお願いしました。

 執筆をすすめていく中で、共著ならではの予想外の展開もあったそうです。

宮下:小路さんが、ご自分で考えた設定を忘れてしまって(笑)。「あれ、いつ出てくるんだろう」なんて思っていて、それで半分くらい書き終わったところで「小路さん、あれどうなりました?」って聞いたら「ごめん、忘れてた!」って(笑)。結局そのアイディアは出さないことにしたんですけど、あれを出していたら展開が全く変わっていたと思います」

 苦労した点などはありましたか?

小路:僕はツイッターで出会う前から宮下さんの作品は読んでいたので、宮下さんなら大丈夫だ、という感覚があったので。ふたりの共通した認識として、苦労という苦労はなかったですね。

宮下:すごく楽しかったです。自分では全然出てこないようなアイディアが出てくるので、本当に楽しんでできました。

 今回は年の離れた兄妹が主人公の作品でしたが、これは恋人を主人公にした、遠距離恋愛ものも可能なのでは?

小路:できるだろうけど、ドロドロになっていたと思いますね(笑)。綿密に打ち合わせをして、どこで何があるか、進みをしっかり決めていかないといけないから、それこそ苦労したと思います。苦労しなかったというのは、この「兄弟」という設定が大きかった気がしますね。

宮下:兄弟はどうなっても平行線でいいじゃないですか。でも恋人とか夫婦だと、うまくいったり、離婚したりもあるかもしれないですし。それから、小学生と高校生というのもよかった。これが中学生とかだとまた違っていたと思います。

 ツイッターでのつぶやきからはじまり、お互いに楽しみながら書くことができたという『つむじダブル』。もしや今後、「つむじダブルシリーズ」ということもありえるのでしょうか?

宮下:10年後のまどかとか、書いてみたい気はする。お兄ちゃんがどんなにかっこよくなっているかな〜とか。高校生のまどかと、大人になったお兄ちゃんとか。

小路:そうなると、もう由一は家を出ているかもしれないし、まどかとどう絡ませるかですよね。何か事件があって、そこからふたりでどうしていくか、みたいな話になったり。いろいろ考えられると思います。でも『つむじダブル2』ってややこしいですね(笑)。

 今回の作品の編集担当は、おふたりで書いているにもかかわらず人物像にブレがなく、同じように焦点が合っていることに驚いたといいます。二人の作家のもつ雰囲気がそれぞれに発揮されていながら、絶妙な一体感のある不思議な作品に仕上がった『つむじダブル』。宮下さん、小路さんファンの方はもちろん、この新しいスタイルの作品は読書好きなら必読です。


【プロフィール】
■小路幸也(しょうじゆきや)
北海道旭川市出身。2002年、「空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction」で講談社メフィスト賞を受賞し、デビュー。その後、家族小説『東京バンドワゴン』シリーズ(集英社)で注目を集めた。著書に『花咲小路四丁目の聖人』(ポプラ社)、『ピースメーカー』(ポプラ社)、『ナモナキラクエン』(角川書店)など多数。

■宮下奈都(ミヤシタ・ナツ)
福井県福井市出身。2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選し、デビュー。著書に、『スコーレNo.4』(光文社)、『メロディ・フェア』(ポプラ社)、『誰かが足りない』(双葉社)、『窓の向こうのガーシュウィン』(集英社)など。




『つむじダブル (一般書)』
 著者:小路幸也,宮下奈都
 出版社:ポプラ社
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