人事部証言!代わりがきかぬ2割か、8割のその他大勢か

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不景気のため、退職率が下がり、会社にぶら下がるローパフォーマーが増殖中。人事部長たちが人事の裏側を明かす。

■何の取り柄もない文系学生はキツいね

化学 09年12月1日現在の大学生の就職内定率が68.8%。1996年度の調査開始以来最低の水準と言われている。でも騒がれているわりに、上位校はむしろ状況がいいのではないか。大手企業は上位校に採用が集中し、逆に下位校は内定率がどんどん下がっているのが実態だ。うちも採用数が減少する中で、早い段階で上位校の学生を囲い込み、その中から絞り込む傾向になっている。

金融 上位校の学生がすべて欲しい人材というわけではないが、確率論として質の高い学生が下位校に比べて多い。うちは会社主催の説明会に参加しないと面接試験に進めない。エントリーした学生に対し、普通は一斉に説明会の通知を出すことになるが、最初からオープンにすると、わずか1日で定員が埋まってしまう。だから上位校の学生から段階的に通知を出して、席がそれなりに埋まってきたところでフルオープンにして募集をかけている。説明会に応募者全員を呼ぶ余裕がない。

サービス 今、大学側や経済同友会などは選考を8月以降にしようと言っている。もちろん教育上はいいかもしれないが、逆に下位校は後がなくなり、未就職者が増えるのではないか。

IT そう。現状の就職戦線は4月の選考で上位校中心に有名企業の内々定が決まり、ピークを過ぎた5月の連休明けから中堅・中小企業の選考に中堅・下位校の学生が参加するという構図になっている。仮に8月以降の選考開始になると、すべての大学が一斉に動きだすことになる。しかも、勝つのは上位校であり、中堅・下位校は後がないだけに、後ろ倒しの選考は避けたいという思いもあるようだ。

通信 上位校と下位校の二極化傾向だけではなく、学生の質自体も二極化している。企業のグローバル化が避けられないのに、日本の学生は、海外に行くのは嫌だとか、評価されて差がつくのは怖いから年齢で給料が上がっていく公務員がいいとかいう人が多すぎる。中国の大学に直接出向いて採用活動をしているが、たとえば北京大学の学生はものすごく勉強している超エリートで、会う人間すべてが日本の東大生と違ってハングリーなんだ。彼らと話していると、ああこのままでは日本は危ないなと思ってしまう。

サービス 海外拠点の拡大により、うちは09年から新卒にグローバル採用枠を設けている。選考では語学力はあったほうがいいが、絶対的な基準ではない。TOEICの点数が高くなくても、様々な国・人種の考え方を受け入れ、それを融合していけるセンスやスキルを持つ異文化受容力を重視している。日本人でも、海外の大学に留学していた人、幼少時代から海外に住んでいた人、あるいは日本の大学で留学生の受け入れ係をやっていたという経験など、いろんな異文化体験を聞いて見極めている。今、海外の売り上げ比率は4割弱だが、グローバル採用枠もそれに近い3割程度に増やしている。

IT 理工系はともかく、何の取り柄もない文系大学生はキツいね。うちは2年前から事務系総合職枠以外に財務・経理とマーケティングの2つの職種別採用枠を設けている。これは財務・経理やマーケティング知識など専門性を重視した、いわば即戦力採用だ。ただ、マーケティングをやりたいです、という人は採らない。

■新卒より手取りが低い部長

金融 はっきり言って、昇進がますます厳しくなっている。最大の理由は国内の事業そのものが縮小傾向にあることだ。今後の成長性が見いだせない中で、自身の将来にあまり夢を持てなくなっているミドルマネジャーが多いな。

化学 うちは組織の縮小・改編でポストも減少傾向にあり、ラインマネジャーから外されて部下なしのスタッフマネジャーが増えている。その分、ラインマネジャーの責任が重くなってきている。昔は部下に号令をかけて、俺についてこい的なやり方でよかったが、今は部下のケアからコンプライアンスまですべてラインマネジャーの責任として押しつけられている。しかも、近年は会社の方針としてプレーヤーは評価しない。ラインマネジャーはマネジメントに特化しろと言われている。でも、そう言われても自分自身のスタイルはなかなか変えられない。

通信 マネジャーの役割が変化してきて8割が課長にすらなれない。スタッフに教えたり、任せてじっとがまんしていることがなかなかできない。部下を1から10まで手取り足取りして育てられないマネジャーはラインから外されている。今まで先頭に立ってチームをぐいぐい引っ張り、成績も挙げてきた営業バリバリのマネジャーは評価されなくなっている。それよりも現有スタッフをまとめ上げ、目標達成へのプロセスも含めて管理できるマネジャーが求められている。しかし、その上の部長たちはプレーヤー上がりが多いから相談しても、「スタッフの面倒をそこまで見る必要はないよ」と言われる始末だ。

IT リーダーシップの質が変わってきている。部下が失敗したら部下に代わって上司が謝罪することも給与に含まれていると昔は言われたが、今は謝罪して済むというような情状酌量で許される時代ではない。失敗したら即座に降格させる。実際にうちの会社でもそうしているが、もちろん、降格してももう1回上がるチャンスがある。これが機能しないと人事は活性化しない。

通信 責任が重くなり、結果を問われる優勝劣敗の時代になると、人事を活性化しようとするなら、当然、逆転人事なり復活人事なりをせざるをえないと思うね。昇格・降格をフルに活用しないといけない。

金融 うちは典型的な日本の保守的企業の部類に入ると思うが、2年前から新制度を導入し、ずっとラインマネジャーをやってきた人をスタッフマネジャーに降ろすケースが増えている。等級は下げないので降格ではないが、それでも外された瞬間はショックだ。もちろん返り咲くチャンスはあるが、なかなか這い上がれないで鳴かず飛ばずになった人もいる。

IT うちは、あえて上のポストにつけてチャレンジさせる。ダメなやつは一度降ろして、よければ戻すということはすでにやっている。本社でダメなら関連会社に飛ばすが、そこで実績を挙げればもう一度本社に戻すことも珍しくない。入れ替え戦はしょっちゅうやっている。たとえば部長が10人いれば、3人上げたいので3人を降ろすというようにコントロールする。

通信 うちは管理職に役割グレード制を導入しているが、役割変更という形で、バッサリと入れ替えている。だから降格はかなり多い。どのくらい上がって、どのくらい落ちるかといえば、部署によって違い、イーブンにしたりする部署もある。管理職は2000人ぐらいいるが、毎回350人は降格する。厳密に言うと500人上がって、350人下がるような感じだ。

IT うちは降格させるにしてもグレード(等級)を1つ下げるくらいだ。当然、処遇も下がるが、部長クラスだった人の場合、毎月の給料だと20万円は下がるだろうね。しかも毎月の給料がボーナスの基礎給になるので年収ベースで400万円ぐらいは下がることになる。

通信 うちは管理職には業績連動給を導入しており、部長でもすごく業績が悪いと一気に下がる。毎月の給料の手取りが新入社員の手取りよりも低いというのが毎年1人はいたね。そうすると必ずその人から電話がかかってくるんだ。「仕組みはわかっている。でも、うちの新入社員の手取りは17万円だけど、俺の手取りは知っているよね、15万だ。これってどうなのかなあ」と。

サービス うちも以前、業績連動給にしていたからよくわかるよ。評価ランクがSABCDの5段階あるとすれば、前年のS評価だった人が、D評価になると20万円ぐらい下がる。そのほかに税金や社会保険料を引くとそういう現象が起こっても不思議ではないよ。

化学 最近は少ないが、グレードが2段階上がることもある。マネジャーが次長を飛び越えて部長に昇格すると500万円ぐらいは上がる。同じ部長でも毎年100万円ずつ上がる人もいれば、100万円ずつ下がる人もいる。下がるような人はいずれ降格させられるから、さらに下がることになる。

■ダメだと思ったら半期で降格させる

金融 降格するにしても、一応、基準があるはずだけど、どんなモノサシで上げ下げしているの。

IT 降格させる人に共通するのは、予算達成など組織ミッションを達成できなかった人だ。次に部下の評判が悪いやつ。逆に上げたいと思うのは、伸びそうなやつだ。

通信 降格させるのは大体、前年と同じことを代わりばえもなくやっているやつだね。仕事をきちんと回すことも大事なんだが、変化が激しい時代にそこに固執しすぎる人は、むしろマイナス評価になりやすい。そうではなくて、時代の変化をとらえて、新しい付加価値を生み出せるような人でなければ高い評価をあげられない。

化学 困るのは、毎年同じ仕事ばかりやっていて、しかもずっと同じ課長をやっている人。業績が低迷すると、仕事もなくなり、職場では上も下も澱んだ感じになってしまう。変化を起こすには降ろさないといけない。

サービス 優秀な20代のエースをリーダーに据えるために、30代のリーダーを降格させたことがある。座る椅子が限られている以上、そうするしかない。降格すると処遇もかなり下がるが、それよりも会社全体のことを考えれば、若手を抜擢することによってイノベーションを起こすということも考えないといけない。

IT うちは基本的に役職が長い人は変えるようにしている。専門性の高い事業部であれば別だが。たとえ結果を出していても5年もやっていると、それしかできなくなる恐れもある。その場合は、同格の役職に異動させることもあるし、子会社に転出させることもある。そのうえで若手を抜擢し、さらに違う経験をさせるということをしないと人は育たない。

サービス 最近は昇格させる際に、将来の課長候補は誰か、将来の部長は誰がいいかについて細かく管掌役員からヒアリングしている。たとえば同じような成績を残している35歳の優秀な社員が2人いたとすれば、管掌役員と話をして、1人は、将来部長までいきそうだとか、もう1人は課長どまりかもしれないな、とかいろいろ聞いて確認している。そして実際に登用については役員に「部長までいきそうだと言っていましたよね。それなら彼にチャレンジさせてもいいですね」と言って課長に上げている。

化学 うちは、過去2期の人事考課が一定レベル以下の場合、降格の対象になる。もちろん、何人上げて、何人降ろすかは会社業績によっても変わるが。

IT うちも2年続けてB以下だったら降格という基準はある。しかし、ダメだと思えば2年も待たずに1年で降ろすこともある。これはひどいなあと思ったら、半期で降ろすこともしている。半期決算の時代であるし、経営が1年単位で動いているときに2年というのはおかしいと社内で議論している。

金融 子会社に転出させると、ほとんどの人は飛ばされたと思うだろうが、本人を鍛える意味もある。たとえば、上司から、おまえやれと言われて、子会社に転出して「まさか俺がやるとは思わなかった」と言うやつは、2度と戻ってこれないな。

IT それは言えるな。最近、アジアの工場のマネジメントが機能していないということで現地駐在の責任者に会いにいった。彼は本社の生産再編プロジェクトの一員であり、生産ラインの改善について提案があった。それじゃ、おまえがやれということで、部長職にあったが派遣することにした。そのときに発したのがやはり「えっ、自分がやるの」という言葉だった。そして現地に出向くと、逆に生産性が低下していた。半年見て、これはダメだと思い交代させたかったが、結果的に1年で辞めさせることになった。

化学 うちも生産部門の部長クラスを現地に派遣しているが、そこで成果を出すか出さないかが出世の分かれ目になっている。最近も54歳の現地の生産拠点のトップを外したことがある。従業員と揉めて生産がストップしたのだが、彼は本社にどうすればいいか判断を求めてくる始末で、結局解決することはできなかった。うちは55歳役職定年制があるので、彼がそこで成功していれば役員になっていたかもしれない。しかし、結果的に役職定年で一兵卒に戻るしかない。

IT うちは、現地法人の役員に出向させるが、役員にとどまる限りは役職定年の対象にしないことにしている。でも先ほどの彼は53歳だったが、部長から降ろして別の国に一般社員として異動させた。日本では課長の等級だから日本に戻ると、役職定年にひっかかり一兵卒になるしかない。こっちとしては気の毒だと思うが、53歳なら後がないわけで任された以上、死に物狂いになってやらなければダメだよ。

通信 部長、事業部長になっても決して安泰ではない。失敗するとすぐに代えられるし、ストレス度も高い。その環境をものともしない強靱なタイプでなければ務まらないと思うね。

サービス 今は、使えないと関連会社に飛ばすという時代でもない。昔は結構、部長職の人間を関連会社に出すと、先方に喜ばれたりした。しかし、業績が低迷し、玉石混淆で出すようになると、向こうも学習して、「もういりません」と言うようになっている。我々も押しつけることはしていないし、いらないのであれば辞めてもらおうかということになる。

通信 本体でダメな管理職を預かってくれる関連会社はうちにもない。子会社の社長も会社が2期連続で赤字を出したか、もしくは3期連続で予算未達成なら退任してもらうことにしているので、彼らも必死だ。子会社の社長は本社の役員も兼務しており、首を切るのは社員よりもたやすいからね。

■退職勧奨リストを毎年つくっている

サービス マネジャークラスになると、給料が高いから宙ぶらりん社員はうちでは許されない。支払う給料とパフォーマンスのバランスがとれていれば、たとえ40歳、50歳でも問題はない。しかし、マネジャーで1000万円ぐらいもらっていてもパフォーマンスが出なければ、降格させるしかない。でも降ろしても使いづらいとなれば退職勧奨することになる。

IT 早い人は入社後3年で辞めさせている。2年ぐらいで辞めさせたいが、それではさすがに早すぎるということで。マネジャークラスでも使えない社員をとどめておくことができなくなっている。マネジャーの平均年齢は40歳前後で、もちろん家族もいる。じつは、退職勧奨の仕組みも整備している。毎年2月に開催される人員調整会議のときに、担当役員に対して部長、課長クラスについて、ローパフォーマーの人たち、つまり退職勧奨候補のリストを提出している。リストに載った全員をすぐに辞めさせるわけではない。半年ほど経過した夏頃にそのリストに載った人のパフォーマンスを改めて検証する。もちろんその前に、役員から部長、部長から課長に対して半期の間にリカバリーするように伝えている。それを2回ぐらいチャンスを与えて、それでもリカバリーできない社員は辞めてもらうことになる。

金融 うちも不景気のせいか退職率が下がっており、2・6・2の下の2割のぶら下がりマネジャーが増えている。正直言って給料も高く、ローパフォーマーのやり場に困っているのが実情だ。一応、終身雇用の方針があるため、できるだけ当たり障りのない部署に配置しているが、周囲の若い社員からは、なんでこんなに高い給料をもらっているのかという思いが強い。といって露骨に窓際に置くこともできない。今、真剣に彼らをどうするのか内部で検討している最中だ。

化学 2・6・2はもう甘いかも。会社を引っ張る2割とその他8割というのが現実。そしてこの8割がリストラ対象となる。うちも上司を通じて、このままでは会社にいられなくなるよという危険信号を出しているが、これはあくまでも裁判になった場合の労務リスクを減らすためだ。2回程度チャンスを与えて、それでも成果を出せない管理職は辞めてもらうようにしている。

サービス うちも係長、課長層が比較的多く、役割グレード制を導入し、入れ替え戦を常にやりながら、それでも浮上できない社員は辞めてもらうという仕組みができつつある。

通信 いいね。常時リストラする仕組みを設けていれば、大々的に希望退職募集をする必要もないしね。

サービス でも、毎年退職勧奨するのもしんどい。人事というより退職を促す管理職に負荷がかかるからね。そうではなく、それこそ膿が溜まったときに希望退職を実施するやり方でもいい。

IT 辞めてもらう社員の数は要員計画会議で毎年提案している。たとえば「新卒が50人入社し、定年退職する人が35人ですから15人減らさないとプラマイゼロにはなりません」と。

通信 辞めてもらう対象はマネジャークラスが多いね。部長はその対象から外れた人が昇進しているわけだから比較的少ない。年代的には42〜43歳かな。逆算すると35歳までに係長にならないとほとんど道が閉ざされると言ってもいい。実際に大変だし、サバイバル状態というのが実態だ。

※すべて雑誌掲載当時

(溝上憲文=構成 宇佐見利明=撮影)