(C)2012 Barney’s Christmas, Inc. All Rights Reserved.
 秋の涼しさを拒むかのような熱い“体育会系”な映画を、MOVIE ENTER編集部が厳選してご紹介する「秋映画特集2012 -燃える!体育会系映画-」特集。第3回目は、まさに血湧き肉踊る体育会系映画の大本命『エクスペンダブルズ2』。アクション映画のスーパースター達が夢の競演を果たした『エクスペンダブルズ』から2年。続編を首を長くして待っていた、カルト映画のフジモトがその魅力を徹底紹介!

エクスペンダブルズ2

 自らを消耗品と名乗る、バーニー率いる傭兵軍団“エクスペンダブルズ”。彼らの今回の仕事は、東欧の山岳地帯に墜落した輸送機に積まれたデータボックスの回収だった。彼らにとって簡単なはずの任務だったが、ある凶悪な武装集団もデータボックスを狙い行動を開始していた。やがてバーニーたちは、その武装集団の卑劣な罠に陥り、データボックスを奪われた上、一人の仲間が命を失うことになる。武装集団の残忍なリーダー“ヴィラン”は、機密データを利用して、旧ソ連軍が埋蔵した大量のプルトニウムを掘り出し、某国のクライアントに売り渡そうとしていた。取引が成功すれば、世界の勢力図は均衡を失い、破滅への道をたどることは間違いない。バーニーたちは世界を救い、惨殺された仲間の復讐を果たすため、ヴィランとその一味の跡を追うのだった。(作品情報へ

銃撃、爆発、肉弾戦!アクション映画が失った全てのモノがここにある!

 ワイヤーアクションを使うカンフーもの、カッコいいスーパーカーが大活躍するカーアクション、格闘技を使ったスポーツものなど、ありとあらゆるアクション映画のジャンルが確立された昨今。何か忘れられているものはないだろうか。それは、胸のすくような大雑把な“大爆破”アクションである。80〜90年代には『ランボー』『ターミネーター』『ダイ・ハード』など、アクション映画には“大爆破”はつき物だった。しかし2000年代に入り、それらはCGやワイヤーアクションに取って代わられ、(一部の大作を除き)急速に失われていったのである。しかし本作は、そんなかつてのアクション映画に立ち返っているのである。やたらに薬きょうを撒き散らす巨大な銃!過剰な爆薬で無駄に吹き飛ぶ橋!よせばいいのに、敵のアジトに飛行機で突っ込み大破!街中に登場する巨大な戦車!空飛ぶヘリに、突っ込むバイク!入り口があっても、建物には巨大なモンスターカーで突撃!当然のごとくこれらは、ブルガリアの山岳地帯や旧市街、巨大洞窟、空港、さらには香港やニューオリンズで本当に撮影したものである。今や珍しい、大雑把ではあるが説得力のある映像には、“アクション映画の原体験”が呼び覚まされ、熱くならざるを得ないはず。無論これだけではなく、ジェット・リーやジェイソン・ステイサムらが、キレキレのマーシャルアーツ・アクションを見せ、近年のスマートな映画要素もフォローしてくれている。銃撃、爆発、肉弾戦すべてが揃った、“アクション映画の満漢全席”それが『エクスペンダブルズ2』なのだ 。
 

現実か?映画か?生きる伝説たちが爆笑セルフパロディを連発!

 さて、これだけでは前作と同じく、すごいキャストとすごいアクションをごちゃ混ぜにした“単なる大雑把なお祭り”のような、なんともいえない作品になるはずだが、さにあらず。アクションの名匠、サイモン・ウェスト監督の腕が光るのである。前作では、キャストそれぞれに役割設定はあったものの、それらはほぼ活かされず、ただただアクションが繰り返されるというものだった。残念ながらこれは前作の欠点と言わざるを得ない。ところが今作では、それぞれのスターの個性が存分に活きているのである。例えばドルフ・ラングレンだが、前作では単なる薬中のデカブツ扱いだった。ところが今回は"実は薬学・工学の修士号持ちの天才”という本来の設定に合ったセリフや、それを利用するエピソードも登場。またテリー・クルーズは“ムードメイカー”の役割をしっかりと果たし、絶妙のタイミングで軽口を叩いてくれる。さらに輪をかけて素晴らしいのが、今作で本格参戦することになるブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネガーと、スタローンら“BIG3”の掛け合いだ。『ランボー』『ターミネーター』『ダイ・ハード』といった誰もが知る、アクションシリーズでの“俳優”としてのキャラクターを、完全にセルフパロディ化したやり取りが、この3人の間で終始行われるのである。誰がどんなセリフを言い、どんな行動で楽しませてくれるかは、劇場で確認してほしい。シリアスなストーリー展開のはずが、彼らの珍妙なやりとりのおかげで終始笑いをこらえるのに必死になること請け合い。

 ここまでの文章でお気づきだろうが、はっきり言ってしまえば、この作品中では出演者のほぼ全てが、劇中のキャラクターを逸脱した“本人”として振舞っている。ドルフ・ラングレンも実際に化学の修士号を持っているし、テリー・クルーズもほんとに筋肉お調子ものキャラである。ここまで思い切ったことをやると思わなかったので、これにはかなりビックリ。そしてこの演出を最もわかりやすく反映しているのが、われらがチャック・"ファッキン”・ノリスである。ノリスはほんのちょっとのカメオ出演かと思いきや、とんでもない活躍を見せてくれるので楽しみにしておいて欲しい。もはや映画であることを放棄しているとも言える演出であるが、監督のこのやり方は見事的中している。なぜなら、”生きる伝説”として説明不要なアクションスターたちはそのまま振舞い、今ひとつ馴染みのない俳優たちには、きちんと納得のいくエピソードが割り当てられているからである。ここまで個性豊かな面々をバランスよく見せた手腕は、全く方向性は異なるものの、同じくスーパーヒーロー映画として大ヒットした『アベンジャーズ』に匹敵する神業といえる。サイモン・ウェスト監督、恐るべし。

一番熱い、カロリー消費ポイントはココ!

 スケールアップしたキャストとアクション、そしてサイモン・ウェストの神業とも言える演出。しかしフジモトがあえて推したい最も熱いポイントは、悪役たちの存在である。皆さんはご存知だろうか、ジャン=クロード・ヴァン・ダムという男を。ベルギーからアメリカに単身渡ってきたこの男は、己の肉体と空手だけを武器に80年代を代表するアクションスターになった。しかし、2000年代に入るとその人気には陰りが見えはじめ、劇場未公開作ばかりに出演するようになる。すぐに裸になるナルシストぶり、ユニバGなどの怪しい商品CMへの出演などもあいまって、多くの方が彼をB級アクション俳優として認識していることだろう。ところがこのヴァン・ダム、近年かなり俳優として評価が高まっている。52歳の現在までアクション俳優であり続けたその顔には、皺が刻まれ、眼光は異常に鋭くなっているのだ。ヴァン・ダムの変貌ぶりを予習したい方は、昨年公開された『ユニバーサル・ソルジャー リジェネレーション』を本作の前に是非観て欲しい。ひと目見れば、彼のこれまでの栄光と挫折の経験が、その立ち姿に現れていることがわかるはず。そして、本作でも悪役としての存在感が凄まじいのである。全編を通してコミカルなやり取りばかりが行われる中、彼の演技だけが異常にシリアス。村人やエクスペンダブルズのメンバーを嬉々として殺すその様子に、必ずや圧倒されるはずだ。前作『エクスペンダブルズ』の敵役は誰だったか覚えていないくらいに印象が薄かったが、今回はむしろヴァン・ダムがエクスペンダブルズを食う勢いの悪役ぶりである。中でも、ヴァン・ダムとスタローンが素手喧嘩(ステゴロ)で決闘するクライマックスは必見。スタローンが繰り出す拳からは「よくぞここまで戻ってきたな!」という熱い思いが、ヴァン・ダムの回し蹴りからは「ありがとう、スライ!」という、魂の会話が聞こえてくるようである。もはやこのシーンは涙なくして観ることはできない。

 また、ヴィランの片腕を演じたスコット・アドキンスも、ヴァン・ダムに次ぐ存在感でジェイソン・ステイサムと激しい一騎打ちを演じている。このアドキンスは、実は欧米ではかなり注目されているアクションスター。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』でのラスボス・ウェポンXI役や、まもなく公開の『ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録』で実質的な主役を演じるなど、その実力は折り紙つきである。この2大肉弾バトルは、前者は魂のぶつかり合い、後者は壮絶な身体能力のぶつかり合う、まさに熱き漢の闘い。これで燃えないやつは男じゃないぜ!(もちろん男じゃなくて燃えるが)

 こういったお祭り映画を日本で観る機会は大変貴重である。同様の雰囲気を持つ日本の作品としてフジモトが思いうかべたのが、かつてのプログラムピクチャー時代の『網走番外地』だ。同シリーズと同じく『エクスペンダブルズ』には、是非ともハリウッドアクション映画の定番シリーズとして、2年に一回でいいので『エクスペンダブルズ7』くらいまで続けてほしいものである。つまり、あと10年程度はスタローンやシュワルツェネガー、そしてもちろんヴァン・ダムには現役で頑張ってほしいということ。

エクスペンダブルズ2』は10月20日(土)より全国ロードショー

『エクスペンダブルズ2』 - 公式サイト



https://image.news.livedoor.com/newsimage/9/1/916efa74bb8f8c653f9cce0c76a6ce5f.jpg

カルト映画のフジモトの所見評価

【消費カロリー】二郎系ラーメン3杯分くらい

【伝説パロディ度】★★★★

【ヴァン・ダム度】★★★★★

カルト映画のフジモトの「編集部的映画批評」一覧



「MOVIE ENTER 秋映画2012」特集

【MOVIE ENTER 特別連載】
編集部的映画批評 - 編集部がオススメ映画をピックアップ
オトナ女子映画部 - 恋する女子が観ておきたい映画

MOVIE ENTERのTOPへ