鉄道トリビア (169) 蒸気機関車はまるで「巨大なやかん」だった!?

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各地で人気の蒸気機関車。

黒くて大きな車体からもくもくと煙が吐き出され、巨大な車輪(動輪)が動く。

耳をつんざくような「フオーッ!」という汽笛と、腹に響く「ドッドッドッ……」という走行音。

まるで生き物みたいで迫力がある。

ところで、蒸気機関車はどんなしくみで動いているのだろう? 「やかんから勢いよく吹き出し、鍋のふたを動かす」のが蒸気の力だとなんとなくわかるけど、なぜそれで車輪が回るのだろうか?電車や電気機関車の場合、モーターの回転する力を車輪に伝えることで動く。

モーターは子供の頃に工作でも作っただろうから、電気を流せば回るし、それが車輪を回すことも理解できる。

ディーゼルカーやディーゼル機関車は動力源はディーゼルエンジンだ。

これも車やバイクのエンジンのしくみをどこかで見た気がする。

圧縮された空気に燃料を噴き込むと爆発し、その勢いでピストンを回す。

蒸気機関車の場合はどうなっているのだろう? 石炭を燃やし、水を沸騰させて蒸気にする……、というところまではわかるけど、何度も爆発しているわけでもないだろうから、ディーゼルエンジンとは違う。

鍋のふたを動かす力が回転するしくみになるところが、どうも理解しにくい。

そこで蒸気機関車の動くしくみをおさらいしてみた。

蒸気機関車といえば、その車体上部のほとんどが円筒状になっている。

内部はいわば「巨大なやかん」のようになっていて、中にはたっぷり水が入っている。

ただし普通のやかんとは違い、内部にはパイプ(煙管)がいくつも通っている。

このパイプは運転室のそばにある「火室」(石炭を燃焼させる部屋)とつながっている。

火室で石炭を燃やすと、火室の壁とパイプによって水に熱が伝わり、水が沸騰する。

ここで蒸気が発生するわけだ。

石炭を燃やしたときの煙は、パイプを伝わって煙突から排出される。

「巨大なやかん」の中で発生した蒸気は、蒸気機関車の煙突の後ろにあるドーム状の出っ張り「蒸気だめ」に集められる。

「鍋のふたを持ち上げる」蒸気の力は、ここでものすごく高い圧力になる。

そして小さな蒸気だめから外に出ようと、パイプ(乾燥管や主蒸気管など)を伝って蒸気室・シリンダーへと送られる。

ここでの動きはちょっと複雑だ。

左右に動く弁があり、弁の片側に蒸気が溜まり、弁を押し出してシリンダー内にあるピストンへ向かう。

その勢いで弁のもう片方に蒸気がたまり、ピストンの逆側に蒸気を送り込む。

こうしてピストンの両側に交互に蒸気を送り込むことで、ピストンは左右に運動を始める。

動輪に取り付けたロッドがその左右の運動を伝えることで、動輪は回転を始める。

蒸気機関車が動く上で要となる部分は、左右に動く弁とピストン。

これらが複雑に動くことで、蒸気の一方通行の圧力を回転力に変換している。

役目を終えた蒸気はシリンダーからも排出される。

だから蒸気機関車は煙突からだけでなく、車体の下部からも煙(水蒸気)を吐き出すというわけだ。

文章や図だけではいまいちよくわからない……という人には、梅小路蒸気機関車館のサイトにある「SLのしくみ」がおすすめ。

アニメを使い、ゲーム感覚で蒸気機関車のしくみを理解できる。

もうひとつのおすすめが、2011年に制作されたテレビ番組『復活 〜山田洋次・SLを撮る〜』だ。

公園に保存されていたC61形をJR東日本が復活させるまでのドキュメンタリーで、蒸気機関車の構造やしくみがCGで紹介されている。

この番組は2012年3月にDVDとして販売された。

現在の自家用車には多数の電子部品が搭載されているという。

一方、蒸気機関車はこれだけの大きな車体を動かすために、コンピュータはもちろん、電気も使わない。

整備士や運転士が、コンピューター並みかそれ以上の感覚と技術を駆使して動かしているともいえる。

当時はそれが当たり前だっただろうけれど、なんでもコンピュータ頼みの現代から考えると、そのしくみは非常に興味深い。