アステラス製薬 
中国支店 岡山第一営業所 
片井真理 
2004年、同志社大学卒。社内結婚の夫とは、「同居支援制度」を利用して同じ支店に勤務。

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岡山で、アステラス製薬のMRを務める片井真理さんの仕事は、自社の薬のよさをアピールし、医療機関で採用してもらうことだ。採用率は常にトップクラス。そこには小さな工夫の積み重ねがある。

あるとき、なかなか医師に取り次いでくれない受付の女性がいた。そこで片井さんは季節に合わせて毎回違うシールを名刺に貼り、その女性に渡すようにした。すると、「シールの子」として覚えてもらったばかりか、「今日のシールは何?」と楽しみにされるようになり、結果、取り次いでもらえるようになったという。

「『キミががんばっているから採用するよ』と言われるのも、もちろんうれしい。でも、できれば薬のよさをわかったうえで、納得して買っていただきたいんです」

そんな片井さんが力を入れているのが、病院の一室を借り、医師やナースを集めて行う新薬の「説明会」だ。会社支給のスライドも用意されているが、それを映すだけでは、印象に残らない。そこでよく使うのが、「たとえ話」である。

日ごろの雑談から相手の趣味や関心事をリサーチしておいて、その人の興味を引きそうな比喩を用いて薬の特徴を印象づけるのだ。

だが「薬の説明会などつまらない。時間の無駄」と言ってはばからない医師もいる。そこでその医師が歴史好きであることを知っていた片井さんは、新薬の特徴を「長篠の戦い」になぞらえた。「長篠の戦い」は、いままでの騎馬隊に代わり、初めて鉄砲が取り入れられたことで有名。同時に、相手の騎馬隊から自分を守る竹の柵も初めて取り入れられた合戦だ。

「そのとき説明した薬は、それまで安全性の部分に問題があった領域の薬。そこで薬の安全性を竹の柵に、効果を鉄砲にたとえ、『安全性と効果が両立できた、長篠の戦いの薬と覚えてください』と言いました」(片井さん)

結果、見事その場で採用が決定した。その後もその医師は、片井さんの顔を見るたびに「鉄砲、使ってるよ」と言ってくれるようになったという。

女性の後輩を指導するときもたとえを使うことが多い。たとえば、「いま使っている化粧品が自分の肌にぴったり合っていたら、いくらほかのものを薦められても変える気にならないでしょう。ドクターもいまの薬に満足していたら、なかなかほかの薬は使いたくないものなの」というふうに、わかってほしいと思うと、自然に相手に合った比喩が浮かぶ。

アステラス製薬では、各営業の体験や発見を全社に発信する情報レポートを募集しており、すぐれたレポートは半年に一度表彰されるが、片井さんは毎回必ず「ベストノウハウ賞」に選ばれている。たとえ話のエピソードや、名刺に貼るシールの工夫もベストノウハウ賞に輝いた。ノウハウを自分個人のものとして抱え込むつもりはない。ほかの営業所の人のやり方が素晴らしいと思ったら、詳しい話を聞くために、面識がなくても電話をかけることもある。

「全国のMRが集まる研究会に出席したとき、名刺交換をしたら、『あなたがあの情報レポートの片井さん?』と言われたことがあります。私の経験がみんなの役に立つことが本当にうれしい」

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「決めトーク」は
10分程度の薬の説明会のトークに力を入れる。聞き手の趣味などを事前にリサーチし、たとえ話に織り交ぜて印象に残るようにする。

自己啓発の仕方
ゴルフから映画、読書までとにかく趣味を幅広く持つ。そうすることで人間関係が広がるし、話も合わせやすい。

優先順位のつけ方
すべてを80点でやるのではなく、力を入れるべきところとそうでないところをはっきりさせる。説明会などの優先事項を100%以上の力でやる。

服装、化粧の仕方
扱う薬のイメージカラーの服を着たり、朝のテレビの占いを見てラッキーカラーの服を着ることも。

記憶に残る失敗談
ある病院で、薬局に宣伝する旨を伝えてからドクターにお声がけするというルールを知らずに、直接ドクターに宣伝してしまった。後で薬局長に怒られ、上司と一緒に謝りに行ったところ、その姿勢は評価してくれた。

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※すべて雑誌掲載当時

(長山清子=文 芳地博之=撮影)