もしも科学シリーズ(11)もしも地軸の角度が変わったら


日本の四季は、傾いた地軸が織りなす偶然の産物だ。もし地軸の傾きが変わってしまったらどうなるか? 気候や生態系の変化はもちろんのこと、氷期の到来にも関係し、地球に危機的なダメージを与える可能性があるのだ。



■死のつららに覆われる海底



地軸は公転軌道に対して約23.4度傾いている。北極点がつねに北極星を向いているように、年間を通して同じ方向に傾いているため、夏至は北極が、冬至は南極が太陽に近い位置となる。北半球と南半球では季節が逆になるのはこのためだ。



季節の違いは、どちらの極が太陽に近いかよりも、日光の差し込む角度が大きな要因だ。太陽が真南に位置した際の地面との角度を南中高度と呼び、垂直に近いほど大きなエネルギーを受け、同時に昼が長くなるため、気温が高くなりやすい。同じ昼間でも、夏の影が短くなるのは南中高度が高いからだ。



たった23.4度の傾きでも、北極/南極では劇的な変化があらわれる。太陽寄りとなる夏至には、北極圏は太陽が沈まない白夜(びゃくや)、冬至は日が昇らない極夜(きょくや)となる。タイミングが逆になるだけで、南極圏でも同じ現象が起こる。



地軸の傾きがなかったら、つまり公転軌道に対して垂直に自転していたらどうなるか? この場合、昼と夜は常に12時間ずつとなる。北半球と南半球の区別もなく、1年を通して同じ状態が続き、当然ながら季節も生じない。極地では水平に近い角度の日光に照らされ、一日中夜明けか日没か区別のつかない薄明かりに包まれる。単調な気候は雪や氷が溶けにくい状況を作り出し、日射の反射率を高め、地球の寒冷化を促進する。



対して自転軸が水平になると、日本を含めた北半球の大部分は、ひと夏中、白夜が続くことになる。北極の氷はひとつ残らず融けるのだろうが、浮かんでいる氷が溶けても幸いにして水位は変わらない。喜びも半年限りで、冬になれば事態は一気に悪化する。南半球が太陽に向いたままとなり、南極の氷が溶け出すからだ。陸上にある南極の氷は、溶けた分だけ海面は上昇する。蒸発すれば厚い雲となり、温暖化を促進するから踏んだり蹴ったりだ。同時に、3ヶ月の夜に突入した北半球ではあらゆる物体を凍りつかせる。北極の氷も急速に再生するものの、海面の水位を下げる働きはしない。北極と南極では半年ごとに灼熱(しゃくねつ)と極寒が切り替わり、製氷と解凍をひたすら繰り返し、新たな海流を生み出すに違いない。



海底では死のつららが多発するだろう。海水が凍ると、塩分を含まない氷と高濃度の塩水に分かれ、この高濃度の塩水が急激に冷やされると、海底を覆うように氷柱を形成する。ウニやヒトデなど動きの遅い生物もちろんのこと、逃げ遅れた魚はひとたまりもない。



■氷期の再来



地軸の傾きは不安定で、41,000年周期でおよそ21〜24.5度の範囲で変化している。傾きが大きいほど極地が受けるエネルギー量が増えるので、たった3度の違いでも気候に大きな変化をもたらす。しかも23,000年周期で地軸の向きが変化する歳差運動があるからややこしい。地球儀の台座を回転させるのと同様で、現在の北極はこぐま座を向いているが、約12,000年後には反対向きのこと座が北極星となる。



セルビアの地球物理学者ミラティン・ミランコビッチは、地軸の角度、地軸の向き、公転軌道から、地球の気候変動の分析に成功した。いわゆるミランコビッチ・サイクルである。このデータから、地球は太古から気温の低い氷期と、比較的暖かい間氷期を繰り返していることがわかる。現在は間氷期だから、氷期が訪れるのは確実だ。せめて地軸の傾きが小さくならないよう祈ろう。



■まとめ



過去の大規模な気候変動は、生物の絶滅の原因となったが、同時に人類の進化や文明の発達に大きく寄与したことに違いない。



次の氷期を乗り越えるのは新たなホモ・サピエンスなのか、それともシアノバクテリアに戻るのか。いずれにしても楽しみだ。



(関口 寿/ガリレオワークス)