暮らしのトラブルは「パリの洗礼」

海外駐在員ライフ Vol.167

From France

住まい探しは早い者勝ちのパリでは、下見の場で即決?


■パリの住まいは下見の場で即決

こんにちは。ベンジャミンです。今回は、私のパリでの生活についてお話しします。

パリでの住まい探しは、まず着任前に、パリ市内のどのエリアが治安面で安全で、毎日の通勤に支障がないか、買い物なども便利かどうかを調べることから始めました。その上で、着任後、パリの街中を歩き回りながら、自分の目で街並みの様子を確認し、ある程度、候補エリアを絞り込んだ段階で、そのエリアの不動産会社を回って該当する物件を探したのですが、残念ながら、その地道な方法では、下見にこぎつける物件すら、ほとんど見つかりませんでした。なぜなら、私が住まいを探した7月は、フランス全土がバカンスシーズンに突入してしまった後だったからです。そのため、物件がすでに先に契約済みになっていたり、大家さんや不動産会社が休暇で不在だったりして、見学できる物件が非常に限られていました。

加えて、私が探していた地域は、駐在員や資産家に人気のエリアだったこともあり、家賃が手ごろで感じの良い物件は、早い者勝ちですでにほかの人に取られてしまっているのです。見学のアポイントを取っていたにもかかわらず、「もう貸す人決まったから」と断られてしまうことも。結局、インターネットで見つけた物件を下見し、その場で即決しました。私の都合がつかなかったので、まずは妻一人で見学してもらい、現地から写真を送ってもらって確認した上で決めたので、私自身は下見はしていません。そのぐらいの気合いで臨まないと、パリで部屋を借りるのは難しいのです。


■年末に水道が使えなくなり、ホテルに避難

観光大国であるフランス、中でもパリは「花の都」として世界でも屈指の観光スポットと言えるでしょう。他国の同規模の都市と比べると、遥かにこぢんまりとしたスペースに、世界的に有名な観光名所がコンパクトに集まっており、観光しやすいことこの上ありません。エッフェル塔、凱旋門、オペラ座、ルーブル美術館、シャンゼリゼ通り…その気になればすべて徒歩で回ることも可能です。

一方で、住んで生活していくとなると、パリは大変な街です。暮らしを営む上で、何かしらのトラブルが発生して苦労することが非常に多いのです。パリで暮らしている周囲の日本人で、すべてが順調だという人には、一度も会ったことがありません。

かくいう私も、トラブル経験を数えたらチャンピオン級だと思います。例えば、自宅に固定の電話回線を引いて、インターネットにも無事に接続したと思っていたら、数日後、突然、インターネットに接続できなくなったことがありました。調べてみたところ、なんと間違って電話回線が解約されてしまったことが判明。すぐに再接続すれば済むと思っていたら、こういうときの手続きは、そんなに簡単ではないんですね。結局3カ月間、自宅からインターネット接続はできずじまい。私は職場でインターネットが使えましたが、妻はラップトップパソコンを持って、無料のwi-fi接続を提供している近所のファストフード店に通いつめなければなりませんでした。

ある年の12月30日に自宅アパートメントの1階ロビーの天井から漏水があり、その原因が我が家の水道管のパッキンにあることがわかったときも大変でした。その瞬間から水道が使えなくなり、年末だったため、修理業者とも連絡がつきません。やむなく急遽パリ市内のホテルを予約して避難し、そこで新年を迎える羽目となりました。

自宅玄関の内側に鍵を差したままオートロック式の扉を閉めてしまい、閉めだされたこともあります。鍵業者を呼び、鍵部分をドリルで壊して鍵を交換してもらったのですが、夜間だったこともあり、日本円で8万円ほどかかった記憶が。同じようなケースで約15万円かかったという日本人の知人もいます。

自分の不注意に原因がある鍵の件はともかく、電話回線解約や水漏れのようなトラブルが、いつ自分の身に降りかかってくるかわからないのがパリ生活です。私はこれらを個人的に「パリの洗礼」と皮肉を込めて呼んでいます。このネガティヴな洗礼を受けることで、初めてパリ駐在員として胸が張れるのではないかとすら思うのです。

その一方で、パリ、そしてフランスが、歴史と文化に裏打ちされた、実に奥深い国であることも事実です。幸い私は、フランス語が得意なこともあり、フランス国内の各地を旅行しながら、フランスの歴史や文化にどっぷり浸かって満喫することもできます。例えば、南西部でスペインと国境を接しているバスク地方、東部でドイツと国境を接しているアルザス地方などを訪ねると、独自の文化や独自の言語に触れることができ、決してひとくくりにはできない面白さに満ちています。特にバスク地方は、独特の模様がある「バスク豚」を使った料理や、エスペレット村の「エスペレット」(バスク地方の唐辛子)などを味わいに、何度でも訪れたい場所となっています。現地のテニスクラブでフランス人に交じってレッスンを受けている妻も、同じ趣味を持つ者同士ということで親しくなった方とは、自宅に呼ばれて食事を頂いたり、一緒に飲みに行ったりする仲に。フランスの生きた文化・生きた言語に触れる機会を楽しんでいるようです。

次回は、海外で働くために必要なことについてお話しします。