ブロガー、プログラマー、投資家
小飼 弾
1969年生まれ。96年ディーエイエヌ有限会社設立、99年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)CTO(取締役最高技術責任者)。著書に『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』『弾言』など。

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シンプルでロジカルな文章は、実は理数系人間が得意とするところ。新発想の文章術をプロが指南。まずは長文との決別から始めよう。

■小飼式文章術

自分の書いた文章は、ヘタに手元に置いて熟成を待つのではなく、とにかく外に出すべきです。1次情報を発信する人と、それを加工する人が同一でなければならない理由はありません。一度外に出せば、誰かが読みやすくまとめてくれたり、その人なりの視点で他の情報と組み合わせてくれるかもしれない。ネット上でよく見かけるまとめサイトは、その典型例。極端な話、誰かがよりよくしてくれるなら、ツイッターで“ダダ漏れ”させてもいいのです。

書いたそばから外に出すと、自分もその文章について忘れることができます。もし自分で一次情報の発信と加工の2役をやるとしても、一度、忘れてしまうことには大きな意味があります。ふたたび自分の文章と出合ったとき、新鮮な気持ちで相対することができるからです。

手元に残して熟成を図ると、書いた当時の延長線上でしか思考は深まりません。しかし、いったん忘れてしまえば、「自分はこんなことを考えていたのか」と客観的に見つめ直すことができる。僕もよく自分の過去の文章を引っ張り出して再利用しますが、文章を一度手放して、1つの素材として捉え直しているからこそ再利用も容易になるのです。

■鎌田式文章術

文章は提出期限の数日前に完成させることが重要です。仮に期限まで10日あれば、8日目までに完成させるつもりで書き始め、2〜3日間はバッファー(緩衝剤)として空けておきます。

なぜ前倒しして完成させるのか。理由は2つあります。1つは、思わぬアクシデントに備えるためです。8日目に完成させるつもりでも、突発的な仕事が発生して、予定通り文章作成が進まないケースがあります。しかし2〜3日間のバッファーがあれば、スケジュールの遅れをカバーできます。もし予定通りに完成したとしても、次の仕事に取りかかれば時間を無駄にすることもないはずです。

もう1つの理由は、文章を熟成させるためです。デッドラインに追われながら文章を書くと、焦りが視野を狭めて発想も短絡的になりがちです。そこで意図的に完成を前倒しして、このまま提出しても最低限の責任は果たせるという状況をつくります。緊張状態から解放されると、それまで思いつかなかった斬新なアイデアが思い浮かぶことがあります。

バッファー時間は、自分の無意識と語り合うための時間です。文章のクオリティを高めるために、ぜひ余裕を持って作業に取り組んでください。

■畑村式文章術

私の場合、アウトプットした文章を寝かせるのではなく、書く前に思考を熟成させることを意識しています。印象記を見学後1週間から10日経ってから書き始めるのも、その間にじっくりと考えを煮詰めるためです。

いきなり書き始めると、インパクトが強いだけの情報に思考が振り回されることがありますが、時間を空けると、余分なものが削ぎ落とされて大事な情報だけが残ります。もちろん情報を寝かせている間にも、思考はフル回転しています。

ビジネスマンに置き換えて説明しましょう。思考を熟成させるときは、まず自分より1つ上のポジションで事象を捉え直します。課長なら部長、部長なら役員になったつもりで、「上の立場ならどう判断するだろうか」と考えるわけです。

自分なりに考えがまとまっても、そこで終わらせてはいけません。次は自分の横にも目を向けます。もし自分が課長なら、「ほかの課長はどう考えるだろうか」「ほかの会社はどう見ているだろうか」というように、横展開するのです。

横へのスライドはいっけん簡単に思えますが、一段上に登って視野を広げなければ、横にどのような世界が広がっているのか、よくわからないはずです。山の頂上に登ったからこそ、まわりにある森や川の存在に気づく。上と横に視座をずらして考え直すことで、思考はさらに深まるのです。

(村上 敬=構成 相澤 正、熊谷武二=撮影)