野田佳彦首相が、ロシア・ウラジオストクで9月9日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加表明を見送ったことに推進派の財界には失望感が広がった。
 「カナダ、メキシコはすでに参加を表明している。そのため日本商工会議所の岡村正会頭は『憂慮すべき事態だ』と危機感をあらわにしているのですが、政府の優柔不断ぶりは改まっていない。米政権だって、ここへきて様子見を決め込んでいる始末です」(経済記者)

 アメリカは11月に大統領選挙を控えている事情があるにせよ、急速にトーンダウンしているのは事実。通商関係者が打ち明ける。
 「米国自動車産業と関係が深い議員が、日本のTPP参加に猛反発しています。日本からの輸出攻勢で米国市場が席巻されかねないとの理由です。オバマ政権とすれば、米自動車産業を刺激したくない以上、大統領選が済んで、日本の次の顔がハッキリしてからでも遅くないとの判断です」

 問題はもうひとつある。中国と韓国は関税撤廃を目玉とする自由貿易協定(FTA)の締結を急いでいるが、韓国がTPPの蚊帳の外に置かれていることに着目した中国が「自陣に取り込もうと策を弄した」(情報筋)のが真相。日本もTPPとは別に日中韓3国のFTAを目指しているが、竹島・尖閣問題で両国間に暗雲が漂っているいま、中韓の“日本外し”は避けられない。通商関係者が続ける。
 「日本が中国や韓国とFTAを締結できなければ、頼みの綱は『米国が描いた究極の中国包囲網』といわれるTPPしかない。オバマ政権が寛大なのは『いずれ尻尾を振って擦り寄るだろう』との見立てがあるからです」

 “何も決められない”日本の迷走は続きそうだ。