元国際客室乗務員。夫は米国系企業に勤務し、結婚後は自身も会社を興すなど順風満帆な中での妊娠。このまま出産も順調に進むと思っていたら、生まれたのは「両眼性無眼球症」「先天性多発奇形症候群」と診断された、目も鼻もない女の子でした。

 千璃(せり)ちゃんと名付けられた女の子は、母である著者とともに厳しい現実・困難に幾度となく出会うことになります。遺伝子異常の検査で、目が見えないなか注射を刺される恐怖。MRIに入ったこともわからず、突然鳴り響く轟音。少しでも普通の顔に近付けるため、何度も何度も通った形成手術。義眼を入れるための器具をはめても、すぐ落ちてしまう。落ちては戻しの繰り返し......。

 娘を愛している。でも、好奇な目で見られるのはいたたまれない。せめて、少しでも普通に近づけたい――。障害を持つ子の母親たちがみんな、その事実を受け入れる強さを持っているとは限りません。

 「同じ年齢の子と、同じように成長しない」
 「この子はこれからどうやって生きていけばいいのだろう」

 娘の障害を受け入れきれていない著者自身、こう記しています。

 公共の場で授乳をする時、帽子を被らせたり、毛布で包んだりして、何気なく娘の顔を隠そうとしていた(中略)私はハンディのある娘のことを、笑って他人に紹介できるような勇気をまだまだ持ち合わせていなかった。

 「障害も個性の一つ」。私は決してそんな簡単な言葉で片付けられるとは思わない。

 「障害児は親を選んで生まれてくる」。私は選ばれるほど立派な人間じゃない。

 それでも、「現実として、千璃は目を持たないまま、今ここに存在する」と。

 今年9月からダウン症出生前診断の新しい取り組みが始まりました。血液検査という安易な方法で判明することにより、中絶の増加などが懸念されています。

 「障害児は親を選んで生まれてくる」から「親が子どもを選んで生む」時代になった今、千璃ちゃんと著者の8年の軌跡が教えてくれるものとは。

 それぞれの答えが見つかる一冊です。




『未完の贈り物-娘には目も鼻もありません-』
 著者:倉本美香
 出版社:産経新聞出版
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