出店者から商品の説明をうける全日空の客室乗務員

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「企業内マルシェ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。マルシェとはフランス語で「市場」のこと。企業が社屋内で、従業員相手に開く即売会のようなものだ。新鮮な地方の特産物などを生産者から直接購入できるので、福利厚生の一環にもなる。

売り手である出店者にとっても、顔の見える買い手と落ち着いて会話ができるという意外なメリットがあるようだ。2012年9月27日、東京・港区のANA本社で企業マルシェが開かれると聞き、その様子を取材した。


「顔が見えるお客さんとの濃い対話が生まれる」


東京・汐留シティセンター33階。この日開かれていたのは「岩国・柳井・周防大島マルシェ」だった。いずれも山口県の瀬戸内海側の地名である。


柳井市の「柳井じねんじょカレー」、周防大島の「あおさ醤油」、岩国の地酒「獺祭」など定番の名産品をはじめ、スイーツやジャム、和菓子や、地元の蔵元から直送された地酒など珍しい物産が所狭しと並べられている。


接客しているのは、市の職員や観光協会の人たち。岩国錦帯橋空港が12月13日に開港することを記念して、マルシェを開催することにしたという。全日空は羽田-岩国線を1日4往復就航すると発表している。


定時の18時をすぎると社員が続々と集まり、リラクゼーションルームは活気あふれる市場の雰囲気に様変わりした。社内の廊下にはポスターが貼られ、全社メールでの告知もあり、マルシェの社内の認知度は高まっているという。


30代男性の一行は「山口県の地酒を試飲しに来ました」とうれしそう。客室乗務員の制服姿の女性は「友人と自分へお土産に」と海苔を手に取っていた。


全日空の「マルシェ」は社内だけでなく、東京メトロと組んで銀座駅のコンコースなどで実施することもあるそうだ。今回と同内容のマルシェは、翌日に新宿三井ビルでも開催されている。一般客の多い駅や高層ビルは人通りもあって売り上げも大きいが、企業内で開催する意味も小さくないという。


「通りがかりに購入されるお客さまに比べると、企業内マルシェはお客である従業員との対話が多く、いろいろな深い話ができます。売り手と買い手の濃いコミュニケーションが生まれるので参考になるそうです」

そう教えてくれたのは、マルシェの企画と運営を担当するANA総合研究所の野村達男さん。どんな商品がどんな人に歓迎されるのか、新商品がどの程度売れそうかなどのマーケティングの場として、出店者に重宝されているそうだ。アンケートによる分析も行うという。


全日空のねらいは「地域活性化」


全日空がマルシェに取り組み始めたのは、2009年。ねらいは「地域活性化」だ。地方発の「売れる商品」が話題になれば、その地域を訪れる人も増える。全日空にとっては、空の旅を楽しむ人を増やすしかけは欠かせない。


マルシェを取りしきるANA総合研究所は、国内の8地域に社員を派遣して地域支援の活動を行なっている。次回以降の「企業内マルシェ」も、ANA総研の企画を中心に展開するが、最近では契約先以外の地域の方からの問い合わせも増えているそうだ。


「弊社では売れ筋のマーケティングから販売方法のコンサルティング、企業でのマルシェ開催、その後の商品展開サポートまでお手伝いします。企業内マルシェという場をテストやリサーチの場となることを目指しています」(野村さん)

企業内マルシェ発の新商品が実際に流通するには、1年ほどの時間がかかる。長期的で地道な取り組みだ。世の中にまだ知られていない日本の価値を、こういう取り組みで発掘していって欲しいものだ。(池田園子)