感動的だ。

関西風の直焼きならではの食感! しかも備長炭でじっくりと焼き上げている。

老舗ならではの長年継ぎ足されたタレは、名古屋人好みの程よい濃厚さ。

何よりコクがハンパない。

このように、うなぎ本来のおいしさをストレートに味わうのが1杯目だ。

「う、うまい」と、心のなかで呟(つぶや)き、かみしめるように食べる内、あっという間に茶わんは空に。

そして2杯目。

おかみはこれまた上品な箸さばきで薬味を盛ってくれた。

まずはネギ、次にノリ、そしてワサビの順。

タレの濃厚さでやや重くなっていた舌が、あら不思議。

薬味でスッキリし、さらにガッツリ食が進む。

時折、ツーンとくるワサビのアクセントは、ステキだとしかいいようがない。

と、ここでいよいよ3杯目のお茶漬けに突入。

薬味の上にかけるのは、実はお茶ではなく「だし」。

うなぎの臭みを消し、タレの濃厚さをやさしく受け止めて新しい味わいに変貌させてくれる。

サラサラっと口の中に流しこむと、今までにないふくよかな風味が口いっぱいに広がる…。

これを至福と言わずして何と言おう。

ひつまぶしを大満喫しておかみと談笑タイム。

蓬莱軒には東京進出の誘いがひっきりなしに来るも、「味を守るほうが大事」と、興味は全くない様子。

「名古屋の3店だけで精一杯」と話してくれた。

備長炭の炭火焼は熟練を要し、まさに「焼きは一生」だという。

「空襲のときはタレと位牌(いはい)だけを持って逃げた」という創業時からの秘伝のタレは、どんな災害が起こっても途絶えないよう分散保存しているとか。

「伝統を守るというのはそういうことなんです」と、おかみ。

ちくしょう、泣かせやがる。

人類滅亡前の最後の晩餐は、蓬莱軒のひつまぶしに決まったぜ。