草食でも肉食でもない、「ボンクラ男子」という生き方




初めて「ボンクラ男子」という言葉を耳にしたのは、ラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』でした。しかし、特定ジャンルの映画や音楽などを好む人々らしいという漠然とした印象だけで、今一つ輪郭がはっきりしません。オフ会でリアルにボンクラ男子を目にしても、正体はつかめずモヤモヤが募るばかり。こうなったら本丸に切り込むしかない!



■セクシャルじゃなくてソーシャルです



――覚悟を決め、件(くだん)のラジオ番組の構成作家にして、ボンクラ男子のバイブルとの呼び声も高い名著『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』を制作した、古川耕氏に「ボンクラ男子」について伺いました。「ボンクラ男子」とは、どんな人なのでしょうか?



「ホモソーシャル的な趣味趣向・世界観、もしくは価値観を持ち、時にはその価値観を優先させるがあまり、社会性に欠ける振る舞いや言動を見せることがある……。そんな、少しだけ歪なバランス感を持つ人。また、男性に限らず『ボンクラ女子』も存在すると思っています」(古川氏)



ここで登場するホモソーシャルとは、主に社会学の分野で使われる用語で、ホモフォビア(同性愛嫌悪)とミソジニー(女性嫌悪)を基本的な特徴とする、男性同士の強い連帯関係を表します。そこに性愛の入り込む余地はありません。



ものすごく雑にまとめると、ホモソーシャル=熱き男たちのきずなということになるでしょうか。



■『ランボー』を馬鹿にするやつは死ぬべき(あるボンクラ男子談)



古川氏は「世間ではこう認知されているはず」という注釈付きで、ボンクラ男子の趣味趣向を挙げてくれました。



・映画:SF、アクション、ホラーなど。いわゆるB級と呼ばれる作品も好む。

・プロレス・格闘技

・アニメ:SF、アクションもの、ロボットものを好むイメージ。

・マンガ:少女マンガやオシャレ系は除く。過去の名作と呼ばれる作品もちゃんと押さえている。アメリカン・コミックも好む。

・テレビゲーム:FPS(First Person Shooting、プレイヤーの一人称視点で進めるアクションゲーム)や洋物ゲーム、モンスターハンターなど。



「あとは銃器・ミリタリー・ヘヴィメタル・SFあたりでしょうか。いずれにせよ、より懐古的かつ男のコっぽいものという印象があります」(古川氏)



見事な男くささ、全体的に女性の影が薄い傾向がうかがえます。



■ボンクラ男子はぬるく見守るべし



ボンクラ男子について考えた始めた時、趣味趣向の側面から切り崩そうとしましたが、範囲が広すぎるあまりに全体像が見えてきませんでした。



それが、古川氏の示してくれた「ホモソーシャル」というファクターを通すと、ボンクラ男子が特定の趣向を持つ背景を、ざっくりではありますが理解することができたのです。



ホモソーシャルは男性同士の連帯を基盤にした同質性が特徴で、異質なもの、すなわち「おれたち」でないものは排除されます。とりわけ性を排除する傾向が強いことから、女という異質な存在は忌み嫌われるのです。



それも人によって程度がありますが、嫌悪とはいかないまでも、ボンクラ男子は心のどこかで女性を別世界の住人だと思っている模様。



女の立場からすれば、勝手だなぁと思います。



ただ、ボンクラ男子本人も、そこは自覚しているでしょう。ゆえに「ボンクラ」という言葉は自嘲気味に語られるのです。



その含羞(がんしゅう)があればこそ、ボンクラ男子は憎みきれないロクデナシたりえているわけです。



古川氏いわく「ボンクラには『甲斐性はないけどイイやつ』『ダメ人間なんだけどチャーミング』というようなニュアンスも含まれているはず」とのこと。



なるほど、ボンクラ男子とは「歪(ゆが)んでいると知りながら愛に殉じる人々」と心得ました。



愛とは総じて愚かなものだが、貫く姿勢は美しい……かな?



愛戦士、ボンクラ男子に幸多かれ! 私も『ランボー』は名作だと思います。



(OFFICE-SANGA 服田恵美子)