前田監督 「社会の問題の縮図が、実は教室の中にある」


 映画監督として、原作を映画化することも多い前田哲さん。仕事と本との関わりについて伺いました。

 普段の本選びは、映画になりそうな本を選ぶことが多いです。あとは、おもしろいと思ったら一人の作家さんをずっと追い続けて、全作品を読むことも多いですね。たとえば、映画化したくてできなかったんですが、乙一さんや、荻原浩さんの本。映画と関係なくても、司馬遼太郎さんや阿刀田高さん、山本周五郎さん、柴田錬三郎さん、向田邦子とか好んで読みます。誰も映画化していなかったり、これから売れそうな作家さんを自分で見つけていきたいですね(前田哲さん)。

 映画『ブタがいた教室』など、若者描写に定評のある前田さんは、監督になって初めて書き下ろした脚本のテーマも「子ども」だったそう。まだ未発表のようですが、なぜ「子ども」という題材を扱おうと思ったのでしょうか。

 映画撮影で、「子ども」と「動物」は大変だと言われています。僕は助監督の時代に、子どもを担当することが多かったのですが、僕が担当するとスムーズに撮影が進行するので、もしかしたら自分に向いているのではないかと思ったんです。得意なことを伸ばしてデビューしたいと思っていたので、そこから「子ども」についての本をよく読むようになりました。社会の歪みは弱者に来るじゃないですか。社会が抱えている問題の縮図が、実はすべて教室の中にあって、それを子どもの映画を撮ることで表現できることに気づきました。

 「子ども」について調べているうちに「いのち」や「食育」というテーマが見えてきたという前田さん。最近は、「猟師」に興味があるそうです。

 最近、読んでおもしろかったのが『ぼくは猟師になった』という本です。「子ども」について調べているうちに「いのち」や「食育」というテーマを掘り下げていこうと思いました。生き物が食べ物になるわけですから、そこを映画で描きたくて猟師のことを調べていたときにこの本と出会ったんです。猟師になった著者のエッセイで、初めて罠にかかったイノシシを棒で殴り殺して自らの手で命を絶つという描写が可哀想であって残酷なんですが、とても印象的でした。でも僕らはそうして生きているわけですよね。ただ直にやっていないだけで、そういうことをしてくださる人がいるから、お金を出して食べ物を買える。だからこそ、その著者は血の一滴も無駄にせず、その生き物をいただくんですね。だから美味しい。そういう感じを僕はいつか映画化したいと思っています。

 「子ども」や「食育」など、人の原点に遡ることで、現代社会の問題が浮き彫りになることを問いかける前田さん。秋に公開される新作映画にも期待です。

《プロフィール》
前田哲(まえだてつ)
大阪府出身の映画監督。1998年、相米慎二総監督のオムニバス映画『ポッキー坂恋物語』で監督デビュー。主な作品に『陽気なギャングが地球を回す』(06)、『ブタがいた教室』(08)など。9月22日から、名作青春コミックを映画化した『王様とボク』、10月27日からは、前川清主演の『旅の贈りもの〜明日へ〜』が公開される。



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 著者:根本 浩
 出版社:中央公論新社
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