韓国原発の安全性が“臨界レベル”に達している。10月2日、韓国国内のまったく別の場所にある原発2基が、部品故障により相次いで停止した。午前8時10分頃に南東部・釜山市の新古里(シンゴリ)原発1号機、午前10時45分頃に南西部・全羅南道の霊光(ヨングアン)原発5号機。韓国の原発の部品故障による停止は、今年7回目だという。

これだけでも多すぎという印象を受けるが、実は7月末にも同じように、いくつもの原発が連鎖的に停止したことがあった。まず7月30日、フル稼働中の霊光原発6号機が故障で停止。その翌日の31日、今度は同じ霊光原発の2号機が故障。一時、出力が10%ほど低下した。どちらの事故も、韓国水力原子力発電会社(韓水原)は故障原因の詳細には一切触れず、結果だけを淡々と発表しひたすら事故の軽さを強調した。

ちなみに、霊光原発6号機は4月に核燃料棒の“軽微な欠陥”による原子炉冷却材放射能レベルの上昇、2号機も3月に特別安全点検途中の非常電力装置故障による停電という問題を起こしたばかりだった。

さらに同じく31日、東南部・慶尚北道にある新型の「KSNP(韓国標準型原子炉)」新月城(シンウオルソン)原発1号機が故障停止。満を持して商業運転を開始した、わずか19日後のことだった。この新月城原発1号機も、1月の試運転開始以降、すでに3度のトラブルが発生していた。

相次ぐトラブルにも関わらず、韓水原は「発電所の安全性に影響はない」、「放射能漏れはない」と繰り返すのみ。さらに、韓国の電力会社関係者も「あぁ、またか」と、慌てる様子すらなかったという。

そこには、韓国特有の根深い構造的問題がある。韓国経済に詳しい大手証券会社アナリストのA氏がこう説明する。

「韓国は、原発をやめたくてもやめられない。周波数や出力の安定した“キレイな電気”が必要不可欠な半導体や液晶の製造に、国の経済の存亡がかかっているからです。ただでさえ狭い国土には適さない上、天候にも左右される、風力や太陽光なんてもってのほか。必然的に火力や原子力に頼らざるを得ず、なかでもコストパフォーマンスに優れた原子力は切っても切り離せないんです」

サムスンやLG電子などの“基幹産業”が世界市場の価格競争に勝ち続けるには、原発に頼り続けるしかないということ。韓国は2024年までに原発を14基増設し、原発依存率も現在の31%から48.5%まで引き上げる計画だという。

とはいえ、これだけ停止事故が相次げば、少なくとも市民レベルでは「原発反対」の声がもっと支配的になってもいいような気がするが……。

「もちろん韓国にも反原発運動はあります。しかし、日本以上に激しい格差社会のなかで、安い電気の確保を最も望んでいるのは、実は苦しい生活を送る低所得者層なんです。特に都市部で賃貸住宅の保証金が高騰している昨今では、ライフラインである電気に対して高い料金などとても支払えないというのが正直なところでしょう」(前出・A氏)

韓国の急激な経済発展の裏には、こうしたいびつな格差の構造があったということか。

(取材・文/近兼拓史)

■週刊プレイボーイ43号「マジでヤバいぞ、韓国原発……!!」より