グループ全体で人事を考え多様性ある企業文化を構築。真のグローバル企業を目指す

人事部長インタビュー Vol.33

積水化学工業株式会社 久保肇さん

日本で成功したビジネスモデルを武器に海外事業を展開。真のグローバル企業を目指す


■日本で成功したビジネスモデルを武器に海外事業を展開

積水化学工業(セキスイ)の事業組織は、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックスの3カンパニー制をとっています。2012年3月期における売上高は約9650億円。全体の5割弱を住宅部門が占めており、環境・ライフライン部門が2割、高機能プラスチックス部門が3割程度となっています。また、海外における売上高は全体の2割程度を占めています。

住宅部門の売り上げは大部分が国内におけるもので、2011年は震災の影響もあって新築の着工数は増えましたが、将来的には国内の新築着工数は減っていくだろうと予想しています。そこで、近年は新築事業だけでなくリフォーム事業にも注力し、この10年で売上高1000億円を超える事業にまで成長させました。当社には、『セキスイハイム』で新築されたお客さまという約五十数万戸のストックがあり、その方たちのリフォーム率はまだ低い。ですから、今後もリフォームを含めたストック事業を強化し、国内での事業を伸ばしていきます。

国内の新築着工数が減少していく中、海外事業の展開にも積極的に着手しています。海外に進出する住宅メーカーは、そのほとんどがデベロッパービジネスとしてですが、当社の考え方は、日本で成功したビジネスモデルで海外に出て行くというもの。住宅事業でいえば、“工場で80パーセントを生産する質の高い住宅を、高いコストパフォーマンスで提供する”という当社のビジネスモデルが、海外で通用するかどうかを重視しています。

2013年からは、タイで本格的に住宅事業を展開していきます。すでに現地大手企業と合弁で生産会社と販売会社を設立し、当社の生産ノウハウを生かした量産工場をタイに建設中です。タイでの住宅ビジネスは、ある程度高所得者層をターゲットにしており、その高所得家庭の住宅仕様は日本よりもレベルが高いほどです。このように、当社のビジネスモデルを生かせる国へは、今後も事業を展開していく予定です。

環境・ライフライン事業も日本国内が中心で、上下水道管市場では国内トップクラスのシェアを誇っています。アメリカやヨーロッパなどの歴史ある街は下水の普及率が高く、その寿命は約50年といわれています。こうした老朽化した上下水道をリニューアルする管路更生(かんろこうせい)は、先行投資に値する成長分野です。そこで、この分野では、アメリカやヨーロッパにも展開し、生産網と販売網の確保を進めています。

海外展開が最も早かったのは高機能プラスチックス事業ですが、この事業も国内でビジネスモデルを確立し、アメリカやヨーロッパ、タイ、中国などに進出していきました。近年、車両材料、IT、メディカルの3分野を戦略事業に位置づけ、国内外を問わず、積極的に投資を行ってきました。特に、自動車向けの合わせガラス用中間膜やフォームは、いち早く海外展開を進め、世界中に生産網と販売網を張り巡らせています。今後も、グローバルの時代を勝ち抜く生産・販売体制の構築を推進していきます。

当社の事業は一見バラバラで、何でも手がけているように思われがちですが、その源流は一緒です。プラスチックスの加工技術を応用し、いろいろな事業へと展開していったのです。自社の技術が応用できれば事業分野にはこだわらない半面、成長する可能性が高い事業分野でも、自社の技術が応用できなければ進出することはありません。M&Aにおいても「買収した企業を、自分たちの技術で大きくできるかどうか」を重視しています。


■自ら手を挙げ、チャレンジしていく意欲的な人たちに期待

当社は、CSR(企業の社会的責任)に“環境”と“CS(お客さま満足)品質”、そして“人材”の3要素を掲げています。CSRに人材が入っている会社は珍しいのではないでしょうか。これは「従業員は社会からお預かりした財産である」という考え方に基づくもので、当社の特徴といっていいでしょう。

セキスイはグループ経営であり、国内外を含めると200社強、2万名以上の従業員がいます。われわれは、グループ全体で人事を考え、グループ全体を強くしていこうと考えています。日本の企業に多いのが、会社が主体となって人を育て、組織をつくっていく方法です。われわれはこの考え方をあらため、主語を“会社”から“私”に180度転換しました。自ら学び、自らチャレンジしていく――グループ全体で人材公募を行い、昇進にも自ら手を挙げてもらっています。会社が提供するのは、教育や部署、職域といった“場”であり、今までとは違うキャリアに飛び込むチャンスを全従業員に提供しています。

すでに、グループ会社の社員が積水化学の経営幹部になったり、海外グループ会社の社長が積水化学の事業部長になったりしています。こうした事例を増やすことで、グループ会社は非常に活性化します。先輩の姿を見て「グループ会社にも積水化学で幹部登用される門戸が開かれているんだ」と頑張る人が増えてくれたらうれしいですね。同様に、採用者の3割を女性にするなど、女性比率を上げることにも取り組んでいます(※)。古い企業文化を変え、年齢や性別、国籍、所属会社にとらわれない多様性のある企業文化をつくる――これが実現して初めて、真のグローバル企業になれるのだと思っています。

※女性労働者比率の是正のための、男女雇用機会均等法に基づくポジティブアクション。

ここ5年間で海外のM&Aが増加し、海外の現地従業員は5000名以上、約2倍に増えています。最終的には、現地社員のレベルアップを図って経営を現地化したいと考えていますが、そこに到達するまで、どんな人材を日本から送り込み、どのように組織化し、われわれの経営思想をどう落とし込んでいくか、というグローバル人事が重要になっています。

海外勤務において、語学力は必須条件ではありません。むしろ重要なのは、異文化を受け入れられるかどうかです。現在は、2年間の海外トレーニー制度を導入しています。期間については試行錯誤がありましたが、異文化になじめるかどうかはほぼ1年でわかるだろうと考え、期間途中でも無理だと思えば帰国させるケースもあります。最近は、このトレーニー制度に応募する人もかなり増えています。

現在、当社はカンパニーごとに採用を行っており、機械・電気系や法務・人事などの専門職採用も導入しています。しかし、入社後には部門を超えてさまざまな仕事・職種にチャレンジしてもらうこともあります。また、いきなり海外勤務になる可能性もあります。当社で活躍しているのは、こうした環境を許容し、自らいろいろなことにチャレンジしていける意欲を持った人たちです。